隠密情報収集ミッション! 装備チェック!
戦闘で傷んだ忍者刀を【忍具作成】で修理する。
こういうクラフトは数秒から数十秒の集中が必要なので、戦闘中にはできない。
今なら周囲に敵がいないから、チャンスだ。
そう時間はかからない。
これを終えたら、男を追うつもりだ。
刀の修理が終わった。
「いいぞ。新品同然だ! さらに手斧も……忍具作成!」
さらに手斧の切れ味を鋭く、峰を分厚く加工。
これで打撃にも使えるぜ。
鍛造ペグは武器としてはギリギリのラインだった。
そもそも武器じゃないし。
ちょっと使いにくい。短いんだな。
でも可能性は感じた。
使い捨てにする軽い槍は俺の戦い方に合うかも。
闘牛士の使う武器は槍か刺突剣だったはず。
たぶんもっと長い。
三十センチしかないペグを突き刺すのは難しかった。
ま、できちゃったけどね!
クナイに近い距離感だから、慣れもある。
ペグは偶然見つけてとっさに使ったものだけど、面白そうだ。
クラフト心が刺激される。
よし、改良して武器化しよう!
あまりこだわらず、手早くね!
材料は十本のペグ。それと魔石。
強度を増して、少し長く。
とりあえず八十センチほどにして様子を見る。
先端は鋭く加工。
返しをつけて、刺したら抜けないようにする。
手に持ったまま何度も使わず、相手の体に残すのだ。
これがいやらしい効果を生み出す。
さっきの戦闘がヒントになった。
はからずも獣の首に突き刺さった刀は、相手の動きを悪くしてくれた。
体に何か刺さった状態では満足に動けなくなるんだな。
これは再生能力持ちの敵にも有効だろう。
もはやペグとは呼べない。
地面に突き刺す道具ではなく、刺突する武器である!
手銛と呼ぶのがふさわしいかな?
投げて使えるかもしれない。
投げるには重さのバランスが関係してくるので……帰ったら調整したい。
五本の手銛が完成した!
魔石は外に持ち出せないので、ここで使えてよかった。
捨てて帰るのはもったいないし。
俺は刀を背に負い、腰に手斧を下げる。
ペグ手銛は収納に入れておく。
クラフト終わり。
「これでよし。男を追うぞ!」
俺は物陰を伝って移動する。
キバオの上司らしき男が向かった方向だ。
足音も話し声も聞こえない。
もうすぐフロアの端だ。
サタケさんたちの話ではこのあたりに領域の始まりがある。
ダンジョンの入口、転送門があるはずなんだ。
獣のモンスターは見当たらない。
おそらく、あの男が倒しながら進んだんだろう。
……話し声が聞こえる
さっきの上司風男の声だ。
追いついたな。
フロアの端にある洋服店から聞こえてくる。
俺はさらに慎重に近づいていく。
アウトドア店のときよりも距離があるから、少し様子を見てもいいだろう。
隠密も強化したしな。
男は俺に背を向けている。
顔は見えない。
高級そうな素材の白いコート。白い帽子。
さらにネッカチーフまで巻いている。
オシャレか!
成金伊達男かよ!?
普通のセンスではなかなか着こなせないファッションだな。
伊達男は、もう一人の男と話している。
こちらはくたびれた革ジャンのチンピラ風。
オシャレとは言えない。
なにか……叱責しているような調子だ。
「なぜお前が外に出ている。中で暴食を制御するように命じたはずだが?」
伊達男の言葉に、革ジャンの男はおびえた様子で答えている。
態度には明確な上下関係がある。
「な、中はもう敵が強すぎて……! 暴食も話が通じる相手じゃない! 言ってもきかないんです! 俺にはムリですよ!」
外とか中とか言っているのはダンジョンのことだ。
ダンジョンの中になにかいる。
暴食――。
人の名前ではないだろう。
まあこれは、有名なアレだよな?
――七つの大罪。
ううむ……。
大鬼の魔石を捕食してトウコが手に入れたのが【憤怒】だった。
ということは暴食もスキルか?
そういうスキルを持ったモンスターかもしれない。
だが、おそらく会話できる相手だろう。
もっと言えば、会話できそうな相手だ。
話が通じない――ということは、話しかけていることになる。
つまり人間か吸血鬼……あるいは変異者なんじゃないか。
この暴食さんは、言ってもきかないヤツってことになる。
【狂化】状態みたいな感じか?
ダンジョン内の敵は強い。
チンピラ風の革ジャン男では勝てないか、危険を感じるってことか。
もっと敵が強くなったら、俺も厳しい。
俺はこのあと、ダンジョン内の様子も探るつもりでいるんだが……。
ハードルが上がってきてるな!
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