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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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アクロバティック闘牛士! アウトドア忍者!?

 獣は足を止めて、こちらをにらんでいる。


「グルルァ……!」


 首のあたりを貫いた刀のダメージは大きい。

 骨や神経を逸れたとしても、かなりのダメージのはず。

 口から血をしたたらせている。


 いやこれ、普通死ぬだろ……!


 よく見れば、それ以外の傷はほとんど治っているようだ。

 体毛に隠れているが、再生して盛り上がったピンク色の皮膚が見える。


「回復してるのかよ……面倒な!」


 それに武器が奪われたのも痛い。

 刀は獣の首元に深々と突き刺さったままだ。


 予備の武器は持ち込んでいない。

 この相手にウォレットチェーン分銅じゃあ力不足だ。


 素手で戦うのは不利。

 となれば――


「ガウォッ!」

「おっと!」


 獣が跳びかかってくるが、俺は背後へ飛んで避ける。

 相手の動きは鈍くなっている。


 突き刺さった刀が動きに干渉して邪魔なのだ。

 これくらいなら、俺のほうが速い。


 俺は背後に飛んだ勢いを殺さず、さらに後転。

 連続バク転で距離を稼ぐ。


 獣は苛立たし気に追ってくる。


 俺はそのまま、くるりと背を向けて走り出す。


「んじゃ、追いかけっこだ!」

「ウゥゥ!」


 走る俺に追いつこうと獣は走る。

 だが、刀が邪魔で追いつけない。

 呼吸も苦しそうだ。


 犬のような動物は持久力が高い。

 普通なら、走って逃げても追いつかれるし、体力で負ける。


 もちろん、無策に逃げているわけじゃない。

 目的地はすぐ近く。さっき通り過ぎた店舗だ。


 俺は店舗へ飛び込む。

 アウトドア用品店である!


 ここになら、武器になるものがある!

 ナタとか! シャベルとか!


 しかし、ゆっくり選んでいる暇はない。


 追いかけてきた獣が棚へぶつかる。

 棚や商品を跳ね飛ばし、なぎ倒しながら猛追してくる。


 急げ。使えるものを探せ!


 ――あった! オノだ!


 手斧を手に取って、試しに振ってみる。

 おしゃれなデザイン。カーブが手になじむ!



 獣が角を曲がって俺の前に姿を見せる。


「ガウゥ!」

「うりゃっ!」


 とりあえず投擲!

 重みのある手斧が回転しながら飛んでいく。


 命中!

 肩のあたりに食い込んでいる。


 さらに棚からもう一本!

 投擲! 命中! 投げ放題だぜ!


 獣が向かってくる。

 俺は場所を変える。



 ここはテントコーナーだな。


 テントに用はない。

 だが、あれがあるはず――


 あった! ペグだ!


 でかいクギ、あるいは杭のようなものだ。

 地面に突き刺してテントやタープを固定するのに使う。


 大きく、頑丈そうなものを選んで手に取る。

 スチール製の鍛造(たんぞう)ペグだ。

 三十センチほどで少し重い。


 【忍具作成】で強度や先端の鋭さを加工したいが、そんな時間はない。

 このままでも、なんとか武器に使えるだろう。


 棚にぶつかりながら、獣がやってくる。

 売り場はひどいありさまだ……。


 俺は棚を蹴って上へ飛ぶ。

 獣の体高より、さらに上へ。


 獣が俺にかみつこうと首を向ける。

 だが、首に痛みを覚えたのか、動きが鈍る。


「うおりゃっ!」


 獣の傷口のあと――やわらかい肉を狙う!


 すれ違いざま、空中からペグを突き出す。

 ずぶり、と獣の体に埋まる。


「ギャウッ!」


 獣が通り過ぎたところへ着地して振り返る。

 打ち込んだペグが体から突き出している。


 まるで闘牛士と牛。

 アクロバット闘牛忍者である!


 獣が反転して戻ってくる。

 肩に食い込んでいた手斧が抜け落ちそうになっている。


「引き寄せの術! 投擲!」


 斧を引き寄せ、再び投げる。さらに二本目も投擲!

 うむ。やはり、投げモノがあると攻撃がはかどる!



 離れれば投擲。近づけば刺突。

 もう攻撃パターンはできた。


 傷が再生しようが関係ない!



「グルル……!」


 動きの(にぶ)ってきた獣の突進攻撃をなんなくかわす。

 そして、ペグを突き立てる。


 何度かくり返して、もう獣はハリネズミのようだ。


 武器()が刺さって抜けないなら、逆にどんどん突き刺してやる!


「ほら、来いっ! 背中にテントを張ってやるぜ!」


 攻撃をかわし、ペグを打ち込む。

 手斧を回収して、ぶん投げる。


 刀は引き寄せられない。

 ガッチリと肉にかんでしまって抜けないのだ。


 だが、引っ張るとちょっと痛そうだ。

 ぐいぐい!


 傷をえぐって、血が噴き出す。


「グ、グゥ……」


 獣が倒れ込む。

 もう充分に弱らせたな。


 ならトドメだ!



「うおりゃ! ぶち割れろ!」


 手斧を頭に振り下ろす。

 獣は避けることもできない。そのまま倒れて塵となる。


 ふう、タフなやつだった!

 ボスほどではないが、なかなかの強さだ。



 戦闘でだいぶ音を立ててしまったな。

 敵が集まってくる前に退散しよう。



 店内は、台風が直撃したようなありさま。

 棚が倒れたり商品が散らばっている。


「うわあ、これはひどいな!」


 ううむ。

 非常時とはいえ、店への被害が……!


 いや、悪いのはモンスターなんだけどさ。

 ここに逃げ込んだ俺も関係ないとは言えない。


 とはいえ、責任など負っていられない!

 正当化するわけじゃないけど、気にして戦ったりできないんだ。



 俺はレジカウンターにそっと、万札を数枚乗せる。


 偽善的で意味のない行為だと思うが……。

 まあ、おまじないみたいなもの。


 あと、斧とか気に入ったし買っておこう!

 手斧二本とペグ十本ほどの代金だということで!



<経験が一定値に達しました。レベルが上がりました!>


「おお!? こんなタイミングでか!」


 ついにレベル二十到達だ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 強敵撃破からのレベルアップおめでたい キリのいいレベルで職業追加、でしたっけ…?
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