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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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拡張するダンジョン領域と巨大な獣! やっぱり獣は鼻が利く!?

 エスカレーターの前を大型の獣がうろついている。

 コイツを倒さないと下の階へ行けない。


 俺は【隠密】【消音】状態で姿勢を低くして忍び寄る。


 獣が反応する。


「グルゥ……?」

「む……やはり隠密ではごまかせないか! なら、正面から突破だ!」


 俺は刀を抜いて走る。

 そして、二人の遠距離攻撃が飛ぶ。


「チャージショットっ!」

「ファイアーランスっ!」


 初手から全力の一撃。

 不意打ちできなくても、開幕から必殺技をぶちかましていく!


「ギャッン!」


 獣の鼻面に炸裂したチャージショットに獣がひるむ。

 喉のあたりに着弾した炎の槍が毛皮を焼く。


 だが倒れない。

 炎も小さくなって鎮火してしまう。


 ヒットポイントありか!


 大型な獣は憎々し気に、攻撃の飛んできた方向をにらんでいる。

 よそ見してくれるなら好都合!


 俺はもう、獣のすぐそばまで走り寄っている。

 刀をバットのように両手でつかんで、大きく振る。


「――うりゃあっ! フルスイングッ!」


 スキだらけの獣の横面へ刀の峰がめりこむ。


「ギャッ!」


 ノックバック効果によって、獣が大きくよろめく。

 俺に喉元を見せる格好だ。


 振りぬいた刀から片手を放して、刀を返す。

 がら空きになった喉元へと刃をひらめかせる。


「うりゃっ! ――ファストスラッシュ!」


 斬りつけ、さらにファストスラッシュを発動して高速の突き。

 手ごたえあり!


「ゲ、ゲフッ」


 獣が口から血を流す。突きは喉を貫通している。

 俺は刀を引き抜いて、背後へ飛ぶ。


 獣が振り下ろした前足の一撃が(くう)をきる。

 動きは鈍い。


 銃弾と魔法が放たれ、獣が倒れる。

 大きなその体が塵となって消えた。


 銃弾が転がる。マグナム弾だ。

 トドメを刺したのはトウコだったようだな。



 トウコは弾丸を拾って装填する。


「チョロっ! ボスに比べたら弱いっスね!」

「まあ、ちょっと大きいけどザコ敵だろ」


 リンが言う。


「周囲に魔力の反応はありません。いまのうちに……」



 俺は左右を見回す。

 見える範囲に敵はいない。



 俺はハルコさんの壁に隠れている皆に声をかける。


「これで下の階へ行ける! 進もう!」


 ハルコさんがおっかなびっくりという様子で壁から出てくる。


「さすがというか……簡単にたおしちゃうんですねぇ?」

「いい手際(てぎわ)だな。クロウさん……ごほっ」

「す、すごいですね……!」


 生存者の二人も驚いている。


 感想はあとで。

 早く移動しよう。


 俺は皆を手招きして、急がせる。


「早く二階へ! 音を聞きつけて別のが来るぞ!」

「来たら倒すだけっス!」


 トウコは自信満々だ。

 だが、いま戦うのは最小限でいい。


 一匹の獣なら、倒すのはたやすい。

 だが、群れになると対応に時間がかかる。


 囲まれたら、生存者を守れない。

 敵が集まってくる前に移動せねば!


「戦うより逃げることを優先するんだ! きりがないからな!」

「はいっ! 外へ出ちゃえばいいんですよねー?」


 ダンジョン領域からモンスターは出られない。


 階を越えて追ってくるかはわからないが、下の階に行けば敵も弱くなる。

 三階から離れればもっと安全になるはずだ。


「そうだ! 逃げるが勝ち! みんな、あわてずに急いでくれ!」

「ああ、急ごう……げほっげほっ!」


 サタケさんは足を速めるが、苦しそうだ。

 エドガワ君は彼を支えて歩いている。

 走るのはムリだな……。



 その時、遠くで音が聞こえた。


 男の叫び声と、獣の咆哮。

 なにかが壊れる音。戦闘の気配だ!


「なんか叫んでるっス! キバオっスかね?」

「逃げ遅れた人かもしれません! ゼンジさん……どうしましょうか!?」


 このまま生存者を連れて三階をうろつくことはできない。


「……とりあえずハルコさんたちは下へ向かってくれ!」

「はぁい。じゃ、みなさん、行きましょう?」


 ハルコさんと生存者は下へ向かう。

 サタケさんは俺に頷きかけると、エドガワ君に支えられてエスカレーターを降りていく。



 俺は考える。


 三階はまだほとんど探索していない。

 生存者がいるかもしれない。


 サタケさんたちのように籠城していれば、生き延びていてもおかしくない。

 可能性は高くないが……。


 一方で、キバオたちの可能性もある。

 わざわざ階段から客が逃げないようにしていたのだ。

 なにか目的があって、ここにいるに違いない。


 事件の中心はダンジョンに違いない。

 転送門は三階の端だとエドガワ君は言っていた。


「生存者の可能性が捨てきれない。俺が様子を見てくる!」


「あぶないですよ、ゼンジさん!」

「それならあたしたちも一緒に行くっス!」


「いや、二人はみんなを安全な場所へとどけてくれ」


 俺はじっと二人の顔を見る。

 リンが頷く。


「……わかりました。ゼンジさん。無理しないでください」

「ああ、もちろん危なくなったら逃げてくるさ」


 トウコは納得していない顔だ。


「トウコ、みんなの避難が第一目標だ! 守ってやってくれ!」

「ちぇー。しょうがないっスねえ。まかされたっス! 外まで連れてったら戻ってくるっスよ!」


「ああ、頼む。だけど、戻ってこなくていい。合流できないと困るからな」


 ダンジョン内で電話はできない。

 はぐれてお互いを探すことになったら困る。


 ミイラ取りがミイラになっちまう。



「りょ!」

「気を付けてくださいね、ゼンジさん!」


「ああ、そっちも! では、あとでな!」


 そう言うと俺は声のした方向へと走った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 喋るモンスターがいるって厄介ですねー
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