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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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密室! 秘密! 密談! ぎゅうぎゅうトイレ会議!?

 サタケさんが説明を続ける。


「そう。ここにきて成長したんだ――敵の侵入を()()()()(はば)むようになった。触ることすらできない」


「ああ、だから入口に立ちふさがっていたのか。バリアみたいなものか?」


 サタケさんは咳き込み、顔をゆがめる。


「それは……げほっ。エドガワ……話せるか?」

「あ、はい。その、バリアとは違うと思いますが、まだよくわからなくて」


 ここで能力が開花(かいか)したばかり。

 まだ自分でも把握していないんだな。


 俺はきりだす。


「あ、俺の仲間(リンたち)を入れていいか? 話を聞かせたくないなら待たせるけど……」


 能力を知られたくないなら、しかたがない。

 だが、状況の共有は皆でしたほうが効率がいい。


 それに外は危険だ。合流しておきたい。



「えっと……」


 エドガワ君がサタケさんを見る。

 サタケさんは頷く。


「ああ、入ってもらおう。げほっ……。どうせ()()()()()()()んだろう?」


 トイレの入口からトウコがひょこっと顔を出す。

 そして悪びれもせず言う。


「ははっ! バレてたっスかー?」


 困った顔でリンも顔を出す。


「ちょっとトウコちゃん……もう。……ハルコさーん?」


 リンはハルコさんへと手招きしている。


「はぁい? 私も混ざっていいんでしょうかぁ?」



 サタケさんが言う。


「エドガワ。()()()に来てくれ。彼らを通せ」

「は、はい」


 エドガワ君が位置を変えて、皆を通す。

 立ち位置はサタケさんたちと俺たちの間だ。


 サタケさんは抜かりない。

 ちゃんと自分たちの身を守れる位置だ。



 全員がトイレの中に入った。

 少し狭いな。

 だがこれで安心して話が進められる。



「この二人が俺のチームメンバです。レン(リン)とトウコ。ハルコさんはさっき合流した異能者です」


 トウコが一歩前に出る。ニヤニヤ顔だ。


「よろしくっス! あたしはトウコ――」


 いったん言葉をきる。

 そして拳銃を両手でくるくると回(ガンスピン)してポーズ。


「――拳銃使いのザ・ガンスリンガーっス!」


 サタケさんが銃を持つ腕をピクリと動かした。

 だが、銃を構えはしない。


 俺はひそかに息を吐く。

 ふう……冷静な人でよかった!


 まだ信頼関係は完全じゃない。

 急に銃を振り回したりしたら相手を刺激するからな!?


 トウコはそれには気づかずにドヤ顔でポーズを決めている。


 ……。

 妙な間が。


 トウコがリンをひじでつつく。


「――さあさあ、つぎは()()姉っスよ!」


 そういう()じゃないよ!


「わ、私もそういうのしないとダメでしょうか? その……」


 リンはもじもじしている。

 コミュ障に無茶ぶりはよせ!


 あと、偽名な!

 ハルコさんに偽名を名乗ったんだから、今は(つらぬ)き通したいぞ。


「いや、普通でいいぞ、()()


「あー、店長止めちゃうんスか! リン姉の名乗り、聞きたかったのにぃ!」

「にぃ! じゃないわ! 今は手早く話を済ませたいんだよ! 空気読んで!?」


「その。れ、レンです。魔法を使います」


 リンは指先に小さな炎を出してみせた。

 エドガワ君はそれを見て目を丸くする。興味津々だ。


「へー。魔法使いですかー!? さっきの炎はそういうことなんですね?」

「あ、ごめんなさい。熱かったですか?」


 エドガワ君は首を横に振る。


「いえ! 大丈夫でした! おかげで助かりましたー!」

「よかったー」



 つづいてハルコさんを紹介する。


「こちらのハルコさんは二階で合流した方です」

「……よろしくおねがいします?」


「あ、入口に壁を頼めるかな? 少し話をするので音もれを(ふせ)いでほしいんだ」

「……は、はいぃ。できましたぁ」


 トイレの入口が壁で埋まる。

 半透明の壁、マジックミラーのようになっている。


 サタケさんが感心したように言う。


「おお、壁が! そういう能力なんですね?」

「はい。映像だけですけど? あ、名前はアオシマハルコです?」


 あ、苗字。アオシマか。

 はじめて知ったわ。



 三人の紹介がすんだところで、エドガワ君がこれまでの状況を話してくれた。


「ボクたちはダンジョンの反応があったということで、三階へやってきました。そのときはまだ、こんな感じにはなってなくて……」


 サタケさんが助け舟を出す。


「そのときは領域は小さくて、一部だけだった。……続けろ」

「ボクたちが領域の(はじ)っこに入って調査しようとしてたんです。そしたら、急にヘンな感じがして……こう、耳がキーンって感じですね。それで、領域が広がっちゃったんです」


 エドガワ君はたどたどしい説明を続ける。

 うーん。

 コミュ障ばっかり増えていくぞ!


 サタケさんが補足する。

 もう全部、この人が説明してくれたらいいのに。


 長いセリフをしゃべるのはつらそうだから、しょうがないんだが。


「領域が広がって、俺たちは中に閉じ込められた。そして、脱出しようと移動を開始した……げほっ。エドガワ、続けろ」

「それで、エスカレーターまで行きました。そこにいた人たちは()()()()()をしていて牙が生えていて……み、ミムラさんが」


 エドガワ君は声を詰まらせる。

 目にはうっすら涙が浮かんでいる。


 俺は耳をかたむけ、続きを待つ。


「ボクらを逃がすためにミムラさんは……や、やられてしまいました。そのとき、サタケさんもケガをして。ボクは……なにもできなくて……」


 なぜかハルコさんがはっとした表情を浮かべる。


 うつむいてしまったエドガワ君にかわって、サタケさんが言う。


「ミムラのおかげで俺たちはエスカレーターから撤退できた。奴は立派に戦った。だが、何人かの一般人もそこで殺された。ついてこれたのはこの二人だけだ」


 憔悴した様子の一般人の男女が涙を流して頷いている。


 エドガワ君が言う。


「ボクらは必死に逃げました。でも犬が追いかけてきて、もうダメだと思って。だけど、大丈夫でした。近づかないでと思ったら、その通りになったんです!」


 仲間の死。

 一般客も殺され、獣たちに追われる極限状態。


 このとき、能力が成長したということだな。

 本人も知らなかった能力が発動したんだ。


「異能のおかげだと判断して、エドガワを最後尾に撤退を続けた。おかげでここにたどり着けた」


 この場所――トイレまで逃げてきたと。

 やっと話がつながってきたぞ!



 彼らをエスカレーターで襲ったのは、キバオたちかもしれない。

 あるいはその仲間。


 人間のふりをして、待ち伏せしていた。

 そしてサタケさん達をだまして、襲ったんだな。


 このときはまだ、二階まで領域が広がっていなかった。

 だから守っていたのは()()()エスカレーターだったんだ。


 いま聞いたできごとの後、キバオたちは移動したんだろう。

 ダンジョン領域の端。出口……階段(エスカレーター)へ。

 客を逃がさないためだ。


「サタケさん。エスカレーターで襲ってきたのはガラの悪い二人組でしたか? 一人は魔法を使うヤツでは?」

「そうだな……。たぶん、魔法だ。手から光を放ってきた。この胸も防弾服じゃなければケガじゃすまなかったかもしれない。もし奴らに会ったら逃げるんだ――」


「あ、そいつらならさっき倒してきたので、安心してください」


 俺がそう言うと、サタケさんが目を見開いて驚く。


「え? あれを……倒しただって!? あ、痛てて!」


 傷が痛むらしく、胸をおさえる。


 エドガワ君も驚いている。


「あの怪物を倒したんですか!? す、すごい!」

「クロウさん。あらためて、感謝する。助けに来てくれただけでなく……ミムラの(あだ)まで討ってくれていたとは! ありがとう!」


「いやそんな……」


 大仰な感謝の言葉に、俺は手を振って――

 トウコが胸をそらして言う。どや顔だ。


「ははーっ! やってやったっス! アイツは泣きわめいて死んでいったっスよ!」

「トウコちゃん……言い方っ」


 サタケさんが黙っちゃったぞ。


 エドガワ君もひいて――ないね?

 顔を上げて、晴れやかな顔だ。


「そう、ですか。でもおかげで気分がはれました! ざまあみろ、ですね!」

「マホ太郎も頭をぶっ飛ばしてやったっス!」


 サタケさんが聞き返す。


「まほ……なんだって?」

「手から光を出す魔法使いの男ですね。はは……」


「やっぱり伝わらないよトウコちゃん」

「私はキバオとマホタロウ、ダサかわいくてイイと思いますよぉ?」


 ハルコさんはもう受け入れている。

 なんだかんだ、俺もその呼び名で定着してしまいそうだ。



 脱線してしまったな。


「それでこのトイレまでたどり着いたんですね? エドガワ君、続きを聞かせてくれ」

「はい――」


 俺たちが合流する直前までの話になるはず。

 彼の異能がどういうものかわかるだろう!

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