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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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拡張するダンジョン領域と絶望的な生存者!?

 俺たちは三階へ向かうエスカレーターをのぼっていく。

 通電していないから、ただの階段だ。



 空気が変わる――


「む? いま、()()()()()()感じがしたな?」


 空気が重くなったような、いやな感じを覚えたのだ。


「はっきり感じましたねー!」

「エリアが変わったんスかね?」


 リンとトウコは頷く。

 ハルコさんは不思議そうに言う。


「え? どういうことですかぁ?」

「三階はもっと危険だってことだ」


 ダンジョン領域は、三階から広がった。

 ならば、ダンジョンの入口も三階にあるはず。


 俺たちは、悪性ダンジョン領域を大鬼(おおおに)のダンジョンで経験している。

 そのときはマンションの一室だけだった。


 ここは規模が違う……一部屋どころか、フロア(階層)全体である。

 そして、領域が複数のフロア(階層)に及んでいる――

 これは俺たちにとって、はじめての経験だ。


 したがって、三階が危険だというのは推測である。

 だが、おそらく間違いない。


 ダンジョンの入口に近づくほど危険が高まる!



 エスカレーターをのぼりきって、周囲を眺める。


「ひとまず、敵はいないようだな」

「三階も停電していて暗いですね。……不気味ですー」

「人がいないのがヘンな感じっス!」


 周囲に人気がないのは二階と同じだ。

 テナントの店舗が並んでいるが、無人だ。



 そして、二階よりも荒れている。

 商品は散らばり、棚やマネキンが倒れている。


 これは混乱のあとだ。

 あらそった形跡……逃げようとした形跡。

 ここに人がいたんだ……。



 それを見てなのか、ハルコさんが不安げな顔をする。

 いや、もっと衝撃を受けている感じだな。顔面蒼白になっている。


「なんで、誰もいないんでしょうかぁ……? けが人とか、し、死体もありませんけどぉ?」

「ああ、ハルコさんは知らないんだったな。今、この場所は特殊な状況で――」


 三階を探索しながら、ダンジョンや領域について軽く説明する。

 死ぬと体は塵になる。持ち物も消える。


「あぁ……どうしよう……みんな消えちゃったぁ?」

「うむ。誰もいないってことは……犠牲者が多すぎる!」


 三階の階段周辺には人の姿がなかった。

 また、敵も見当たらない。


 声を上げても、寄ってこない。

 モンスターすら現れないのは、どういうことだ?


「誰かいませんかーっ」

「敵が来ないのもヘンっス! ()()()が言ってた狩り役って奴らが倒したんスかね?」


「キバオって誰だよ!?」

「さっき倒した牙の生えた男っス! もう一人はマホ太郎で!」


 魔法使いだから魔法太郎?

 うーん。適当!


「変な名前つけるなよ。逆にわかりにくいわ!」

「ともかく、狩り役っス! つまり、攻撃係ってことだと思うっス!」


「階段をふさぐ係と、敵を狩る係だな? 俺は()()()()()()だと思っていたが……モンスターも狩るのか?」


 なんのためにそんなことをするんだ?


 リンが言う。


「あ、キバオさんたちは()()()()()、って言ってましたね! 仲良しじゃないんですよ!」


「ああ、そうか。獣のモンスターとキバオたちは別のグループだから、争うのか!」


 いつのまに俺までキバオって呼んでるぞ……。

 まあ、牙の生えた男より呼びやすいからヨシ!


「そうそう! 自分たち以外はみんな敵なんスよ!」



 ここには今、三グループの勢力がいる。


 ダンジョンのモンスター。獣。

 キバオ達。階段役、狩り役。

 俺たち公儀隠密。行方不明のメンバー三名もここに含む。


 そして、第四のグループとして生存者もいるはず……いてほしい。


「じゃあモンスターがいないのは、狩り役さんが倒しちゃったのかもしれませんねー」


 ということは生存者も……。

 これは口に出さない。


捜索(そうさく)を急ごう。狩り役にも出くわすかもしれない。気を引き締めてかかろう」


 さっきのキバオ達は不意を打って倒した。

 不意打ち二連発である。


 正面から戦えば苦戦するかもしれない。



 トウコが言う。


「あ……なんか聞こえるっス! ……うめき声?」

「生存者か!?」


 トウコが指さした店舗に俺は駆けよる。


 そこには二人の男女がいる。

 床に血だまり。その上に男が倒れている!


 倒れた男性に女性がしがみついているようだ。

 彼女は嗚咽(おえつ)のような声をもらしている。


 うつむいていて、顔は見えない。


「ああ……ううう」

「おい、大丈夫か!? 助けに来たぞ!」


 女性は俺の声に反応を示さない。


 男性は動かない。

 だが血が流れているなら、まだ息がある!


 女性はぶつぶつと呟いている。


「ああ……」

「おい!しっかりしろ!」


 女性は男性におおい(かぶ)さったまま、顔を上げずに、なにか呟き続ける。


「おお……しい……」


 女性は混乱しているのか?

 まともな返事は返ってこない。


 男性は上半身から血を流しているようだが……女性の陰になっていて見えない。


「どうした? 大丈夫か!? ちょっと見せてくれ! そっちの人にもポーションを使えば……!」


 俺は二人に近づき、ひざをついて男性の様子を見る。


 意識はないようだ。

 びくびくと体をけいれんさせている。


 傷はどこだ……?

 間に合うか……!?



 リンがあせった声を出す。


「ぜ、ゼンジさん! その人はちがう――!」


 男性の上にかがみこんで、女性は口を動かしている。


 くちゃ、くちゃ。


 ……なんの音だ?


 女性ががばりと身を起こす。

 その口元は真っ赤に染まっている。

 血だ。


 口から血をしたたらせながら、女が言う。


「ああ……おいしいィィ! おいしいおいしい! おいしいよォォ!」

「な、なに!?」


 口の中には……赤いなにか。

 赤い肉のカタマリを咀嚼(そしゃく)している。


 これは……!

 この女は……!?


 男性の体が塵となって消える。

 持ち物も、流れ出た血も消えてしまう。


 くそ……助けられなかった!

 あまりの衝撃に俺はあぜんとする。


 俺の背後で銃の撃鉄(ハンマー)を上げる音。

 トウコが言う。


「店長っ! そいつは敵っス! モンスターっス!」


 そうだ! こいつは生存者じゃあない!

 敵だ! もうわかっている!


 だが、戦う身構(みがま)え――心の準備ができていない。


 赤い口の女が、狂喜して俺へと手を伸ばす。

 口の中には長い牙がのぞいている。


「おお……おかわりィィィ! お前もおいしそうだァッ!」


 いまさら【危険察知】が警鐘を鳴らす。

 【回避】が安全域を知らせる。


 だが、避けられない!


「――させません! 燃えちゃえーっ!」


 牙女が燃え上がる。


 銃声。着弾。

 女がのけぞって、耳障りな悲鳴をあげる。


「ぎぃぃやぁあ! あついっ! いたいっ! おいしくないィィ!」



 俺は後ずさりながら言う。


「――すまん! うかつだった!」


 牙女がぐらりと倒れる。

 炎につつまれ、立ち上がれずにもがいている。


 リンが微笑(ほほえ)む。


「ゼンジさんは誰にでも優しすぎるから心配です……。急に女のひとに近づいたらダメですよ?」

「お、おう?」


 牙女がいっそう強く燃え上がる。


「アアア……」


 そのまま女は燃え尽き、魔石が転がる。


「なんかリン姉、笑顔がこわいっス!」

「えっ? そうですか?」


 リンは俺に問いかけている。


 ノーコメントだ。

 炎にあぶられる牙女を前に笑うリンはとても……うん。


 すごくアレだ。

 こ……心強いね!?


「いや……助かったよ二人とも」



 トウコが親指を立てる。


「セーフっス!」

「無事でよかったですー!」



 一方、ハルコさんはぼうぜんとしている。

 こんな状況じゃ無理もない。


「い、今の人って……さっきのバケモノの仲間だったんですねぇ?」

「ああ、そうらしい。男の人を食べてたみたいだったな……」


「でも、キバ子はキバオよりアホっぽかったっスね?」

「たしかにな……って、また雑なネーミングぅ!」


 階段の二人組は、品は悪くても普通の会話をしていた。

 牙女(キバ子)はもっと知性が低い。食べることばかりだ。


 この違いは……?

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