四階層リトライ! アクロバット最高だな!
いいね機能が実装されたらしいので有効化しました!
四階層へ到着した俺は、息を整える。
勢いも大事だが、新しいエリアは慎重に行く。
装備をクラフトで補充する。
多めに持ってきたので手裏剣の残弾も充分。
アクロバティックな動きをしても、腰袋の中身がこぼれたりはしない。
バケツに水を入れて振り回しても水がこぼれないのに似ているな。
分身と体捌きだけで戦えるようになってきたので、投げモノは温存できている。
くるくる回っても、マフラーは身体に絡まったりしない不思議。
クラフトでファンタジーな効果はついていないと思うが、これは【軽業】のおかげなのかな?
進むルートは左側。前回と同じだ。
マップも埋めたいが、同じルートをまず確立する。
確かめておきたいこともあるし。
途中で遭ったゴブリンやコウモリを倒しつつ、宝箱のあった場所へたどり着いた。
宝箱はさっき俺が開けたまま、開いている。
コウモリが近くに居ないことを確認して、宝箱の中を覗きこむ。
……カラだ。
「まだ湧かないか……残念!」
確認したかったのは、宝箱の中身が復活するかどうか。
開けたのは朝飯前で、今は夕方くらい。
半日も経っていないんだから、まだ湧かないか。
宝箱はゲームによっては、復活する場合がある。
一日一回だったり、ダンジョンに入るたびだったり。
俺のダンジョンはマップが再生成されない。
毎回同じマップで、置いたアイテムは次回もそこにある。
たとえば投げて回収し損ねた手裏剣は、次に来た時に落ちていることもある。
あまり放置すれば消えるはずだが、投げた武器とはいえ所有物。
これは俺んだ! 盗むなよ!
という気持ちでいれば、ダンジョンに消されずに済むかもしれない。
アイテムが消える瞬間は見たことがない。
分解されるんだろうか。塵になるんだろうか。それとも吸収されるのか。
ゴブリンの血みたいな有機物は、結構すぐ消えるからな。
武器が汚れたりしないのは助かっている。
ちなみに血は塵になって消える。
アイテムもこうなるんだろうか……。
ダンジョンの地形は毎回固定だ。
だけど、ゴブリンなどのモンスターは倒してもリスポーンする。
たくさん倒すと、しばらく湧きは悪くなるが、時間を置けばわいてくる。
モンスターが枯渇することはない。
つまりいくら倒しても、いなくなることがない。
これは悪いことではない。
魔石や経験値を集めるために、枯渇してもらっては困る。
「宝箱もリスポーンしてくれるといいんだけど……もうちょい放置だな」
一日一回くらいじゃないかと思っている。
モンスターのリスポーンもおそらく、それに近いからだ。
連続して狩りすぎると湧きが悪くなるから、毎日宝箱を開けていくと、わきにくくなる可能性はある。
「この宝箱、フタを閉めておいたほうがいいのか?」
なんとなく、閉めておいたほうが中身が湧きやすいような……。
いや、遠目に「開けた宝箱」とわかるほうがいいか。
数日放置してダメだったら閉めてみるか。
俺は宝箱のフタをそのままにして、先へ進む。
壁を走り、宙をとんで先を急ぐ。
ちなみに【壁走りの術】と【軽業】【跳躍】は併用できる。
ただ、ちょっと気を付けないと危ない。
【壁走りの術】は壁から一定の距離離れると効果が切れる。
調子に乗って高くジャンプして壁から離れると、床に向かって落下する。
壁を蹴ってアクロバットな動きをしていると、上下が途中で切り替わって墜落しかねない。
一度、変な方向にぶっ飛んで地底湖に突っ込みそうになった。
幸い壁に手が届いて【受け身】を取ることができた。
回転したり上下が切り替わると頭が混乱してくるな!
「ん、この動き……使えるな!」
思いついてしまった!
失敗は成功のもとだ。
アクロバットの技は、足や腕を振って加速をつける。
振り子のようにして、自分の身体を投げ飛ばすような感じ。
壁から手が離れてぶっ飛ぶあの感じ……。
アクロバットにおける助走技に応用できるんじゃあないか?
足場が比較的広い場所で試してみる。
床で何度か試した感じ、理屈としてはできそうだ。
「じゃあ、壁でやってみるか!」
まずは壁を駆け上がる。高さを稼ぐ。
下を見下ろすと、床が遠い!
失敗して地面に叩きつけられたら……ちょっと怖い。
その時は頼むぞ【跳躍】の落下ダメージ軽減! そして【受け身】!
「よし……やるぞ! ……こわっ!」
大きく息を吸って、覚悟を決める。
壁を斜めにかけ降りながら、添えていた手を放す。
そして小さく跳んで足を壁から放す。
【壁走りの術】の有効射程を超えて、重力は下方向へ向く。
つまり、自由落下だ。
頭を下にして、壁すれすれを床に向かって落ちていく。
床が迫る!
「うおお……ここだっ!」
壁に手を伸ばし【壁走りの術】を発動させる。
術が発動し、重力が壁方向にもかかるようになる。
壁に吸い付く力で、地面のように手が「接地」する。
接地した手を支点にして、体を回転させる。
【受け身】の要領で身体を前方へ投げ飛ばす。
手を少し前につき、足で壁を蹴るのがポイントだ。
ぐるんと力の向きが変わり、俺は床から見て上方へ飛び上がる!
壁スクートだ。壁面片手ゴマだ。
落下の速度を転換して、そこに【跳躍】も乗せた大ジャンプだ。
空を切って、はるか上方へと飛びあがる!
「ううおおっ! できたっ!」
飛び上がった先の壁面へ着地し、ジャンプの加速そのままに走り抜ける。
「おおお、すげえ! 壁走り競技で俺の右に出る者はいないぞ!」
そんな競技はないが。
スキルが外で使えるなら出場したいくらいだ。
まずは競技団体を立ち上げるところからだな……。
うん、やらない。
【壁走りの術】の効果時間が切れる前に床へ戻り、息をつく。
「ふう……手が擦りむけたな。手袋しててよかった!」
鋭い岩の出っ張りをかすめたのか、手袋に穴が開いて手のひらには血がにじんでいる。
ちょっと危なかったな。
しかし、こういうのは試しておかないと実戦で出せない。
マグレとか偶然で戦いたくはない。
手袋をリサイクル修理して、手には薬草の汁を塗っておく。
一枚分の汁を塗り、一枚を食べる。
前回の回復力から考えて、このケガに対してはこの量で十分だ。
「これ、もったいないよな……残りを取っておくことできるか?」
薬草はモノリスで4枚1セットとして引き換えることができる。
根元が茎でつながった植物として手に入るわけだ。
使うときは茎からちぎって使うわけだが、一度に全部使うほどのケガでもない。
食べておけば筋肉痛とかに効くわけだが……。
回復量があふれるのがもったいないんだよね。
「使わずちょっと様子を見てみるか。消えそうになったら食べてしまおう」
残りの葉を手に持ったまま、先へ進む。
ときおり手元をチェックする。
しばらくすると、薬草の端のほうから崩壊が始まる。
モンスターの死体や有機物が分解されるときに似ている。
塵化する速度はゆっくりだ。
「やべ! やっぱりまとめて使う必要あるのか!」
急いで、塵になりはじめた薬草を口に放り込む。
味は変わりない。塵の味とか、しないのね。
少し回復成分も飛んでしまったかもしれないな。
でも、消えてしまうよりはいいだろう。
アクロバティックな動きのせいで、明日は筋肉痛必至だ!
頼むぜ薬草!
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ありがとうございます!
なにかしらリアクションがもらえると、やる気出ますね。




