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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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同時多発悪性ダンジョン攻略! その2

 ショッピングセンター前の通りは少し混雑している。

 だが、ダンジョン領域は広がっていない。


 その証拠に、普通に人々が行きかっている。

 バスやタクシーに乗り込む人たちであわただしい。


 敷地(しきち)内には案内アナウンスが流れている。


「――ガスもれが発生しました。館内の皆様は、係員の指示に従って避難(ひなん)してください。くりかえします――」


 係員らしき人が人々を誘導している。


「あわてずに避難してください!」



 建物から出てくる人々の顔に緊張感はない。

 それを見てトウコが言う。


「まるで避難訓練っスね!」

「たしかにそうですねー。みなさん、落ち着いています」


 人々はやや不安げに、あるいは不満げに歩いている。


「落ち着いているのは認識阻害のせいで異変に気づかないから、だろうな……」


 警報は、客を避難させるために手配したのだろう。


 実際にはガス漏れは起こっていない。

 起きているのはもっとマズイ事態だ。



 俺たちは人々の流れに逆らって走る。

 自動ドアをくぐって、建物の中へ。


 ここでも大きな変化はない。


「建物のなかも普通っスね」

「もっと奥かもしれない。気を引き締めていこう」

「はいっ!」



 イヤホンから御庭の声が聞こえる。


「到着したね、クロウ君! 監視カメラで見えている。その建物は三階建てだ。二階と三階の映像が取得できないから、ダンジョン領域にのまれているはずだ! 気を付けてくれ!」


 俺は監視カメラに手を振る。


 ハカセがハッキングして、建物の映像を見ているんだろう。

 俺たちが目立つ動きをしたとしても、証拠は消してくれるはずだ。


 マスクで口元を隠しているとはいえ、身元がバレるのは避けたい。


「ああ、わかった。気を付ける」


 音声回線は開きっぱなしなので、こちらの声も届いている。

 御庭は複数の回線を切り替えながら、俺たち以外ともやりとりしているらしい。



 エスカレーターを発見する。

 動きは止まっているが、階段としては使える。


 俺は二階へ続くエスカレーターを駆け上りながら違和感を覚えた。


 ここは吹き抜けになっていて、三階の天井まで見えている。

 御庭は、二階がダンジョン領域にのまれていると言っていた。


 ここから上を見る限り、一階と変わらない様子だ。

 人影はないが、平穏な店内の様子に見える。


 ――なぜ、照明がついている?

 ――なぜ、誰も逃げてこない?



 俺は疑問を口にする。


「なんで誰も降りてこないんだ?」


「みんな避難(ひなん)したんスかね?」

「そうだといいですね……」


 二階へ上りきったところで、空気が切り替わるような違和感。


「――むっ?」

「いやな感じっスね」

「あっ!? 暗くなっちゃいました……」


 一つ目の疑問は解けた。


 二階の照明は消えている。

 停電というよりは、照明や電子機器が動いていないのだろう。


 一階から見えていたのは……みせかけだ。



 腕のスマートウォッチの画面もブラックアウトした!

 つまり――


「領域に入ったぞ! リン、索敵! トウコ、警戒!」

「はい!」

「リョーカイっス!」


 リンが周囲を見回し、トウコは銃を抜いて構える。


 俺は周囲を見回す。

 照明の消えた建物内はうす暗いが、窓から差し込む明かりがある。


 振り返って、いま登ってきたエスカレーターごしに一階を見る。


 まだ避難は完了していないらしく、出口へ向かって歩く人が見える。

 彼らは二階の異常には気づいていないようだ。


 俺が一階から二階を見たとき、見た目の異常を感じなかった。

 停電しているようにも見えず、普通の景色が見えていたのだ。

 ダンジョン領域との境界線は、こういう見え方をすることもあるんだな。



 リンとトウコが言う。


「近くには魔力の反応ありません」

「遠くで音が聞こえるっス! 動物の唸り声みたいな……」


 モンスターがいるのかもしれない。

 だが踏み込む前にやることがある。


「引き続き警戒してくれ。ちょっと報告してくる!」


 俺は一歩踏み込んで領域外――エスカレーターへ戻る。

 すると、スマートウォッチのディスプレイが復活した。


「御庭! 二階は()()()()が広がってる! 探索を始めるぞ!」


 ダンジョンという用語を使わないのは、人に聞かれないための配慮だ。

 少しの間があって、御庭が応答する。


「――わかった! 気を付けてくれ、クロウ君。無理はしないようにね!」

「承知した! では、あとで!」


 俺は再び二階に足を踏み入れる。


 境界線を越えたとたん、銃声が耳を打つ。

 トウコが煙のたつ拳銃を構えている。


「店長! 敵っス!」


 さらに発砲。

 銃口の先で、四足の獣が倒れる。


 モンスターだ。

 すでに会敵(かいてき)している!



 リンが手をかざして叫ぶ。


「ファイアボォールっ!」


 暗い室内を明るく染めて、火球が飛んでいく。

 その光に照らされて、何匹もの(けもの)が走ってくる姿が見えた。


 俺は【忍具収納】から愛刀を取り出して構えた。


 ――戦闘開始だ!

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