荒れ寺での初詣とアポなし訪問! その2
ウスイさんに案内され、地下の事務所――オペレーションルームへと通される。
そこでは、御庭が通信機ごしにどこかへ指示を飛ばしている。
ハカセやスタッフもディスプレイを前にあわただしく動いている。
……なんだ?
こちらの姿を見て、御庭が言う。
「やあ、クロウ君。返事できずすまない。ちょっと作戦中でね――いったん下がって。すぐに増援が向かうから耐えてくれ!」
後半は俺に向けての言葉ではない。
通信機越しにどこかへ連絡しているようだ。
御庭にかわって、ハカセが端末を操作しながら言う。
こちらへ振り返りもしない。
「クロウっち! 来たね。こっちはもう大忙しだよ!」
ハカセは端末を驚くほど速く操作している。
俺は言う。
「御庭、なにが起きてるんだ?」
「悪性ダンジョンだよ、クロウ君! 同時にいくつも発生して、それぞれ爆発的に成長しているんだ!」
御庭はそう言うと、またどこかへ連絡を始める。
移動先を伝えたり、攻めや守りを指示しているようだ。
ハカセが言う。
「ほらクロウっち。大きいのはここと、ここと、ここねー」
ディスプレイに映し出された地図に大きな印がつく。
続けてハカセが言う。
間延びした口調だが、声色は厳しい。
「悪性ダンジョンが発生してるんだよー。でも、これはおかしい!」
「おかしい?」
「多すぎるし、場所も変だ! それに規模が大きすぎる。いくらなんでもおかしいよねー!?」
「俺はどのくらいの頻度でダンジョンが発生するのか知らないんだが……見落としじゃないのか?」
ハカセが振り返って俺をにらむ。
「失礼だね、クロウっち! 小さいものならともかく、こんなのを見落とすはずないだろー? ないんだよ! この俺っちが! 見落としなんて、ありえない!」
「ああ、悪い。別にハカセを疑ったわけじゃない」
御庭がすっと手をあげて割って入る。
「原因追及は後にしよう。今は判断材料が足りない。まずは情報を集めるのが先だ。ついては、クロウ君――」
「――ああ。どうすればいい?」
御庭はなにかを確認するように俺の目を見ている。
その目は厳しく、切迫した状況を物語っている。
「現地へ行ってくれるかな?」
俺たちにはある程度の自由がある。
無理な命令を聞くような縛りはない。
断ることもできるだろう。
今、規模の大きい悪性ダンジョンが同時に三つも発生しているという。
これは異常事態だ。
なにかある。危険ななにか。
だが、危険は承知している。
覚悟もできている。
その危険と戦うために、俺は公儀隠密に入っているんだ!
「ああ、いいぞ。リンとトウコもかまわないな?」
俺は二人に問いかける。
聞くまでもないとは思うが――二人はすぐに頷いた。
「もちろん、一緒に行きますっ!」
「今日は肩すかしされてたっスからねー! 腕がなるっス!」
今日はもともと、悪性ダンジョンへ行く準備をして出てきている。
すぐにでも戦える。
「よし。御庭、どこへ行く? なにをすればいい?」
御庭は安心したような表情で言う。
「クロウ君ならそう言ってくれると思っていたよ! 最初にやることは、情報収集だ。それから撤退の支援をしてほしい!」
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