表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

519/1471

荒れ寺での初詣とアポなし訪問!

本日二話目!

 俺たちは荒れ(でら)へ来ている。

 御庭(おにわ)の拠点だ。



 荒廃(こうはい)しているが、いちおう本堂(ほんどう)もある。

 信仰心なんてないから、寺でも神社でも、荒れていてもかまわない。


 もう正月の三が日は過ぎたが、初詣(はつもうで)である。

 ダンジョンに入り浸っていると季節感が狂うんだよな。


 年が明けても、パンデミックは収まっていない。

 人混みには行きたくない。


 ここなら人もいないし、ちょうどいい。



 俺はジャケットを着てはいるが、下はジーンズ。

 リンは長めのスカートとコート姿。

 トウコは戦闘服の上にフードつきの上衣を羽織っている。


 初詣はついでなので、フォーマルな格好ではない。

 ま、文句を言う参拝客も、寺の人もいない。



 荒れた本堂には賽銭箱(さいせんばこ)などは置かれていない。

 割れたガラスのスキマから中をのぞいても、拝むべき仏像なども見当たらない。


 まさに伽藍洞(がらんどう)。なにもない。

 だから、(もう)でても、ご利益(りやく)があるかもあやしい。


 ま、こういうのは新年の儀式みたいなもんだ。

 やることに意味がある。



 それらしい場所で、俺は無言で手を合わせる。


 リンは目を閉じて手を合わせ、まじめな顔をしている。


 トウコはパチパチと手を叩きながら言う。


「三人でずっと一緒にいられますよーに!」

「……願い事って口に出していいんだっけ?」


 口に出したほうがいいとも聞くし、出してはいけないとも聞く。

 正しい作法なんて俺は知らない。


「口に出さないと伝わらないっス!」

「失礼のないようにお願いすればきっと聞いてくれますよー」


 トウコの態度は普段よりはマシ。

 願いの内容も不純ではないし、大丈夫かな?


「リン姉はなに頼んだんスか?」


 リンははじらうような表情ではにかむ。


「それは……秘密です」

「恥ずかしいお願いしたんスか!? くわしく!」


 リンはやたらと長い間、手を合わせていたけど……。

 不純な願い事なんてしてないよな?


「おいおい。無理に聞こうとするなよ?」

「じゃあじゃあ、店長はなに頼んだんスか?」


「だから聞くなって」

「無理にじゃなくて、さりげなく聞いてるっス!」


 そういう問題じゃないけど。

 ま、隠すことなどない。


「俺はなにも頼まなかったよ」


 トウコはにやにやと、下からのぞき込んでくる。


「欲がないっスねー。ホントっスかー?」

「ウソついてどうする! ……でもトウコの言うように、ずっと三人で居られたらいいな」


 こういうのは神仏に頼むことじゃない。


 自分でつかみ取るものだ。

 そして、その手を離さなければ願いはかなう。


「うっ……店長はすぐ不意打ちしてくるっス!」

「大丈夫です! きっとかないますよ!」


 俺は二人の手を取る。

 二人はその手を握り返して、笑った。



 事務所のほうからウスイさんが歩いてくる。

 俺たちの来訪を知って、出てきたんだろう。


 俺は出迎えてくれたウスイさんへあいさつする。


「あけましておめでとうございます。ウスイさん」

「おめでとうございます。クロウさん……今日はどうしたんですか?」


 ウスイさんはスーツ姿だ。

 くたびれたサラリーマンみたいに見える。


「今日は仕事――公儀隠密の仕事をしようと思ってたんですが……」


 そこで俺は言葉を切る。

 ウスイさんがひきとって言う。


「つまり、悪性ダンジョンを潰しに行くのですね?」


 近いが、違う。


「いや、もう行ってきたんです。御庭から聞いていた場所へ。だけどそこには――なにもなかった」

「ダンジョンがなかったんですか……?」


 ウスイさんは困惑している。


 俺は御庭から()()()()()悪性ダンジョンの情報を渡されていた。


 急がない案件。

 異能者には手が出しにくい案件である。


 進行が遅く、モンスターやダンジョン領域があふれ出るのが遅い。

 だから俺たちがそこへ向かった。


 ダンジョンの中に入って潰すためだ。

 しかし――


 ――そこにはダンジョンも異変もなかった。


 二件目の案件も同じ。もぬけの殻。

 ある意味、異変がないのは平和でいいとも言えるが……。



 ウスイさんが言う。

 けげんそうな面持ちだ。


「では、御庭さんに呼ばれたわけではないのですか?」

「呼ばれたわけじゃない。アポイントは取ってないけど……」


 もちろん、連絡はしたんだが――


「居るんスか? 電話にもメールにも返事がなかったっス!」

「お忙しいんでしょうか? 押しかけてご迷惑でしたら――」


 ウスイさんは首を振る。


「いえいえ。少し立て込んでいまして……ご案内します」


 そう言うとウスイさんは先に立って歩いていく。


 立て込んでいる?

 返事ができないほど忙しいんだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ