見晴らしトイレと露天風呂……最重要施設!
完成したトイレをお披露目するぞ!
草原ダンジョンの拠点は丘の上にある大きな木を中心にしている。
転送門から見えない、見晴らしのいい場所にトイレを設置した。
丘の上に見えるのは、木製の構造物である。
二室の個室トイレがあるだけだが、ちょっとした建物だ。
俺は建物を指し示す。
「さあ、リンがリクエストした見晴らしのいいトイレだ! どうかな?」
リンが両手を合わせて歓声を上げる。
「うわあ、完成したんですねー! ここからの眺めは最高です!」
【忍具作成】と【木材加工】で作成したトイレである!
トウコはトイレに走り寄っていく。
「思ったより大きいっスね!」
「せまいトイレじゃリラックスできないだろ? せっかく広いダンジョンだし、ぜいたくに作ったんだ」
両手を開いてギリギリ届くくらいの広さだ。
広すぎるとおちつかないし、逆に使いにくいと思うのだ。
中を見て驚け!
トウコがトイレの前面に回り込んで、あっと驚く。
「うえっ!? なんスか、このドアー!?」
「それこそ、見晴らしトイレの個性だ!」
ドアはアクリル板で作っている。
つまり透明な板だ!
「わあー! こ、これはすごいですね! でも、外からも見えちゃいませんか!?」
「内側にはカーテンがあるから、気になるときはしめてくれ」
リンがトイレの中に入る。
「すごくうれしいです! ゼンジさんのトイレをお借りするのも心苦しいので……」
リンはたまに俺の部屋のトイレを使う。
トイレがダンジョンになってしまっているからな。
そして、毎回俺の部屋で借りないということは……。
見晴らしのいいトイレを欲しがると言うことは……。
……追及してはいけない。
「奥の個室は横に窓があるからもっと開放的になっているぞ」
リンは喜んで、隣の個室をのぞいて歓声を上げる。
「すごーい! 見晴らしも最高です! やっぱりトイレは開放的じゃないといけませんね!」
「トイレに見晴らしって必要っスかね……?」
トウコは訝しんだ。
追及してはいけないよ!
「中もきれいだろ? これは手作りじゃなくて買ってきたけどな」
「手作りのトイレはちょっとイヤかもしれないっスね」
ちなみに便器などの設備は通販で買ったものだ。
こういうのは現代の品がいい。
しかし、温水洗浄便座の機能は使えない。
これはどうしようもない。ダンジョンに電力はないのだ。
日曜大工でどうにかできるものじゃない。
「水洗トイレなんですねー。これ、どうなってるんですか?」
「裏にタンクがあるから、水も流れる。水は補充しないといけないけどな」
二百リットルの水タンクを配管している。
さらに手前の個室の壁には手洗い場も完備だ!
この辺は【忍具作成】は使わず、日曜大工である。
「どこに流れてくんスか? 下水道なんてないっスよね?」
「掘っただけの穴だ。ゴミや有機物は分解が早いから、すぐ消える」
草原ダンジョンはある程度、地形を変えても大丈夫だ。
穴を掘ったり、土を盛ったりしても維持される。
自然の環境に近い。
「いちおう言っとくけど、消えるつもりで使ってくれよ?」
「な、なんであたしに言うんスか?」
「例えば肥料にしようと考えたりしないでくれ」
「畑のお野菜に使うってことですか? それはちょっと……」
人間の排せつ物を肥料にするのはお勧めできない。
病気の元である。
売ってる肥料を使えばいい。
魔石なり余った食材をまいてもいいし。
「さて、説明は以上だ! 好きに使ってくれ!」
俺は笑顔でトイレを示す。
「い、今はちょっと……。あとで使わせてもらいますね!」
「店長、さっきからデリカシーないっス!」
リンは顔を曇らせ、トウコはあきれ顔だ。
おう。そりゃそうだな!
次はトウコの希望した露天風呂である!




