荷物と期待の重さ! ……重いほどいいかもしれない!?
「まあ、ケガがなくてよかったよ。それで、鹿のせいでキノコは手に入らなかったのか?」
リンが申し訳なさそうな顔で言う。
「少しだけ……。お肉はたくさんあるんですけど……ごめんなさい」
「いや、リンがあやまることじゃない。どこか別の場所にも生えてるはずだ。明日は別の場所を探してみたらどうだ?」
「あ、他の場所に少しはあったっスよ!」
「だよな? 一か所だけってことはないと思ったよ」
森は広いし。一度に探索しきれない。
まだまだ宝があるはずだ。
リンが気を取り直したように頷く。
「明日、もうちょっと探してみますねー」
「俺は明日も木材調達だな」
トウコが眉を上げて言う。
「店長、きこりになる気っスか!?」
「ならねーよ! 風呂とトイレを作るんだよ!」
リンが胸の前で手をたたく。
「私たちが頼んだからですよね! すごく楽しみですー!」
「そうだったっス! お風呂! みんなで入るっス! 混浴ヒノキ風呂っスよ!」
「この木はヒノキじゃないけどな」
「別に木の種類はどーでもいいっス!」
「こうして労働……いや、攻略のあとは風呂に入りたいよな」
「そうですねー。私も最近肩こりがひどくて……」
ふうむ?
おっと、目線が露骨になってしまう。
忍べ俺!
「リン姉は重い荷物を運んでるからっスね!」
「えっ? そうかな? 軽いよ?」
リンはドロップ品を持ち帰るための荷物を背負いなおした。
トウコが言いたいのはその荷物じゃないが。
リンは鈍かった。
助かるね! じゃない……!
「そういえば、魔石以外のドロップ品はどうだったんだ?」
「前と同じですね。シカさんのツノと皮です」
宝箱の中身はリンが倒せば食材になる。
スライムはトウコが弾丸にする。
トウコがシカを倒した場合はランダムだ。
魔石はさっき俺が木馬に使った。
残りは角と皮。
皮は作業用エプロンに使ったが、角はまだだな。
「帰ったら角を使って何か作ってみようか」
「店長、ツノ職人になるんスか?」
「ならねーよ! てか、そんな職業あるのか?」
「シカさんの角でアクセサリーを作ったりするらしいですよ?」
鹿角職人?
「へえ? 世の中にはいろんな仕事があるもんだ」
「じゃあアクセサリー作るんスか? アクセ職人っスか?」
「ほしいなら作るが――」
「――ほしいですっ!」
リンが食い気味に言う。
勢いがすごい!
「お、おう? 特殊効果とかはつかないけど……意味あるのかな?」
俺のクラフトに魔法の効果はつかない。
防御力やヒットポイントが増える装備が作れればいいんだけど……。
「意味って実用性っスか?」
「……その、ゼンジさんにもらえればなんでもいいんです」
リンは顔を赤くしてうつむく。
俺は頭をかく。
「……あ、そういうことか」
トウコはにやにやして、俺の脇腹をひじでつつく。
「店長、ニブいっスねー。鈍感系無自覚キャラっスかぁ?」
「そんなんじゃないわ! ……ないつもりだ」
これは俺が鈍かった。
リンの鈍さにツッコめない俺である。
単なるプレゼント、装飾品がほしいんだな?
素で頭に浮かばなかった……。
トウコのうそくさい素にツッコめない俺である。
「けどまあ、なにか考えてみるよ」
「はい! 待ってます!」
リンは目を輝かせて頷いた。
期待が強すぎて重――やりがいがあるな!
 




