第五エリアでのレベリングと食材収集!? 食害、許すまじ!
第五エリアからの帰路。
分身に木馬を引かせているが、とりあえず順調に進んでいる。
段差や傾斜がある場合は横木を置いて、滑りをよくして突破する。
「レベル上げは順調だったんだろ?」
「今日は一つ上がったっス! 明日もやるっスよー!」
レベルはそうそう上がらない。
一日で元に戻るわけじゃない。
ま、順調ってことだ。
だが、リンはなぜか悲しげな表情をしている。
「リン。どうした? 食材も集まったんだろ?」
「ゼンジさん……それが、悲しいことがあったんです!」
「……なにがあったんだ?」
リンが訴えかけるように言う。
「キノコがなかったんですー!」
「キノコかよっ!?」
地図に印までつけて、ばっちりマークしていたキノコの群生地。
前回で採り尽したわけじゃない。
それにキノコは地中の菌から生えてくるはず。
「なかった? ぜんぜんないのか?」
「シカさんです! あったんですけど、シカさんが食べちゃったんですよー!」
リンがややふくれた表情で言う。
怒るのはめずらしいな。
怒ってもカワイイ……とか言うと怒られちゃうか?
カワイイの無限ループになっちゃうな!?
俺は疑問を口にする。
「シカってキノコを食べるんだっけ……?」
シカは雑食性だったと思うけど……。
ここのシカは肉食というか、好戦的だ。
そういえば、シカの食害は現実世界でも問題になる。
農作物や森林を荒らすんだ。
トウコが自慢げに言う。
「がつがつ食べてるところ見たっス! そんで、すぐ撃ち殺したっス!」
「物騒だな!?」
まあ、モンスターだしどっちにしろ倒すんだけど。
言い方で損してるよな、トウコは。
トウコが言う。
「だって、せっかくのキノコっスよ!? うっかり【憤怒】が発動しかけたっス!」
「発動しかけたけど我慢したってことか?」
「ガマンしたっス! 怒りがこみあげてくるっていうか……ムラムラっと――」
「――ムカムカだろ? しかし……感情がトリガーでスキルが発動するのか……」
「じゃあ【狂化】も気持ちでできちゃうんでしょうか?」
「どーなんスかねえ? どんな気持ちになったらいいんスか?」
俺は少しあわてる。
「ちょっと待て! 今試すなよ?」
遮蔽物のない草原で銃を撃ちまくるトウコを倒すのは難しい。
「試しかたがわからないっス! 死んだときの気持ちっスかね?」
「うーむ? 怒りとか恐怖か?」
「でも怒ると【憤怒】になっちゃうんですよね?」
「じゃあ痛みか?」
「あー。そうかもしれないっス! 死ぬほど痛い思いしたらわざと【狂化】できるかもしれないっス!」
【狂化】は強力だ。
だが、意識がなくなって敵味方を区別せずに暴れる。
自発的に発動できるとして、戻れないんじゃデメリットが大きい。
「任意発動か……。便利そうだけどうまく使わないとな」
「変身ヒーローっス! いいところで元に戻してくれたらいいっス!」
変身ヴィランじゃないか?
トウコとハサミは使いよう……。
しかし、痛い思いをさせたり意識を失って暴れさせていいものか。
「痛みがトリガーだったとしたら、気を付けないといけないな?」
「なんでっスか?」
「ほら、タンスの角に小指をぶつけて【狂化】したりしたら困るだろ?」
「タンスには気を付けてね、トウコちゃん!?」
「ケガ全般な?」
「気をつけてないわけじゃないっスよ!? 戦ってたらケガはしょうがないっス!」
「今回はケガしなかったか?」
「大丈夫っス! リン姉が敵の場所教えてくれるんで、近づかれる前に倒せるっス!」
リンがさらっと言う。
「私はちょっとシカさんにぶつかられちゃったけど、大丈夫でしたー」
「まじかよ!? 大丈夫か? ケガはないか?」
俺はリンの体をチェックする。
見た限り、リンはケガをしていない。
少し服が土で汚れている。尻もちでもついたのか?
リンがあわてて言う。
「あっ!? だ、大丈夫です! ケガはしていません!」
「かすったくらいっスね! リン姉は頑丈ですごいっス!」
「頑丈って言ってもな……!」
「ポーションも持ってましたし、大丈夫ですよ。心配させてしまいましたね」
「店長、リン姉のこと好きすぎっス!」
「……心配するのが普通だろ?」
俺はとぼける。
「そっスねー。でも心配しすぎっス!」
トウコのほうが心配させてくるけどな!?
「うれしいような……申し訳ないような……複雑ですね!」
リンはうれしげにそう言って笑った。
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