ウェーブクリアによる脱出!
さっきのボマーで五ウェーブの敵は打ち止めらしい。
<熟練度が一定値に達しました。スキルレベルが上がりました!>
<【危険察知】 1→2>
レベルは上がらなかった。
まあ、窓女は強いとはいえボスじゃない。
それに、五ウェーブの敵もほぼトウコが倒したしな。
デスペナルティで下がらなかっただけでも良しとしよう!
今のステータスは――
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名前 : クロウ ゼンジ
レベル: 19
筋力 : C
体力 : B
敏捷 : B+
知力 : C
魔力 : C
生命力: C
職業 : 忍者、中級忍者
スキル:
【忍術】2
【壁走りの術】2
【分身の術】5
【薬術】2
【忍具作成】3
【忍具】2
【忍具収納】3
【体術】2
【毒術】2
【吸着の術】2
【反発の術】1
【中級忍術】
【判断分身の術】1
【入れ替えの術】2
【引き寄せの術】1
【隠密】
【隠術】2
【消音】2
【致命の一撃】2
【暗殺】2
【投擲】2
【歩法】2
【身体強化・敏捷力】1
【身体強化・筋力】1
【身体強化・体力】1
【暗視】2
【回避】2
【受け身】2
【危険察知】2(1から上昇)
【跳躍】2
【軽業】2
【瞑想】1
【打撃武器】
【打撃武器・威力強化】1
【フルスイング】2
【片手剣】
【片手剣・威力強化】1
【ファストスラッシュ】2
【エラー】
【自律分身の術】
【意識共有】
(残ポイント:1)
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自律分身がトウコを床におろして、ぺちぺちと頬を叩いている。
「おい、トウコ……起きれるか?」
「う……うぇ?」
トウコは寝ぼけた様子で目を開ける。
赤く変色していた目は正常に戻っている。
「あれ? ……あたし、寝ちゃってたっスか?」
トウコはぼんやりした表情で目をこする。
正気に戻っているようだ。
「トウコちゃーん! 大丈夫!? ……痛いところない?」
「えっとー? なんともないっス!」
トウコはよくわかっていないらしい。
やはり【狂化】中の記憶は残らないんだな。
残ってたらかわいそうだから、それでいい。
リンががばりとトウコを抱きしめる。
トウコは座っているので、胸に顔が埋まってしまう。
「よかったぁ! 元に戻ったね!」
「うえぁ!? ……な、なんふか?」
「復活して狂化してたんだよ。あとで説明してやるから、シャキッとしろ」
俺たちの前に帰りの転送門が現れる。
「お、出口だぞ! 帰る準備だ!」と俺。
収納で持ち込んだ槍は手元にない。
戦闘のどさくさで中庭や二階に落としたままだ。
これは外に出ると失われてしまうが、また作ればいい。
自律分身が持っていたマチェットを【忍具収納】に入れようとしたが、できなかった。
……やっぱり中のものは持ち出せないのか。
「じゃあ帰る前に、俺を解除してくれ」と自律分身。
「おっと、そうだな。忘れて帰ると妙なことになりそうだ」と俺。
トウコのダンジョンで、自律分身だけが中に残るケースは未検証だ。
俺のダンジョンなら、次に入ったときに記憶を回収できる。
冷蔵庫の場合、話は違ってくる。
入る度にダンジョンが再生成される。
毎回同じ配置だが、一から始まるのだ。
自律分身が最後の状態で、死ぬか消えるかした場合、どうなる?
最後の一人がダンジョンから出ることになるので、ダンジョンが再生成されるはずだ。
そうなったら記憶が回収できなくなるんじゃないか?
次に入ったダンジョンは再生成されて別のダンジョンになる。
つまり自律分身の意識が消失する。
死ぬって意味だ。それは困る!
自律分身が迫真の顔でつっこむ。
「いや、忘れんなよ!」
「冗談だ。お疲れ、俺!」
「おう!」と自律分身。
俺は【自律分身の術】を解除する。
フィードバックされた記憶と経験を読み取る。
俺が死んでから復活するまでの出来事は、聞いた通りだった。
巨大窓女と戦っている間、自律分身はひたすらゾンビを引き連れて走っていた。
スキルも使わず、倒さず、狭い館を走り回るのは大変だな。
<熟練度が一定値に達しました。スキルレベルが上がりました!>
<【歩法】 2→3>
ん……!?
自律の経験で熟練度がたまったのか!?
自律はスキルを使っていないはずだが……。
スキルを使わない状態でも、体の動かし方、足さばきは変わらない?
スキルなしでの縛りプレイみたいな経験が、むしろ熟練度を貯めているんだろうか。
……気になるが、今は撤収せねば。
俺は言う。
「さて、帰るぞ!」
トウコが言う。
「あれ……? もう帰るんスか? ボスは?」
「話はあとだ! 門が閉じる前に外へ出る! ほらいけ!」
「わ、わかったっス!」
「はーい!」
俺たちは転送門へ飛び込んだ。
暗転。
トウコのキッチンである。
「あちちっ! な、なんスかこれーっ!?」
トウコが部屋の様子に仰天する。
火事だ!
カーテンが燃え上がり、床の一部も炎を上げている!
リンがあわてて手を振る。
「ああっ! た、たいへん! 【消火】!」
火はみるみる小さくなって、やがて消えた。
ふう……ぼや程度で済んだな。
冷蔵庫も無事だ。
俺たちがダンジョンに潜っている間、外とは時間の進み方が違う。
「ふう……間に合ってよかった。念のため水をまいておこう!」
俺はキッチンで水を汲んで、床とリンにぶっかける。
「きゃっ!? な、なんですかゼンジさん!?」
「いや……さっき、リンも燃えてたから念のためだ」
「……念のため?」
「リンのためだ」
というか、リンの服が汚れているからだ。
リン自身も記憶から消しちゃってる汚れのことだよ!
それがトウコに気づかれないようにするやさしさだよ!
「そ、そうですか……?」
「今日もぶっかけ祭りっスか! あたしもやるっス!」
「濡れても魔法が使えるかの実験じゃない! トウコは風呂を沸かしてくれ」
俺は焦げたカーテンを取り外す。
これはあとで風呂に沈めよう。燃えると困るからな。
「じゃあ私は床を拭いて……お風呂入って着替えたいですねー」
「あたしの服貸すっスよ! リン姉に着せたい服もいろいろあるっス」
冷蔵庫ダンジョンに挑むとハプニングが多すぎる!
俺は後片付けをしながら、ため息をついた。




