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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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倒すことの簡単さと、倒さないことの難しさ!?

 燃え盛る中庭。

 炎は小さくなっていく。


 トウコはバルコニーに狙いをつけている。

 二階のリンと自律分身は引っ込んでいて、中庭からは見えない。


 【狂化】(きょうか)しているトウコに理性は期待できない。

 リンや俺であっても、わからずに攻撃してくるだろう。



 窓女を倒すのは簡単だ。

 ただ厄介なだけのモンスターだからな。


 だが、トウコを倒すわけにはいかない。

 元に戻してやらなくちゃな!



 俺は大声を上げる。


「トウコ! こっちだ!」

「ううあァア!」


 トウコは唸り声をあげ、ショットガンを俺に向ける。

 目に理性はない。躊躇(ちゅうちょ)なく、銃を構えている。


 【回避】が知らせる安全域は俺の周囲には存在しない。

 散弾の飛び散る範囲は広いから、逃げ場はないのだ。


 引き金が引かれるよりも早く、俺は術をかける。

 無策に声をかけた訳じゃない。


「――入れ替えの術!」


 トウコと俺の位置が入れ替わる。


 俺は中庭へ。

 トウコは一階のエントランスホールに続く入口へ。


「ウああっ!?」


 【入れ替えの術】は位置だけを入れ替え、体の向きはそのまま維持する。

 トウコは建物側を向いていたので、室内を見ることになる。


 そしてそこには――


「ウウ……」

「シャァァ!」


 ゾンビだ。

 自律分身が引き連れて(トレインして)集めた、大量のゾンビがいる。


 トウコは銃をぶっ放し、殴りかかり、噛みちぎる。

 大暴れである!



 自律分身が肩で息をしながら言う。


「ふう……うまくいったな!」


 スキルなしで五ウェーブの敵を集めるのは大変だっただろう。


 俺は頷く。


「このエサでトウコが元に戻るといいが……」

「トウコちゃん、大丈夫かなぁ? ……おなか壊さないといいんだけど……」


 トウコはゾンビを倒しては、魔石を口に入れていく。


 ときにはゾンビをまるかじりにしている。

 ……まあ、栄養にはなるだろう。


「窓女の腕をかじっても平気だったし、大丈夫だろ」と俺。

「本人に記憶が残らないことを祈ろうぜ」と自律分身。

「そうですね……」


 リンは微妙な顔で頷いた。



 このゾンビの経験値をエサにして、トウコを回復させる作戦だ。

 魔石でもモンスターでも【捕食】できるはず。


 支払うコストがなくなれば元に戻るかもしれない。

 逆に、たくさんの魔力を得れば戻る可能性もある。


 もし戻らなければリカバリーポーションを試す。

 それでもダメなら気絶させるか拘束して、外に連れ出す。


 六ウェーブ以降までダンジョンの中にいるのは危険だ。


 仮に外に出ても【狂化】が解けないなら、また冷蔵庫に連れ込む。

 そうして解除されるまで待つしかない。


 次に入ればまた一ウェーブから始まる。

 やりなおせばいい。


 トウコが元に戻るまで、何度だってやってやる!

 見捨てる選択肢なんて、ありえない。



「いや、五ウェーブはなかなか激しいな!」

「ああ。だからこそエサが多くて助かるとも言える」


 俺たちは二階に移動して高みの見物だ。

 分身の槍ぶすまとファイアウォールで通路を封鎖しているので、ゾンビはやってこない。


 ボマーの爆発だけ気を付ければいい。


「私もトウコちゃんを手伝わなくていいんでしょうか?」

「顔を出すとトウコに撃たれるからな。もうちょっと待とう」


 こちらに気づいて襲ってくると面倒だ。

 トウコと戦うわけにもいかないしな。


「あ……トウコちゃんの様子が……!」

「お? 髪の色が戻っていくぞ」


 トウコの髪が白から黒へと変わっていく。

 前髪の一束を残して、髪が黒に戻る。


 そして、がくりと座り込んでしまった。


「あれ? トウコちゃん眠っちゃった?」

「ああ、そうみたいだな」


 周囲のゾンビはほぼ倒されている。

 だが、奴らが来る!



「新手だ! リン、魔法を準備してくれ」

「はい!」


 トウコのいる一階のホールへ、通路から三体のボマーが現れる。

 たぶんこれが、五ウェーブの最後の敵だ。


「入れ替えの術!」


 俺はトウコと位置を入れ替える。

 自律分身が眠っているトウコを背負って安全な場所へ移動する。


 俺はボマーの一体に向かう。


「ファイアーランスっ!」


 リンの手から極太の炎の槍が飛ぶ。

 俺から一番遠いボマーの頭部に着弾して、頭を吹き飛ばす。


 ボマーは塵になって消える。


「お? 爆発しないな?」


 頭を吹き飛ばしたからか。

 俺は目の前のボマーの頭部へ鎌鉈を打ち込む。


「ファストスラッシュ!」


 加速した重たい鎌鉈の斬撃は肉を裂き、頭蓋骨をかち割る。

 ――だが、切断には至らない。


 まあ、俺の攻撃力はこんなもの。

 想定通りだ。


 ボマーが発光する。爆発の予兆だ。


 俺は頭部に食い込んでしまった鎌鉈を手放す。

 そして、練っておいた術を発動する。


「分身の術! ――入れ替えの術!」


 対象はもう一体のボマー。

 サイズ差はあるが、分身を含めれば対象に取れる。


 爆発寸前のボマーの横から離れた位置に入れ替わる。

 さらに距離を取るため、俺は通路へと飛び込む。



「グウェエッ!」


 ボマーが爆発する。

 そして巻き込まれたもう一体も誘爆。

 さらに大きな爆発となる。


 その爆発音にまぎれて、空気を裂く音が聞こえる。


 ――【危険察知】が発動する。

 まだ危険がある!?


 目を()らすと、なにかが俺のいる通路へと飛んでくる!


 俺は瞬時に通路の奥へと跳び退(しさ)る。

 さらに分身を操作して、ホールと俺の間をさえぎる。


 盾となった分身が塵となって消えた。

 分身の体を突き抜けて飛んできたのは――鎌鉈!


 爆風で飛んできたんだ!


 俺はすでに回避行動に入っている。

 【回避】が示す安全域は――


 ――下だ!

 俺はすばやく床に伏せる。


 頭のすぐ上を、回転しながら鎌鉈が通り過ぎる。

 鉈は通路に突き立ってびぃんと震える。


「ぜ、ゼンジさーん!?」

「あ、ああ。大丈夫だ! あせったわー」


 俺は(すそ)を払って立ち上がる。


 しかし、このダンジョンの不運は侮れないな!

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