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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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様々な可能性と、シンプルな回答!

 トウコをもとに戻す方法はいろいろ考えられる。


 まずは時間切れ。

 これは確実じゃない。


 どれだけ待てばいいかわからない。

 だが俺たちには時間がない。


 トウコのキッチンは絶賛炎上中だ。

 物理的に燃え上がっている!


 早く外に出て消化しないと火事になってしまう。

 冷蔵庫が燃えたら、中の俺たちはどうなるかわかったものじゃない。



 魔力切れ。

 これは期待できない。

 魔力によって【復活】や【狂化】しているとは限らないからだ。



 愛と希望でトウコを目覚めさせる?

 真実の愛とか熱いキスで魔法(スキル)が解けるって?


 ないない。

 それで治るなら自律分身がもうやっている。

 トウコの意識はない。理性を失っているのだ。



 トウコを倒す手もある。

 復活できないように倒せばいい。


 トウコはゾンビの職業を持っている。

 なら、ゾンビと同じように倒せるはずだ。

 頭部を完全破壊すればいい。


 もちろん、そんなことをするつもりはない。

 腐ってもトウコである。



 【忍具収納】にある状態異常回復薬(リカバリーポーション)を試すのもいい。

 スキルの効果が状態異常と言えるかは試さないとわからない。


 単なるバッドステータスとは言えないから、効かない気はするが試す価値はある。


 だが、窓女との戦闘中に使うわけにいかない。

 仮にポーションが効いたら、トウコが無防備な状態になってしまう。




 結局、シンプルな解決方法だ。

 窓女を倒す!



 俺はリンと自律分身へ作戦を伝える。

 窓女もしょせんはモンスターだ。


 無敵でもなければボスでもない。

 ただデカいだけ。


「リンは窓女をどうイメージした?」

「大きくって、強いって……。あっ!? もしかして私がそう考えたからこんなことに……」


「いや、気にするな。俺とトウコのイメージも反映されている」


 壁を這うかもしれない。

 幽霊のように浮く可能性もある。


 窓女がモンスターとして具現化したきっかけは室外の霧だ。

 あのとき、俺とトウコのイメージも反映されただろう。


 だが一番強いイメージはリンのものだ。

 でも、最強無敵の倒せない敵というイメージではない。

 ないはずだ。


「どれくらい強いと思ったんだ? 俺より強いと思うか?」


 リンは首を振る。

 そして当然のように言う。


「いえ、そんなはずありません! だって、ゼンジさんが勝ったんですよね?」


 リンは強敵だと言った俺の言葉を信じた。

 だから、窓女は強い。


 だけどそれ以上に、リンは俺の強さを過大評価している。

 俺が負けるイメージはない。


「そうだ。倒した。つまり、アレは俺より弱い、背が高いだけの窓女だ」

「えーと……そうなるんでしょうか……?」


 過大評価した俺より弱い、という程度のもの。

 つまり、倒せる相手だ。


 リンのイメージする俺の強さが、ちょっと読めない。

 まあ、イメージした分だけ敵が強くなるとも限らないからな。


「倒せる。自律もいるから俺は二人いる。リンもいる。ああなっちゃいるけど、トウコだって戦うだろ?」


「そうですよね! じゃあ、やっつけちゃいましょう!」



 俺は(やかた)の外壁を走る。


「うお、外から見るとデカいな!」


 当たり前だが、窓女には顔と腕以外もそろっている。

 ちゃんと全身あるんだな……。


 見た目は俺が戦った壁を這う窓女と似ている。

 白いぼろ布を身にまとっていて、手足が長い。


 だが、外から見た窓女は想像以上にデカい。


 建物の二階よりなお高いその長身。

 巨人と言ってもいいだろう。



 巨大な窓女は片手を窓に突き入れ、中を覗き込んでいる。

 壁面の俺には気づいていない。


 室内から銃声が聞こえる。

 トウコが応戦している。


 弾丸が顔面に命中し、窓女が顔を押さえてのけぞる。

 そこへ俺は渾身の力でナタを投擲する。


 狙いは目玉。

 槍の突き立っていない、残った目玉だ。


「……アガッ!?」


 命中。

 目を押さえて窓女がよろける。


 これで両目を破壊した。

 もはや、窓女は何も見えない。


 だが安心はできない。気は抜かない。

 バケモノが目を使って周囲を見ているとはかぎらないのだ。


 俺は壁面で、自律分身から受け取った鉈鎌(なたかま)を抜き放つ。

 そして、機が(じゅく)するのを待つ。



 バルコニーに立つリンは魔法の準備を終えている。

 手の中で、火球が大きくなっていく。


「――ファイアボールっ!」


 放たれた火球が闇を照らしながら飛ぶ。

 狙いたがわず、窓女の顔面にぶち当たる。


「ハ……ァァ!?」


 窓女が顔を押さえて叫ぶ。


 炎は消えず、そのまま頭部を炎に包みこむ。



「ハハッ! アハはは!」


 トウコが笑い声を上げながら、窓から銃を撃ちまくる。

 銃を撃ち尽くしたトウコはそれを投げ捨てると、窓から飛び降りる。


 着地したトウコは、窓女の白い足に飛びつき、かじりつく。

 うめき声をあげ、窓女は足元のトウコへ手を伸ばす。


 チャンス!

 窓女はかがみこんでいる。

 後頭部ががら空きだ!


 俺は壁を蹴って空中へ。

 回転する力を打撃力へ変えて、鉈鎌の峰をぶち当てる。


「うりゃあっ!」


 【フルスイング】が発動。

 窓女の頭部へノックバック効果が生まれる。


 上から横回転して叩きつけた力は、下へと向かう。

 大きく体勢を崩した窓女は顔面から地面へと倒れこむ。


「燃えちゃえーっ!」


 リンがさらに火球を放つ。

 窓女のまとうぼろ布が燃えがる。


 それだけではない。

 さらに放った炎が、中庭の花壇を、植え込みを燃え上がらせる。


 中庭が炎で明るく照らされる。

 熱が生み出した上昇気流が霧を吹き払う。



 俺は壁に手を伸ばし、建物の壁面へと着地する。


「作戦通りだな! これで明るくなった!」


 このダンジョンは暗闇では力を増す。

 妙な不運が続いて、敵の湧きも激しくなる。


 リンの炎なら、闇も霧も問題にならない!



 トウコが、倒れた窓女の頭部へと駆け寄っていく。

 窓女は炎にまかれているが、トウコはひるまない。

 大口を開けて、鋭い牙を立てる。


「らァァ!」

「アアア……!」


 窓女がかすれた悲鳴を上げる。

 そして、その声が途切れる。


 窓女の巨体が塵へと変わって崩れ落ちる。

 トウコが大きな笑い声をあげる。


「あはッ! ははハハハッ!」


 トウコは窓女の魔石を拾うと、口に入れて咀嚼した。



 バルコニーでリンが歓声を上げる。


「やった! 作戦通りに行きましたね!」

「まて、まだ終わってない!」


 バルコニーから身を乗り出しているリンを、自律分身が引き戻す。


「うああァッ!?」


 トウコがバルコニーに銃を向ける。

 【狂化】は解除されていない!



 ここからが本番だ!

祝! 五百話!

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― 新着の感想 ―
[一言] 腐ってもトウコw確かに職業ゾンビですけどね!
[一言] 五百!さすが忍者はやい! 自律分身さん、地味に便利ですよねえ
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