【朗報】スキル、つよい! 【スキル検証】【隠密】【暗殺】【壁走りの術】
「せっかくスキルを手に入れたし、試さない手はない。危なくなったらアパートへ戻ればいいしな!」
ダンジョンとアパートの部屋をつなぐ黒い水面――出入口は今もそこにある。
つまり、いつでも行き来できる。危なくなったら戻ればいい。
ダンジョンに入ってすぐのこの部屋。
ここから一本の通路が伸びている。
他の通路はないので、先に進んでも後ろから襲われる心配はない。
もちろん、帰り道に迷う心配もない。
いわゆる「異世界転移」だと行ったきりで帰れない。
俺の場合はダンジョンと日本を好きに行き来できる。
退路がある安心感は大きい。
帰れる場所があってこそ遠足できるわけだよ。
危険があることはわかっている。
漫画やアニメでは怪物を簡単に倒す。
ケガをしても簡単に治ったりもするし、ときには死んでも生き返ったりする。
そんな幸運を期待して無茶はできない。
危険を承知の上で、その危険を減らしていく。
雑に探索をするつもりはない。
より安全に、確実に生きて帰る。できればケガもしないように。
まずは危険の程度を把握しておかなければ。
そのためにも探索が必要だ。
調べておかないと、安心できない。
このダンジョンの先がどうなっているのか。
どんな怪物が現れるのか。
ステータスとスキルはどういうものなのか。
どの程度使えるものなのか。
「よし、探索開始!」
最初の部屋を出て、先へ進む。
金属バットを構えて、慎重に洞窟を進む。
発光するキノコやコケのおかげで、歩くのに充分な明るさはある。
通路は直線ではなく、曲がりくねっていてくぼみやでっぱりも多い。
【隠密】の【消音】のスキルを発動させる。
スキルを発動するには頭の中で意識すればいいようだ。
簡単だ。口に出したりウィンドウを操作する必要はない。
【消音】により、俺の足音が小さくなる。
気を付けなければ聞こえない程度に小さな音だ。
全くの無音にしてくれるわけではないようだ。
「……ん。来たな」
通路の向こうからゴブリンが来る。一匹だけ。
まだこちらには気づいていない。
警戒心はまるでなく、ぶらぶらと歩いてきている。
【隠密】を試すチャンスだ。
物陰に潜んで、息をひそめる。
岩のでっぱりの陰に身を隠す。
【隠密】の【隠術】を発動させる。
俺の見た目には変化はない……と思う。
自分の手を見ても、姿が消えたり透明になったようには見えない。
……これで効果を発揮してるのか? 大丈夫だよな?
ゴブリンが近づいてくる。
物陰に隠れているとはいえ、しっかりと隠れられるほどではない。
スキルがない状態なら、見つからずに済むとは思えない。
たのむぜ【隠密】さん。
強スキルだと信じているぜ!
俺はしずかに、ゴブリンが通り過ぎるのを待つ。
隠れながらも、心臓はバクバクだ。
心臓の音がうるさくて、バレやしないかと思うくらい。
戦えば勝てると分かっていても、身を隠すスリルにアドレナリンがドバドバと分泌される。
ゴブリンがちらりと、俺の居るあたりを視界にいれる。
しかし、俺には気づかなかったらしい。
何事もなく通り過ぎていく。
ゴブリンの探知性能がショボい可能性もある。
だが気づかれないならヨシ!
【隠術】と【消音】でゴブリンには気づかれていない。
次は攻撃だ。
無防備な背中をさらしているゴブリンにゆっくりと忍び寄る。
隠密の【致命の一撃】と【暗殺】の威力はいかに。
どちらも「不意打ちでの攻撃に補正」という効果だ。
今のように気づかれていない状態で攻撃すれば、この効果が発揮されるはず。
ゴブリンの背中へ向けて、金属バットを振り下ろす。
鈍い手ごたえ。
そして、感覚的に【致命の一撃】と【暗殺】が効果を発揮したとわかる。
ゴブリンは声も上げずにその場で絶命する。
殴打した瞬間に即死だ。
倒れる時間すらなく、塵と化す。
一匹目のゴブリンを倒したときは即死じゃなかったから、これはスキルの効果のはずだ。
これぞクリーンキル。声も立てず、床に倒れる音すらしない。
ゴブリンが塵となる。
それと共に空中に現れた魔石を空中でつかみ取る。
なかなかスタイリッシュな動きで、気に入った。
これも敏捷のステータスが可能にする器用な動きだ。
両方のスキルが発動した感覚があった。
だが、二つのスキルのどちらが作用したのかはわからない。
両方効いているのか、片方だけ効いているのか……。
ゲームみたいにダメージの数値表示でもあればいいんだが、そんなものはない。
「ヨシ! 【隠密】と【暗殺】の組み合わせは強い! 間違いない!」
ゲームに似たスキルやステータスは確かに存在する。
たしかに使えるし、強いことも分かった。
でもこれはゲームではない。
攻略本もWIKIもない。ないはずだ。
自分の手で丁寧に検証していくしかない。
これは俺にとっては間違いなく現実。命がけの冒険だ。
スキルを理解して、使いこなすことが大切になってくる。
スキルの性能や使い方は自分次第だ。
手探りで攻略するのも悪くない。
俺は、そういうのが好きなんだ。
手持ちのスキルを検証していく。
敵もいない安全な状態であることを確認する。
洞窟の通路は十分に広く、高さもある。
ここで【壁走りの術】を試す。
「おお! 走れる! ……すげえ!」
物理法則すら無視しているようだ。壁を地面のように走ることができる。
重力どうなってんだよ。
いろいろと試した結果、壁に向かって走ると壁に足が吸いついて走れることが分かった。
効果は十歩走れるほど。
そして、壁を走るのは難しいということも。
「スキルを取るだけでいきなり使いこなせるわけじゃないか。慣れが必要だな」
壁に吸い付くことはできている。
しかし、重力が邪魔をしているのだ。
下方向へ引っ張られてバランスを取りにくい。
平地であれば、片側に重りを持って走るような感覚だろうか。
足がもつれてしまう。
「うーん。【歩法】を取れば変わるか?」
先ほど目を通したスキルのなかに、移動に関連するスキルがあった。
足さばきや体重移動なら【歩法】で改善できそうだ。
残しておいたポイントを振って【歩法】スキルを取得する。
これで残ポイントはなくなった。
「お、スムーズになった! 足というか、身体の動かし方が分かった感じだな」
不思議な感覚だ。
さっきまでは難しかった足運びや、重心移動がやりやすくなった。
やり方やコツのようなものが理解できる。
物理を無視するようなスキルもあれば、知識や感覚を覚えさせてくれるものもあるのか。
スキルは奥が深い!
スキル取得後のステータスを確認しておこう。
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名前 : クロウ ゼンジ
レベル: 2
筋力 : C
体力 : B
敏捷 : B
知力 : C
魔力 : C
生命力: C
職業 : 忍者
スキル:
【忍術】1
【壁走りの術】1
【分身の術】1
【隠密】1
【隠術】1
【消音】1
【致命の一撃】1
【暗殺】1
【投擲】1
【歩法】1
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「よーし! 忍者っぽくなってきた!」
スキルは使える!
ところで、スキルはいくらでも使えるんだろうか?
マジックポイントみたいなものは、ステータスには見当たらないんだよなー。
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