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死と再生。支払うコストはいかほどか……?

 自律分身は説明を始める。

 俺とリンが死んでからの状況だ。


「――お前(本体)が死んで、リンもやられた後、少ししてトウコが復活した」と自律分身。

「ああ」


 俺は頷く。

 ここまでは想像がついている。



 リンが自律分身の腕にすがりつくようにして聞く。


「分身さん! トウコちゃんは大丈夫なんですか!?」

「死んじゃいない。やられてもすぐ復活するみたいだ」


「よかったぁ……」


 だが自律分身は厳しい表情で続ける。


「だけど()()()()っていうと、微妙だ。【狂化】が解けるまでは近づけない」

「トウコはどれくらい戦ってるんだ? (本体)が死んでから、どれくらい()つ?」


 このダンジョンは時間の進み方が外とは違う。

 一度外に出た俺よりも、トウコたちは長い時間を過ごしているはずだ。


「今は五ウェーブが始まったところだ」と自律分身。

「かなり経ってるな。てことは【狂化】の持続時間は長いのか……」と俺。


 俺が死んだのは三ウェーブと四ウェーブの間。

 時間経過で【狂化】は解除されない?


 ……となると、どうやって解除すればいいんだ?


「ええっ!? トウコちゃんは元に戻れないんですか!?」

「いや、スキルには時間制限があるはずだ。コストだってかかるはず」と俺。


 永続するスキルなんて、今のところ俺は持っていない。


 クラフト系のスキルは品物を作ったり加工する瞬間に効果を発揮している。

 ずっとスキルの効果を維持しているのとは違う。


 トウコの【銃創造】も体から離した銃は消えてしまう。


 当然、【狂化】にだって時間制限はあるはずだ。



 自律分身が言う。


「それについては(自律)も考えた。【自律分身の術】は一時間ほどは持続する。【狂化】も長い間、効果が続くかもしれない」


 リンが苦しげに言う。


「じゃあ、それまで待つしかないんですか?」


 トウコは今も戦っている。

 服や装備はぼろぼろで、痛々しい。


 窓女も倒れない。

 腕を傷つけても、傷はゆっくりと治っているようだ。


 霧が集まるようにして、傷口を埋めてしまう。



 自律分身が言う。


「時間以外の条件があるとすれば、コストだろう。トウコがコストを払えなくなったら、もとに戻るのかもしれない」


 リンが言う。


「つまり……魔力(コスト)がなくなっちゃえばいいんですね?」


「そうだと思う。だけど――」と自律分身。

「――捕食、か」と俺。


 トウコは窓女の腕を【捕食】している。


「魔力が回復しちゃうんですね!? じゃあ、なかなか治らない……?」


 ある意味、スキルの相乗効果(シナジー)だ。

 いつまでも戦い続けることができる。

 できてしまう……。


 俺は自律分身へ聞く。


「【復活】はどうだ?」

「何度も発動していると思う。かなりのダメージを受けて倒れても、トウコは起き上がってくる」


 俺は驚く。


「クールタイムや回数制限はないのか!?」と俺。

「復活するときは少し時間がかかるから、発動時間はある。だが、何度も発動している」と自律分身。


「じゃあ、トウコちゃんはやられないんですよね!?」

「そうなる、はずだ」と俺。


 だが、俺は内心で唸る。

 これはまずい。


 支払うコストは魔力とは限らない。

 死んで復活するコストが、軽いはずはない!



 そもそもトウコの魔力には限りがある。

 魔力が持つはずないのだ。


 このコストを【捕食】で補いきれるのか?


 トウコは何度でも復活する。

 そして、完全には死亡しないからダンジョンの外にも排出されない。


 死んでは戦い、食っては戦い続ける。

 敵の窓女も倒れない。


 無限ループにはまってしまっているようにも見える。


 ある意味で、今のトウコは無敵だ。

 だが、その状態がずっと続くのか?


 たぶん、違う。



 【復活】のコストは、経験値で支払われているのかもしれない。


 ダンジョンで死亡すると、経験値を失って復活する。

 レベルが下がることもある。


 デスペナルティだ。

 ダンジョンの中で復活した場合も同じルールが適用されるかもしれない……。



 リンは俺の顔をじっと見ている。


「ゼンジさん……! なにか、よくないことがあるんですね?」


 不安にさせないように考えていたつもりだが、見抜かれてしまった。


「……ああ」

「トウコちゃんを助けるには、どうすればいいですか?」


 リンは決然とした顔で言う。


「トウコが戦う相手がいなくなればいい。つまり、窓女を倒す!」と俺。

「じゃあ、やっつけてトウコちゃんを助けましょう!」


 リンにはもう、さっきまでの怯えはない。

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