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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
一章 ステイホームはダンジョンで!

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事実は小説より奇なり! 現実はファンタジーより幻想なり! その2

祝! 一か月記念!

12/29から投稿を始めたので、今日が一月目です。

「いただきます」

「いただきます!」


 食卓を囲んで、二人で食事の挨拶をする。

 この時点で俺はもう幸せだ。


 一人暮らしが長い俺は、家での食事もいつも一人だ。


「おお、けんちん汁ですね」

「はい。野菜たっぷりにしてみました」


 オトナシさんが用意してくれたのはけんちん汁だ。


 お椀から湯気がほかほかと立ちのぼっている。

 寒い朝にはうってつけだ。


 ごま油の香ばしい匂いが鼻腔(びこう)をくすぐり、食欲がそそられる!


 野菜がふんだんに使われている。

 ニンジン、ゴボウ、ダイコン、サトイモの根菜オールスターズ。

 コンニャクとシイタケ。そして……油揚げか。


「おお、手が込んでますね! 飾り切りですか」


 ニンジンが花をかたどった飾り切りになっている。

 しかも……三種類、いや、それ以上か?

 型で抜いた画一的なものではなくて、包丁で一つ一つ作ったんだろう。


「サクラにウメにキクです。細かいのは花びらにしてみました」


 おお、小さいのは花びらなんだな。

 これは相当な手間がかかっている……。


「食べるのがもったいないくらいですね」

「……遠慮しないで食べてくださいね」


 オトナシさんが少し困ったような笑みを浮かべる。

 まずは汁をひとくち口に運ぶ。


「うまい! やさしい味というか……」


 すいすいと喉を通っていく。

 身体にしみ込むようだ。


 スープは澄んでいる。しっかりとあく抜きしたんだろう。


 ダイコンも面取りがされていて、味が染みていて煮崩れもない。

 箸が止まらない。


 ん、オトナシさんは料理に手を付けてないじゃないか。

 料理をほおばる俺をじっと見ている。


「あ、俺ばっかり食っててすみません。オトナシさんも召し上がってください」

「いえ、あんまりおいしそうに食べてくれるので、その……嬉しくて」

「え?」

「いえいえっ。いただきますね!」


 オトナシさんが弁当箱のふたをあける。

 中から出てきたのは味玉三種、鳥の巣風だ。


 顔をのぞかせた味玉に、オトナシさんは目を丸くしている。


「……わぁ! かわいい!」


 オトナシさんは目を輝かせている。

 それでも、なかなか手を付けようとしない。


「これ……食べるのはもったいないですね。持って帰ってあたためていいですか?」

「いや、遠慮しないで食べてください。って、温めるんですか!?」


 なにその独特の感想!


「あっいえ。あたためたらヒヨコが生まれそうなくらいリアルだなあ、って思って……」

「あ、そういう……」

「この巣の部分はキャベツとニンジンなんですね。ニンジンの色味がちょうど木の枝みたいに見えて……すごいなあ」

「ちなみに、春雨を揚げたやつを巣に見立てようとも思ったんですけど、こっちのほうがいいかなと思って」

「ああー! 中華料理で見たことあります! それもアリですね……。うわあ、いろいろ考えてるんですね!」


 春雨を油で揚げると、びっくりするほど膨れるのだ。

 一瞬でふわふわのセンベイのようになる。

 ただ、白一色になるので、すこし映えないかなと。


 オトナシさんは春雨のほうにも興味がありそうな表情だ。


「春雨のやつも気になるなあ……」

「じゃあ今度作りますね」

「やった! 楽しみにしてます!」


 弁当は持って帰って食べたいというので、冷蔵庫から新しい味玉を出した。

 卵焼きも出す。


「うわあ……黄身がとろっとろ! 味も染みてて……塩味と……なんですか?」

「あててみてください」

「えー。……醤油とみりん? こっちはゴマがついてますね……うーん」


 箸で小さく取り分けた味玉を比べてうんうん言っているオトナシさん。

 なんか、見ているだけで楽しい。


 そうか、これがさっきの感じか。

 おいしそうに食べてくれるのはうれしい。

 楽しそうにしてくれると、作った甲斐があるんだな。


「ポン酢と焼き肉のたれです。漬け時間が短めなので、ちょっと似た味になっちゃってますね」

「ポン酢かぁ……。焼き肉のたれのほうは全然わからなかったです!」


 続けて卵焼きを口に運ぶオトナシさん。


「卵焼きは甘口なんですね! ほどよい甘さでおいしい……。甘いのとしょっぱいのだと飽きずに食べられますよね!」


 何を食べても喜んでくれるオトナシさん。

 たしかに、自分の箸が進まなくなるな。


 こうして、お互いの料理を絶賛しながら楽しく食事を終えたのだった。



「ふう……ごちそうさまでした」

「ごちそうさまです!」


 腹も心も満たされた……!


 そういえば、相談事があるって言っていたよな。

 ちょっと気になっていたんだ。


 たとえばお金に困っているとか……?

 大金は無理だけど、ちょっとくらいなら……。


「そういえば、相談があるって言ってましたけど……」

「あっ……そうでした。……ごはん何作ろうかばっかり考えててまとまっていないです。ごめんなさい」


 すっかり忘れていたという表情を浮かべてオトナシさんが言う。


「あ、急かすわけじゃないんです。例えばお金に困ってるとかだと準備もしなきゃいけないし……」

「え! いえいえ! お金のことなんかじゃないです! そんなことぜったいに言いません!」


 オトナシさんは必死の様子でぶんぶんと首を振って否定する。

 見ているこっちが申し訳なるくらいの拒絶っぷりだ。


 俺の聞き方も、ちょっと失礼だったな。

 お互いに頭を下げあう。


「そうですか。変に勘ぐってすみません。ちょっと、心配だなって思って、先走りました」

「……心配かけてごめんなさい。せっかくいい雰囲……楽しいごはんなのに、暗い感じにしたくないですし」


 オトナシさんの表情には少し(かげ)がある。

 きっと、簡単には話せないことなんだろう。

 あんまり急かすのは良くないな。


「暗い話でも、ちゃんと聞きます。整理がついたら、言ってください」

「……はい。でも、クロウさんとこうしてお話しできているだけで助かってるんです。……ほんとうに」


 彼女は弱々しい笑顔を浮かべる。


 今はどうしてあげることもできない。

 それでも、笑えているうちは大丈夫だろう。


 相談事はオトナシさんのタイミングを待つこととなった。

 オトナシさんは鳥の巣弁当を大切そうに胸に抱えて、帰っていった。


 まさか本当に、あたためたりしないよな……?

活動報告に味玉の写真載せてみました。

(本文で挿絵を見たくない派の方もいるかと思って)

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2319574/blogkey/2933702/

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[気になる点] ごま油が香ばしい匂いを鼻腔をくすぐり ごま油の香ばしい匂いが鼻腔をくすぐり・・・でしょうか・・・
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