ダンジョンの神様は公平か?
俺は話題を変える。
「それより【食品収納】だが……なんで食材じゃないんだろうな?」
食品と食材の違いだ。
スキルの名称として違うなら、なにか意味があるはず。
リンが言う。
「あ、そうですね。でも食品のほうが広い意味になると思いませんか?」
「食材は材料、素材だけ。でも、食品は加工品――料理した品も含まれるってことになるってことか!?」
「そうだと思います。ちょっと試してみますね!」
そう言うとリンはクーラーボックスから鹿肉を取り出して串に刺す。
そして火魔法であぶる。
香ばしい匂いを立てて、簡易的な焼き肉串ができ上った。
いちおう料理したと言える。
「おいしそうっス!」
「食べるためじゃないからな!」
リンは肉串に手をかかげて言う。
「では、収納してみますね!」
肉串が消えた。収納成功だ。
「ほう。やっぱり料理も収納できるんだな。あ、枠はどうだ? さっき大鹿の肉を入れてたんだから二枠あるってことか?」
リンが訂正する。
「あ、ごめんなさい。言い忘れてました! 【食品収納】は三レベルでもらっているんです!」
「あれ? ずいぶん気前いいっスね!?」
「おぉすごいな! じゃあ三枠あるってことか! 希望通りのスキルがもらえて、しかもレベルも高いのか。ずいぶん親切じゃないか!」
いきなりレベル三とは大盤振る舞いだ。
「あと、お肉ももらえましたね! 上質ですよ、上質!」
「スキルを貰えて、さらに大鹿の上質肉か。言ってみるもんだよなあ……」
大鹿の上質肉は、普通にボスを倒したことによるドロップアイテムかもしれないが。
「ダンジョンに神様がいるとしたら男っスよ! ひいきっス!」
「神なあ。俺は公平な存在だと思いたいよ」
「でも、トウコちゃんは職業とスキルをたくさんもらってるでしょ? ちゃんと公平だと思うよー」
トウコは【ゾンビ】の職業をもらっている。それに加えて【復活】【狂化】【捕食】だ。
「俺のスキルはたぶん上位のスキルだ。二つもらってるし、つり合いは取れてるんじゃないか?」
「そっスかねぇ。なんかあたし、損してる気がするっス!」
「ふむ……そうか?」
俺はもらったものの公平さを考えてみる。
別に厳密に考えなくてもいいことだけどな。
俺がもらったのは、基礎スキルとして【エラー】。
その下に関連スキルの【自律分身の術】【意識共有】がある。
スキルが二つで八ポイントになるはずだ。
まあ、この必要ポイントは予想でしかないけど。
予想の根拠ははこうだ。
【忍術】の関連スキルは一レベルで一ポイント必要になる。
【中級忍術】なら関連スキルは一レベルで二ポイント必要になる。
ここまではわかっている。
なら次段階、【上級忍術】があるとする。
ここからが予想だ。
関連スキルは一レベルで四ポイント必要になるはずだ。
さらに厳密に言うなら、基礎スキルにだってポイントは必要だ。
【エラー】が【上級忍術】だとすれば、これを取得するために四ポイント必要ってことになるのだ。
だが……このあたりがエラーなんだろう。
想定外の状況から生まれたラッキーなんだと思う。
リンの【食品収納】は三レベル。
一段階のスキルなら七ポイント分だ。
それプラス、上質肉をもらっている。
トウコの場合はスキルを三つもらっている。
一段階のスキルなら三ポイント分か?
あれ?
トウコが一番損して……。
いや、そもそも【ゾンビ】は普通の職業じゃない。
二つ目の職業を取れるレベルになる前にもらっているし……。
このおかげで死を免れていることもある。
単純にポイントの大小では測れない。
――というようなことをトウコに説明してみた。
「どうだ? 一部は予想だけど」
「こまかっ! なんかややこしいっス!」
トウコはげんなりした顔で言う。
途中から目が死んでたしな。
ま、細かい話だし、気にすることはない。
「ざっくり言うと、ボス撃破報酬はみんな同じくらいのものをもらったってことだよ!」
「それならいいっス! 文句言っても、とっかえられるわけじゃないっスからね! 気にしないっス!」
トウコはけろりと笑った。




