ラストシューティング? そんなスキルはありません!?
倒したスライムが落とした宝箱を開ける。
「お、魔石か。リン、鑑定してみてくれ」
俺は魔石を手渡す。
リンはまじめな顔で言う。
「毒はありませんが、食べられないですねー」
「……いや、【食材鑑定】じゃなくて【物品鑑定】を頼む」
「あっ! そ、そうですよね。あはは……」
「リン姉……マジボケっスか? マネできないっス!」
「じゃあシステムさん。おねがい」
<名称:スライムの魔石。カテゴリ:魔石>
「やっぱ、コイツの名前はスライムなんスね?」
「サバンナにいた砂スライムも、名前はスライムだったな」
「いろんなスライムがいるんですねー」
「違うモンスターってわけじゃなくて、環境による行動の違いなのかもな」
草原では草むらに潜んでいる。
サバンナでは砂に紛れている。
トウコが言う。
「こいつは木スライムって呼んだらいいんスかね?」
「落っこちてくるから、落っこちスライムさん?」
「うーん。樹上スライムか? 毎回木の上から落っこちてくるかは知らんけどな」
「あ、そうですよねー」
「これからは上にも注意するっス! 下剋上っス!」
「トウコちゃん。それは違うと思うよー」
下から上を攻撃することじゃない。
「スライムより身分が低いのかトウコ……がんばれよ!」
「次はラストショットを決めてやるっス!」
トウコは両足を開いて銃を上に向けたポーズをとる。
左腕と頭がないロボットみたいなポーズだな。
「ラストシューティングか!」
「新技を取るんですか?」
頭上を攻撃するスキル、ではない!
「アニメの名シーンの話っス!」
「まあ、聞き流してくれリン」
オタクのサガであり、言わざるを得ない!
一般人のリンはわからなくて当然である。
しかしリンは少し寂しそうな表情を浮かべる。
「はい……でも、なんだか私だけ知らないことが多い感じがしますー……」
トウコが胸をはる。
「私もまじめな話は聞いてないから大丈夫っス!」
「大丈夫じゃねえ! それはちゃんと聞いとけ!」
「ははっ。半分は冗談っス!」
「半分は本気なのかよ!」
それからは頭上にも注意を払いながら進んだ。
いる前提で探せば、木の上のスライムを見つけることはたやすい。
やはり【隠密】のような能力で気配を隠しているようだ。
【魔力知覚】では捉えにくい。
不自然にしなっている枝のような、違和感を探る。
木の上のスライムは、枝に絡みつくように体を長く伸ばしている。
球形のような目立つ形はしていないのだ。
「うらっ! あたれっ!」
トウコは頭上のスライムを見つけては、真下から攻撃したがる。
「今度こそ、ラストシューティングを成功させてやるっス!」
「相打ちでやられるつもりか……?」
真上を狙うのはやめさせた。
空中のスライムの核を銃で撃ち抜くのは難しいらしく、成功率は低い。
できないのはトウコの腕が悪いからではない。
粘液の体には命中させている。
その中の核、わずか数センチの標的を撃ち抜くのが難しいのだ。
「結局、当たらなきゃ意味ないっス!」
結局トウコはショットガンをぶっ放して満足した。
 




