チャージ! 魔力充填百二十パーセント!
トウコが銃を構える。
「さて、本命の【チャージショット】を撃ってみるっス!」
「おう」
「楽しみねー!」
トウコの銃が発光しはじめる。
これもエフェクトがあるのか。
トウコの好み通りの派手なスキルのようだ。
「あっ! いい感じに力がたまってきた感じっス!」
「ほんとだー! 銃に魔力が集まってる!」
銃の輝きがどんどん強まっていく。
「おー! もっと魔力をチャージ! フルチャージっス! ……はあっはあっ」
「もういいんじゃないか?」
「トウコちゃん、辛そうだけど大丈夫?」
「だ、大丈夫っス! 大技にコストはつきもの! それに、寿命をへらす技で死んだやつはいないっス!」
「練習で寿命をへらすな!」
そんなヤバい技じゃないわ!
説明文に書いてなかっただろ!?
「う、もうちょい……!」
光が強まっていく。
もう銃口からあふれんばかりだ。
トウコの肌を汗が流れる。
……まさか本当に寿命が縮んだりしないよな!?
「トウコちゃん! ムリしないで!」
「撃て! もう充分だ!」
「うらあぁっ! 【チャージショット】――!」
どぉん、と鳴り響く銃声。
大きな発射炎。
激しい銃声とともに、魔力を込めた弾丸が飛ぶ。
【ピアスショット】のような小さな光でなく、もっと大きい。
まるでビームのような軌跡を描いている。
ばっ、と木の皮がはじけ飛び、木くずを舞わせる。
木の幹には大きなくぼみができている。
「おお! 結構な威力だな!」
木をへし折れはしなかったが、モンスターなら即死だろう。
「へへ。これはなかなか派手っス! 必殺技っス!」
そういうトウコは息を乱している。
「トウコちゃん大丈夫?」
「ちょっと疲れたっス! あと、おなか減ったっス!」
さっき食ったばっかりだけどな。
「じゃ、これ食べてみる?」
リンが差し出したものを、トウコはひょいと口に入れる。
あれは……。
「あざーっス! ……あれ? なんか変な味だけどいけるっスね?」
「食べられそう? スライムさんの魔石なんだけど……」
「うえぇっ!? でも食べれるっスね。今日はマズくない……」
そういうと口をもぐもぐと動かして、すっかり食べてしまった。
「腹が減ってると食えるのか?」
「魔力が足りないときかもしれないですねー?」
「そーかもっス! なんか元気になってきた気がするっス!」
「【捕食】の効果だよな?」
「そうっス! 店長の魔力回復丸を食べたときに似てるっス!」
「魔石を食べると魔力が回復するのか……便利だな!」
「じゃあ、こっちはどうかな?」
リンがスライムゼリーを渡す。
トウコはそれをひょいと食べる。
「普通においしいっス! でも魔力は回復してないっスね!」
「普通の食材じゃダメってことか」
リンはきょろきょろと周囲を探している。
「あ、ゼンジさん。あのスライムさんを捕まえてもらえますか?」
「おう」
俺は分身を出してスライムを捕まえる。
スキル調整でコストを下げた分身だ。
これまで以上に気楽に使っていける。
スライムには触るだけでダメージがあるが、分身なら問題ない。
うねうねと分身の手を逃れようとするスライムにリンは近づく。
手には包丁を持っている。
「えいっ!」
リンはスライムに包丁を突き入れる。
核を突き刺すのではなく、周囲をえぐるように手を動かしていく。
スライムの粘液の体が塵となって消え、核だけが残った。
「【解体】したのか? リン」
「そうです! トウコちゃん。これ食べられそう?」
「うえぇ!? なんスかそれ! 食べれるんスか?」
「【食品鑑定】してみたけど、食べれるし毒もないわよ?」
リンの手の上でぷるぷるしているそれは、スライムの核だ。
ピンポン玉サイズのゼリーのように見える。
「おいしそうだけどなー? じゃあ、私が食べてみますね!」
「毒はないんだよな? 生で食べれるのか?」
俺の心配をよそに、リンはそれを口に運ぶ。
一口で食べてしまった。
「大丈夫ですよ! ゼリーみたいでおいしいです!」
「マジか……」
「リン姉の勇気、半端ないっス!」
最初にタコやナマコを食べた人類みたいな勇気!
俺には生のスライムを食べるって発想はなかった。
もしかしたらリンにはおいしそうに見えていたのかも。
スライムはおいしそう……と言えなくもない。
リンにはスライムが食材に見えているのかもしれない。
スライムがドロップするゼリーはおいしいんだよな。
ドロップアイテムとしての食材と生のスライムじゃ違う気はするけど。
「ちなみにどんな味なんだ?」
「いつものゼリーよりも味が濃くて、ちょっと硬い……あっ。タピオカの歯ごたえに似てます!」
「あたしもタピりたいっス!」
タピりたい? そんな言葉あるのか?
「じゃあゼンジさん、お願いできますか?」
「おう」
俺は分身を走らせた。




