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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
一章 ステイホームはダンジョンで!

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チラ見……。ちょっとだけ! ちょっとだけだから!?

もうちょっとだけの誘惑。

 壁を使おう。


 三次元に動ける利点を生かしての奇襲だ。

 足場の悪さも関係ない。


 壁を登って、ゴブリンの視界の外に張り付く。

 上方を確認して、コウモリが乱入してこないかを確認する。

 見える範囲にはいない。ヨシ!


「ギギっ!」

「アギアギ……」


 ゴブリン達は不気味な鳴き声を発しながら、無警戒に通り過ぎる。

 縦に並んで一列で歩いている。

 足場は狭く、かろうじてすれ違える程度だ。


 数は四匹。腰布を巻いたゴブリンだ。……腰ミノはいない。

 手にはナイフやナタをぶら下げている。棍棒もいる。


 見た目は三階層と変わりない。装備品も大差ない。

 数が多いだけだ。

 いけるだろう。


 まずは初手で数を減らす!


 壁から手を放し、自由落下の勢いを乗せたナタを振り下ろす。

 最後尾のゴブリンの頭部を強打し、ゴブリンが塵となる。


 着地の音も立てない。

 空中に生まれた魔石を回収する。


 続けて、背中を向けている二匹目のゴブリンの肩口へナタを打ち込む。


 ゴブリンの肩と首の間にめり込んだナタは、肉を切り、骨を砕く。

 しかし鈍いナタの切れ味では絶命には至らない。


「グッ!」


 ゴブリンの発した苦悶の声に、前を行くゴブリンが振り返る。


「ギァ! ギギヤア!」

「アギャアア!」


 こちらに向けて威嚇の声を上げるゴブリン。


 ナタをひねり上げながら、ゴブリンの背を蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされたゴブリンは、後続のゴブリンにぶつかると、絶命して塵となって消える。


「ふっ!」


 俺はその隙に、大きく踏み込む。


 バランスを崩しているゴブリンにナタを叩きつける。

 ゴブリンはこれに反応できない。

 頭部に裂傷を負って倒れる。


 その間に体勢を立て直したゴブリンが、棍棒を振るう。

 苦し紛れに繰り出したような攻撃で、大ぶりだ。

 避けるのはたやすい。


 かわしながらゴブリンの喉を切り裂く。

 血が噴き出し、のどを押さえたゴブリンはそのまま崩れ落ちる。


「よし、制圧!」


 死に体のゴブリンにとどめを刺して、魔石を回収する。


 数が増えた分、ちょっと手間はある。

 それでもやっぱりゴブリンには楽勝だ。



「やっぱり、狭いと戦いにくいな」


 左を壁に進んだ状態からゴブリンの背後に回り込んだので、今は壁が右だ。


 そうすると壁が邪魔になって狙える位置が限定される。

 位置取りが重要になってくる。


 【壁走りの術】で壁に張り付く力は、武器を振るうには心もとない。

 走りながら攻撃はできても、壁に直立して攻撃するような使い方はできない。


 すれ違いざまに一撃がせいぜいだな。


「とりあえず、様子見はこんなもんで帰るかな……。ん?」


 岩陰から出たことで視界がひらけた。


 遠くにコウモリが飛んでいる。

 やっぱり、この階層にも居たか……。


 俺が注目したのはその下、崖に突き出すようになっている場所だ。

 箱のようなものが見える。


 あれは……宝箱か!?


「魔石しかないと思っていたが……宝箱があるのか!」


 本来は様子見のつもりだったが……。

 あれは欲しい!


 時間的には……間に合う。

 余裕を持って帰る予定だったから、ちょっと余裕が減るだけだ。



 壁に身を寄せて、距離を詰める。

 少しでも探知を遅らせるためだ。


 箱が置かれているのは、地底湖側に張り出した足場の上だ。

 足場の広さはゴブリンと戦ったあたりより広く、大人が十分にすれ違えるほど。


 しかし、箱は湖に突き出した位置にある。

 視界が開けていて隠れる場所がない。


 飛んでいるコウモリは数匹だが、見つかれば仲間を呼ぶだろう。

 狭い足場で戦うのは避けたい。


 普通にいけば、簡単に見つかってしまうだろう。


 ……まあ、普通には行かないわけだが。


「分身の術!」


 おとりとして、コウモリから発見されやすい位置に分身を出現させる。


 分身を出せる距離は数歩先までだが、出現させてしまえば、かなり離れることができる。

 しかし、持続時間は一分ほどなので遠くへ行かせることはできない。

 操作の精度も落ちる。


 少しの間コウモリの気を引いてくれればそれでいい。

 目立つように手に持ったバットを大きく振りながら、壁沿いを走らせる。


 その隙に、宝箱を確認して来た道を戻るというプランだ。


「キッ!」


 コウモリの一匹が分身を発見し、警告のような声を上げる。

 集まってきたコウモリが分身を追う。


 分身に全力で走るように指示して、俺は宝箱へと走る。


 近くで見れば、やはり宝箱だ。

 素材はおそらく木で、四角い。上部のフタが開くタイプ。

 鍵穴や南京錠のようなものは見えない。


「罠があったらいやだな……」


 足場は普通の岩で、崩れそうな亀裂などはなさそうだ。

 爆発したり、何か飛び出してくるとか?

 箱はシンプルな作りで、仕掛けはなさそうに見える。


 ……あまり考えていると分身がもたない。


 バットの先端でつついてみるが、宝箱は反応しない。

 叩けば箱は開くのかもしれないが、中身が壊れると困る。


「迷っていてもしかたない! オープン!」


 宝箱の側面から、ふたを開ける。

 正面に立たないのは気休め程度の安全策だ。


 ――罠はないようだ。


 ふう。心配し過ぎたかな?


 宝箱は無事に開いた。何事も起こらない。

 箱を覗き込み、中身を確認する。


「中身は……石? いや、鉄鉱石か?」


 中身はコブシ大の鉱石だ。

 黒っぽい石に、銀色……鉄色に輝く部分がある。

 手に取るとずっしりと重い。


「調べるのはあと! のんびりしている場合じゃないな!」


 走らせた分身が倒され、霧散する。

 コウモリ達が、次の獲物を探すように飛び回る。


 コウモリがこちらに気づく前に撤退しなければ!


「分身の術! レベル2!」


 この場に分身の術を出しておく。

 省エネのためにレベル2だ。


 移動させる必要はないから、レベル3で出さなくていい。

 持続時間も短くなるが、少し時間を稼いでくれれば充分!


 さらに、チャフ玉とクス玉を投げておく。

 空中高く投げ上げた玉を棒手裏剣で打ち抜く。


 色とりどりのチラシ紙と、キラキラと光を反射するアルミホイル片が宙を舞う。


「おお、なかなかおめでたい! 初宝箱記念だな!」


 コウモリのエコーロケーション(反響定位)を多少でもかく乱できれば御の字。


 雨の日のコウモリは自由に動けないらしいので、一定の効果はあるはずだ。

 効果を発揮したらしく、コウモリ達の動きがぎこちなくなる。


 じっくり観察している場合ではないので、さっさと来た道を戻る。

 追手はなく、無事に登り階段へたどり着いた。


 あとは帰るだけだ!

鉄鉱石はなんぼあってもいいですからね!

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