ラストショット・ダブルバレル!
「へへ、こりゃいいっス! さっそくシャッガンで!」
トウコがいそいそと、水平二連ショットガンを出す。
面倒だと言ってたが、気に入ってるじゃねーか。
スライムを探してショットガンを撃つ。
一発目は通常通り。
二発目、最後の弾丸は少し派手に銃口が火を噴いた。
「おっ? いけたか?」
「いけたっス! バッチリ! 効果ノリノリっス!」
リンが拍手を送る。
「わー! よかったね、トウコちゃん!」
「この調子でいろいろ試してみるっスよー!」
お?
トウコにもスキル検証の楽しさがわかってきたかな?
いろいろと試していく。
【ラストショット】は弾の種類によらずに効果が乗る。
散弾でもスラッグ弾でも同じだ。
小さな散弾の一粒だけに効果が乗る、みたいなセコいことはなかった。
リボルバーでも六発目の弾丸に効果が乗る。
だが、最後の一発を撃ってから一発だけ弾を込めても発動しなかった。
「あれっ!? 六発目じゃないとダメなんスかね?」
「二発装填してみたらどうだ?」
「二発あれば、大丈夫かもしれませんね!」
「どうっスかねえ……?」
そう言いながらトウコは手早く二発の弾丸を込める。
そして連続して二発の弾丸を放つ。
二発目の発射炎は大きい。
発動した!
「できたっス! 試してみるもんっスねぇ!」
「二発に一発は強い攻撃ができるな。タダで!」
「でもDPSは落ちちゃうっス!」
「でぃーぴーえす、ってなにかな?」
「秒数ごとのダメージってことだな」
「一発が強くても、リロードが長くなっちゃうから火力が落ちるっス!」
リンは少し考え込んでから言う。
ゲーマーでないリンには難しい話になっちゃってるな。
「えーと……いくら二発目が強くても、すぐに弾を入れなきゃいけないから効率が悪いってことですか?」
「そうだよリン。拳銃で二発ごとにリロードしていると、結果としては火力が下がってしまうだろ?」
「はい。そうですね」
「六発撃ってリロードしたほうが、結局は強いってことだ」
トウコのリロードは素早いとはいえ、引き金を連続で引くほうが早い。
これは拳銃の場合だ。
「でも、ショットガンなら、単純に火力が上がるはずだ。もともと装弾数が二発だからな」
「そういうことなんですねー!」
「あ、でもでも! 火力を落とさない方法思いついたっス!」
「ほう? どうやるんだ?」
「最後の一発だけ残した銃を、たくさん持つっス!」
「たくさん?」
リンが首をかしげる。
「こうやって、二発装填して……」
トウコは拳銃に二発、ショットガンに二発の弾を込める。
それぞれ一発を撃って、銃には最後の弾丸だけが残る。
「ああ、ラスいち状態の銃を持ち歩くわけだな!」
「そう! これならいきなりバーンと撃てるっス!」
「二丁拳銃どころか、もっと持つわけだな?」
「それに、最初に出しとけば魔力酔いの心配もないっスよ!」
「なるほどー! よく考えたねトウコちゃん」
これまでも銃はいくつも持ち歩いている。
さすがに四丁を超えると邪魔になってくると思うが……。
「十丁拳銃のトウコと呼んでほしいっス!」
「わあ、かっこいいねー」
厨二病!
「キワモノの道を行くのか、トウコ……」
「連続抜き撃ちっス!」
「正統派ガンマンが現れて分からされる流れだな、これ」
「というわけで店長! たくさんホルスターを作ってほしいっス!」
トウコはベルトのホルスターをぽんぽんと叩く。
「いや、スペースが足らんだろ! ゴテゴテするわ!」
試してみたところ、複数の銃を使うことはできた。
時間をおいても、最後の一発だとみなされる。
でも四丁の銃を出したあたりで、トウコは面倒になってやめた。
「やっぱ、めんどいっス! やめたーっと!」
「えー? もったいないよー」
「まあ、いいんじゃないか? 普通に戦ってるついでに発動するし」
「オマケと考えるっス! 弾数を数えながら戦いたくないっス!」
ガンマンとして弾数を数えるのは常識じゃ……。
ま、いいか。
向き不向きってもんだ。
やりたいようにやればよし!
「ちなみに最後の弾丸で跳弾できそうか?」
「あ、やってみるっス!」
トウコは木の幹を狙って拳銃の引き金を引く。
大きな発砲炎。【ラストショット】が発動したのが見て取れる。
さらに木の幹で跳ね返った弾丸がスライムに命中する。
「おっ? うまくいったな?」
トウコがどや顔で宣言する。
「これぞ、ラスリコショットっス!」
「響きはいいけど意味わからないぞ、それ」
「そっスね! やめるっス!」
「でも同時発動できるのは意外だったな。重ねがけか……」
「わぁ! それって、すごいことじゃない!?」
「すごいっス! ほかのスキルも乗ったら最強っス!」
「チャージした最後の弾丸を跳弾させて、それを曲げるのか?」
「チャーラスリコカーブショットっス!」
「なに語だよ! 日本語でたのむ!」
「うーん、難しくて覚えられないなー」
ぜんぜん伝わらないわ!
リンも覚えようとすな!
「地面より木のほうがいい感じに跳ねるっス!」
木の幹で跳弾した弾丸は、スライムに命中した。
だけど今回も核には当たらなかった。
狙って当てるのは難しい。
「ちな、跳弾で狙える角度はセマめっす!」
「狭い?」
リンが聞き返す。トウコが答える。
「はね返る角度っス! ちょっとだけ弾の方向が変わるだけっス!」
「浅い角度でしかはね返らないわけだな」
物理法則さん、仕事してる!
ダンジョンの中でも、基本的な物理法則は外と似ている。
木を撃っても、それほど跳ね返らない。
土のやわらかい地面なら、もっとだ。
弾丸はめり込んだり貫通したりしてしまう。
弾いたとしても少しそれるくらいだろう。
「ロマンはあるけど地味っスねー!」
「スキルレベルが低いからな。上げたら直角に曲げたりできるかもしれないぞ?」
「そうだったっス! まだ一ポイントしか振ってなかったっス!」
まだまだ成長の余地はあるのだ!




