銃使いの必殺技……アレしかない!?
本日二話目!
食事を終えたところで、おもむろにトウコが言う。
「あたしも必殺技が欲しいっス!」
「ひっさつわざ?」
トウコの言葉にリンが首をかしげる。
必殺技か……。
俺はトウコにむかって言う。
「トウコの場合はショットガンとかマグナムが必殺技みたいなもんだろ? なにが足りないんだ?」
「武器の種類じゃなくて、技っス! 奥義っス!」
ああ、なるほどね。
俺は頷く。
「アクティブスキルってことだよな?」
「あくてぃぶ? あ、積極的ってことですね! 私ももっとがんばらないと……」
リンは両手を握ってがんばるぞー、とポーズをとる。
「一般的な意味だとそうだけど……ちがうと思うぞ!」
「え? ……違うんですか?」
違うけど、ぜひ頑張ってほしい!
俺も頑張るぞ!
トウコが言う。
「いやいや! リン姉がはげしく迫ったりしたら放送事故っス! ぜひ、あたしにどうぞ!」
いや俺に……じゃなくて!
任意に発動するスキル。
それがアクティブスキルだ。
まあ、ゲーム用語である。
「脱線しすぎだ! つまりアクティブスキルってのは、俺の【フルスイング】とかリンの【火魔法】みたいなやつだ」
「そうっス! あたしのは技じゃなくて、技術とか武器なんスよ!」
「えっと……トウコちゃんのスキルも魔力を使ってますよね? アクティブ、じゃないんでしょうか?」
俺たちのスキルだとアクティブとかパッシブとか説明はつかない。
ちゃんとした分類はされていないんだよなぁ。
「ざっくり、魔力を使って撃つ技がアクティブスキルと思ったらいいだろう」
「そうなんですね。じゃあ私のファイアボールはアクティブスキルなんですねー」
「あたしの【銃創造】はアクティブっぽいんスけど……なんか違うっス!」
「出した後は常時発動だしな。微妙なところだ」
俺の【分身の術】も発動した後はアクティブっぽくない。
持続時間が長いスキルはイメージと違うってことだ。
「ともかくトウコは、魔力消費でドカンと放つ技が欲しいんだな?」
「ドカンと大きい攻撃ですかー?」
「そうっス! そうじゃないと……!」
トウコがいったん言葉をつまらせる。
リンが小首をかしげて聞き返す。
「――そうじゃないと?」
なにかマズイことでもあるっけ?
トウコはまじめな顔で言い放つ。
「――必殺技がないと映えないっス!」
「なんだそれ……」
理解に苦しむわ。
いや、わからなくはないけど、重点を置きすぎだろ!
リンが言う。
頑張ってわかってあげようとしているようだ。
「ばえる技? ……カッコいい感じがいいのかなー?」
トウコは腕をぶんぶんと振りながら、くやしげに言う。
「そう! いいねされたいんス! かっけえって思われたいんスよぉー!」
だだっ子かよ!?
モテたいだけか!
リンが言う。
「トウコちゃんはいつもカワイイし、カッコいいと思うよー」
「そ、そうっスかね?」
「ほら、えっと。あの黒い銃……とか? すごくカッコいいよね!?」
「あー……それはなんていうか、ノリなんで……」
トウコはちょっと気まずそうな表情を浮かべる。
あとから褒められると恥ずかしい類の技だよな。
黒歴史。黒き銃さん。
たまには俺もからかわせてもらおう!
俺はにやにや笑いを浮かべて言う。
「詠唱もあるし、必殺技っぽいよな? 毎回やればいいだろ?」
「っぽくしたいんじゃないっス! すごい技がいいんスよぉっ!」
俺はからかうのをやめて本題に戻す。
「で、候補はあるのか?」
「いくつかあるっス! もちろん、シューターから選ぶっス!」
「ああ、それがいい」
「ゾンビのスキルはあぶないかもしれませんからねー」
今のところゾンビのスキルは謎が多い。
【捕食】【復活】【狂化】【憤怒】。どれもまだ検証できていない。
【捕食】はリンの【食材】と合わせて検証できるはずだ。
そっちはあとで試してみよう!
俺はトウコに向かって言う。
「レベルは十四になったんだよな?」
「たくさん上がったね、トウコちゃん!」
「あたしにはまだ成長の余地があるっス!」
トウコは胸を寄せて上げる。
今でもけっこうある……じゃなくて!
急にセクハラをぶっこんでくるんじゃない。
ツッコむのも忘れてしまうわ!
「……レベルが低いから上がりやすいんだよな?」
「大鬼さんの魔石を食べちゃった分もですねー」
俺とリンはこの数日で二レベル上がっている。
トウコは計四レベル。
攻略で三レベルと、大鬼の魔石で一レベルだ。
実際、トウコの成長は早い。
トウコは両手をばっと広げて言う。
「スキルポイントはなんと二十もあるっス! ばーんと使うっスよ!」
「トウコにしてはちゃんと我慢できたな!」
「店長に言われてたから、ガマンしてたっス!」
トウコは少し得意げな顔で俺を見上げる。
俺はその頭にポンと手を置いて言う。
「えらいえらい」
「へへーっ」
トウコはにやける。
無意味に待たせていたわけじゃない。
ちゃんと理由はある。
「スキルを強制するつもりはないけど、相談はしてほしいからな」
「なんでも一緒に考えたいですよね!」
リンはまじめな顔で頷いている。
「うん。それにほら、俺のスキルがカンストした話しただろ? カンストするとスキルはもっと強くなるんだ!」
「あ、さっきゼンジさんが言ってましたよね! どうなるんですか? ぜひ、聞かせてください!」
さっきは脱線して説明できなかったからな。
「ああ、スキルの調整ってのがあって――」
俺は「スキル調整」と「基礎スキルのスキルレベル向上」について説明する。
リンはメモを取って聞いている。
まるで俺の言葉を一語たりとも聞き逃さないようにという感じ。
この話題にはトウコも興味があるらしい。
集中を切らさずにちゃんと聞いている。いちいち大げさに驚いたり聞き返してくる。
「――というわけで、俺は【分身の術】を極めて強くなったわけだ」
「頑張った甲斐がありましたね! ゼンジさん!」
「ああ、長かったぜ……」
最初からひとつの術につぎ込めばよかったと言える。
だが、最初からわかっていたわけじゃない。
それに【忍術】にはロマンあふれる術がありすぎて絞れないんだよな!
ほかの術がなかったら打開できない状況もあったし!
トウコが言う。その表情には理解の色がある。
「つまり、あたしもスキルを特化したほうがイイってことっスね?」
「そうだ。必殺技を取るなら一つに絞ってカンストさせたほうが、美味いってこと!」
「そうするっス! 店長の人柱、助かるっス!」
「ひとばしら?」
リンが首をかしげる。
一般的な言葉じゃないかな?
「実験台とか、先に様子を見る人のことだよ。俺の回り道も無駄じゃないってこと!」
「そうなんですか。人柱ってえらいんですね!」
「ありがたく店長のシカバネを乗りこえていくっス!」
「死んでねえけどな! で、取ろうと思ってるスキルはどんなのだ?」
俺のスキルたちは死にスキルなんかじゃない!
生き生きと活躍しているぜ!
「銃使いの必殺技と言えば跳弾っス! 【リコシェショット】ってのがあるっス!」
「跳弾か! 銃使いといえば、ってやつだな!」
いいじゃないか!
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