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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
一章 ステイホームはダンジョンで!

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クローゼットダンジョン・第四階層。チラ見!

 時間的にそろそろ帰る時間だ。

 朝ごはんタイムには余裕をもって帰りたい。

 風呂や着替えもすませて、しゃっきりした状態で臨むのだ。


 生活が逆転しても、朝のイベントだけはこなす!

 これがなければ、際限なく潜ってしまうからな。


「よし、四階層は覗くだけ! チラッと見て帰る!」


 帰り道の余力も残さないと。

 行きで力を出し切ったら、帰りがヤバい。


 三階層と四階層の間の階段で装備を整える。

 痛んだマフラーは魔石でリサイクル修理する。


 手裏剣の残弾は五寸釘が5、三寸釘が15だ。

 だいたい、コウモリ一戦分くらい。


 分身をおとりにして戦うと、少し離れて投擲するのが主な攻撃手段になる。

 消費が激しいのだ。

 また、広い空間なので遠くに飛んだ手裏剣は回収が難しくなる。


 今のうちに補充しておくか!


 クラフトスキルはこういう場面でも活躍してくれる。


「使っていないゴブリンのナイフをベースにしてと……【忍具作成】!」


 ナイフから、5本の棒手裏剣が作り出される。

 魔石の消費は5個。

 ゴブリンのナイフはモノリスで魔石10個だったから、総コストは15個。

 棒手裏剣1本あたり魔石3個か。


「うーん。コスパ悪いな! 釘なら数十円なのに……」


 持ち物を無制限に持ち込めるようなチートはない。

 しかたないね。


 なお、ベースなしで手裏剣を作ろうとすると1本で魔石5個を消費した。

 費用対効果(コストパフォーマンス)は最悪なので、これ以上は作らないでおく。


 ダンジョン内の品物だけでクラフトしてたら、すぐ破産だ。


「考えてみれば、現代と行き来できるって、すごいアドバンテージだよな……」


 平和な日本にいつでも帰れる安心感!

 安価で高度な材料が買い放題!

 電気ガス水道のそろった家で食べる美味しいごはん!


 こんな洞窟に閉じ込められてゴブリン肉をかじる生活とか……いやすぎる!

 薬草やスキルはファンタジーのほうが便利だけどね。


「この薬草が外へ持ち出せたらな……。いくらでも出すって人はいるよな」


 ちょっとしたケガなら、一時間もせずに治ってしまう。

 現代の医学では、いくら金を積んでも手に入らない効果だ。


 それがたったの魔石10個だ。

 はじめ高いと思ったが、これは破格の安さだ。


 薬草一つ持ち出すだけで、救える命があるだろう。

 もしかすれば、世界そのものだって救えるかもしれない。

 病気にも効くのなら、パンデミックすら終息させることができる。


「……だから持ち出せないのか? 現代社会を根本から覆しかねないから?」


 ダンジョン産の品物は外に持ち出すことができない。

 スキルやステータスは外では力を発揮しない。


 もし、外に持ち出すことができたなら……。

 それは、世界を変化させずにはいられないだろう。


 医療現場も、製薬業界も、なにもかもが大混乱に陥るだろう。

 きっとそれは、みんなが幸せになるだけの単純な変化ではない。


 薬草や治癒薬を求めて争いが起こる。

 スキルや回復力を使った戦争も起こるだろう。

 ステータスやスキルを持った、不死身の軍隊の出来上がりだ。


 ダンジョンが(おおやけ)になれば、そういう世界が待っているのではないか?


「すこし、悲観的に考えすぎかな? いや、だからリヒトさん(リアダン管理人)はあんなに回りくどい伝え方をしているのかもしれないな」


 ダンジョンの話を「架空のゲーム」の「設定」として語るリヒトさん。

 まるで、誰かに知られることを恐れるみたいな慎重さだ。

 それでも伝えたいなにかがあるんだろうか。


 ……考えてみても、いまの俺にはわからない。


「もっといろいろ聞いてみたくなったな……。同時に、うまく聞かなきゃ危ない気もしてきた……」



 脱線してしまったな。

 とりあえずは第四階層をちょっと見て帰る。


 階段を降りきって、外を眺める。そこには――


 ――壮大な、地底湖が広がっていた。


「おお……すげえ。なんか……すげえ!」


 目の前の光景の美しさに、単純な言葉しか出てこない。

 感動したり驚いたりすると、言葉なんて出ないんだな。


 壁や天井には、キラキラと輝く水晶がところどころに露出している。

 【暗視】状態だと、目がいたくなるほどに明るい。

 【暗視】を切る。目が慣れれば、十分に見通せるほど明るい。


 色を取り戻した視界で見ると、なお美しい。

 輝く水晶はコブシ大から人の背丈を超えるようなものまで大小さまざまだ。


 それぞれが微妙に違う色を放って、洞窟内はライトアップされたようにカラフルだ。

 水面に反射した光が天井を虹色に彩っている。


「オーロラみたいだな……テレビでしか見たことないけど」


 オーロラのように帯状に見えるわけではないけど、絶えず色を変えるさまは似ている。

 ずっと見ていても飽きないような、幻想的な風景だ。



 洞窟の形状としては、三階層に似たドーム状の広い空間であることは変わりない。

 巨大地下空間という感じだ。


 より鍾乳洞っぽさが増している。

 壁や天井の色は乳白色。

 天井は鍾乳石が高い密度で垂れ下がっている。


 ……天井を【壁走りの術】で歩くのは無理だな。


 三階層と違っているのは床の半分ほどが水没していること。


 水は透明度が高く、浅い部分では底の岩肌が見えている。


 深い部分では底が見えない……。

 まるで無限に続く穴のように、深く続いている。


「ここに落ちたらと思うと……ゾっとする」


 見た限りでは水中に生き物はいない。


 浅くなっている水辺に近づいて、ナタで水に触れる。

 強酸だったり、毒物だったりする心配をしてみたが、異常はない。


 ナタについた水分に指で触れても、なんともない。

 普通の水のように見える。


 水の中に手を差し入れてみる。


 ……つめたい。


 指先がしびれるような冷たさだ。


 手についた水を舐めてみても、味はしない。


「飲んでみる勇気はないな。とりあえず、水には近寄らないようにしよう」


 俺は泳げるが、わざわざ水につかりたくはない。

 水温はかなり低いから、短時間で低体温症になってしまうだろう。


 水生生物がいて、水中に引き込まれたりしたらどうにもならない。


「何もいないよな……?」


 しばらく眺めてみたが、魚影は見えなかった。



 階段から遠く離れない範囲を探索する。

 地底湖になっているのは部屋の中央部分が主で、壁沿いは足場がある。


 壁沿いでも一部は水没していて、不安定な飛び石のような足場になっている場所もある。

 濡れていて、滑りやすそうだ。


「でも、俺は壁があれば問題ないな!」


 滑ったり崩れたりするかもしれない足場よりも、壁のほうがしっかりしている。

 普通だったら、この足場の悪さで苦労することになるんだろうけど、俺には関係ない。

 壁があれば、そこが道になる。


 実は【壁走りの術】は強スキルかもしれない。

 地形の影響をたいていの場合、無視できてしまう。


 足場の悪い部分を抜けると、狭い足場の一本道になる。

 左側は壁。右側は地底湖だ。

 水面は一メートルほど下になる。水深は底が見えないほど深い。


 壁がところどころ出っ張っていたり、道が曲がっていたりして先は見通せない。

 この階層の形は完全な円ではないから、壁も入り組んでいる。


「ゴブっ!」

「ギッ……」


 前からゴブリンの声が聞こえる。足音も複数。

 音からして二匹よりも多い。

 三匹か……四匹。これまでで最多だ。


 岩陰の向こうあたりにいるようだ。

 相手はこちらに気づいていない。


 俺は少し迷う。


 壁を登って上から奇襲するか?


 この岩陰に差し掛かったところを一匹ずつ仕留めるか?


 距離を取って投擲で削るのもいい。


 そもそも戦闘の必要はないから、さっさと帰るか?


 さて、どうするか……?

お読みいただきありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 次は地底湖かぁ 泳ぐのは危ないよね~ 蛇とか、蛸とか、クラゲとか…………………………
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