九階層の偵察と対策。日課が積みあがる!
八階層の攻略を終え、九階層の様子も見てきた。
レベルも上がったし、新素材も手に入れた。
検証したいことが山積みだぜ!
まずは、九階層で見てきたことを振り返ろう!
九階層は八階層と似た石造りの迷宮だ。
しかし、印象はかなり違う。少し古びていて遺跡っぽい雰囲気が強まっている。
たとえば、壁掛け松明が破損していて薄暗かったり、ドアがゆがんで開きにくかったり。
老朽化したかのように石の壁が崩れていたりする。
そういう場所では足場が悪く、ときには通路が土砂で埋まって通行できないこともある。
さらに、全体的に広くなっている。
通路が広く、天井は高い。
広くなったことで、壁掛け松明の光が届かない部分が増えている。
暗闇になにかが潜んでいそうだ。
もちろん、俺も潜める余地があるってことだ。
引き続き床にはトゲの罠がある。
さいわい罠の頻度は八階層よりも少ない。
だが油断はできない。
でも一番大きな違いは新モンスターだ。
といっても完全な新種ではない。
おなじみ、コウモリである!
しかしその強さは段違い。
舐めていると痛い目を見る。コウモリさんはやはり強いのだ。
対策装備を作成するまで攻略は後回しにすることにした。
この数日でボスコウモリとも再戦した。
リンとトウコも慣れてきたし、俺も最初から本気で参戦した。
となれば、余裕の勝利である。
ボスの魔石が手に入った。
これは質の高い魔石と言える。
だが、トウコはそれに食欲を感じなかった。
マズそうで食べられないという。
これでボスの魔石なら食べられる説は消えた。
うーむ。悪性ダンジョンの魔石が特別なのか?
やっぱり相性だろうか。
俺とコウモリやクモは相性がいいと思うんだけどな。
そもそも【捕食】がない俺には無理なのかもしれない。
ならば分身で!
すべてを分身で解決してやろう!
普通の分身はそもそも肉のカラダを持っていない。
ハリボテのように、内臓や血液のない形だけのもの。
俺の魔力で作り出したスキルである!
倒されたり消すときは塵になる。
ならば! 塵を取り込んで強化されてもいいのではないか!?
ファンタジーな存在にはファンタジーな出来事がおきるものだ!
試してみる価値はある!
分身にも口はある。だけど食道や胃はない。
人体とは違う。内臓はちゃんと作られていなのだ。
だから魔石を食べさせようとしても無理だ。
しかし、かみ砕かせることはできる。
早速、分身の口にコウモリの魔石を放り込んで噛み砕かせてみる。
……だが、ぼふっと塵が出るだけ。
「だめか……」
魔石を破壊して塵化させただけだ。
体に取り込まれた様子はない。
効果時間が伸びたり強くなったりはしない。
魔石を食わせて強化できてもいいと思うんだけどな。
魔石発電みたいな新エネルギーの発見ならず!
ならばさらにもう一歩!
自律分身に食べさせてみる!
【自律分身の術】は特殊なスキルだから結果が違うかもしれない。
自律分身は俺のカラダと同じで、ちゃんと血も流れている。
ものも食べられるし味も感じる。
……味も感じてしまう。
自律分身は俺自身。消えたとき記憶や経験をフィードバックされる。
だから味の記憶も俺が受け入れる。
でも魔石が経験値やスキルになるなら、これもフィードバックされるはず!
自律分身が消え、俺に残ったものは――
――マズい味の記憶だけだった……!
くそ……うまくいかないな!
やはり【捕食】が必要なのだろう。
分身の実験で使ったのは普通のコウモリの魔石だ。
ボスコウモリの魔石は貴重だからな。
これはモノリス交換にまわしたい。
というわけで、ボスの魔石をモノリスに食わせる。
そして『丈夫なコウモリの皮』に引き換える。
さらに『アミグモの魔石』を『クモの糸』『クモの粘着粘液』『クモの毒腺』に引き換える。
新素材の使い道も楽しみだな!
さて、これを使ってトウコの防具を作ることにしよう!




