表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

423/1471

ラブアンドマネー!? 案外堅実な未来計画!?

「貯金? なにも買わないのか?」

「ちょっと考えてみたけど、別に欲しいものないんスよねー」


 あれ?

 くだらないもの買うと思ったのに。


「その割に、やたら給料にこだわってたじゃないか?」

「そりゃそうっス! 愛とお金はいくらもらったっていいんスよ! ラブアンドマネーっス!」


 トウコはドヤ顔で言い切る。

 バカげたことを言っているようで、これは真理だ。


 金で愛は買えないけど、金がないことで愛情がさめることもある。


 貧すれば鈍する。

 人間の心なんて、衣食住が足りていなけりゃマトモに機能しない。

 仕事に追われて余裕のない生活をしていては、恋愛もできない。


「……まあ、そうかもしれん」


「でしょでしょ? というわけで、たっぷり愛してくれていいっス! さあどうぞ!」


 トウコは両手を広げて目をつむる。


「どうぞじゃねえよ!」

「愛と欲望は多いほどいいっス!」


 俺はトウコの頭に手を置いて言う。


「それはどうなんだろうな? 適量があるだろ?」


 それでもトウコは目を細めて、気持ちよさげに笑う。


「あたしの適量はもっと多いんスけどねー。店長はヘタレっス!」


「うっせえ。で、貯金してどうするんだ? でかい買い物でもするのか?」

「後々のためっスよ。高校卒業したら家を出るから、そのために取っとくっス!」


 トウコは平然と言う。

 家を出る……つまり親元を離れて自立するってことだよな?

 でも、それでいいのか?


「進学も就職もしないつもりなのか……?」

「学校はつまんないし、働きたくないっス! 働いたら負けっス!」


 いや……まあ、そうだが。

 俺は働くこと自体は嫌いじゃないんだよなぁ。

 ブラック労働が嫌なだけで、適量は問題ない。


「そりゃそうだが……じゃ、なにするんだ?」

「そりゃ、公儀隠密でお賃金もらえばいいんスよ。あたしはこっちが向いてるっス!」


 トウコは指を銃のように構える。

 つまりはダンジョンとの闘い。――ダンジョン生活。


 公儀隠密は十年後もその先も存在すると御庭は言った。

 それは俺たちの働き次第ともいえる。

 悪性ダンジョンを潰し、報酬を得る。


 不安定に思えるその生活だけど、現に大金を支払われている。

 それに、異能やダンジョンがこの世から消えるなんてことがあるだろうか?


 おそらく、ないだろう……。

 家があれば火事が起こり、消防官は必要となる。

 人がいれば犯罪が起こり、警察官が必要となる。

 ダンジョンがあれば悪性化して、俺たちが必要になる。


 なくなることなんてない。

 きれいさっぱり解決できる問題じゃない。

 ゴールのない問題なんだ。


「……そうだな。トウコには向いているかもな」

「でしょでしょ!」

「だけど高校はちゃんと行っとけ。すぐに将来を決めるんじゃなくて、よく考えて――」


 ――前にも言ったけど、ダンジョンだけの人間になっちゃだめだ。

 トウコは、まだ十六歳なんだ。今は学校がつまらなくても、変わるかもしれない。

 選択肢は残さないとな。


 俺の言葉を最後まで聞かず、トウコが言う。


「わかってるっス! 店長がうるさいからちゃんと卒業するっスよー! それで文句ないっスよね?」

「文句なんて言ってない。注意とか教育ってやつだぞ」


 トウコが口をとがらす。


「ちぇー。注意は文句っス!」

「注意は愛情だぞ!」


 俺はトウコの頭をなでる。

 トウコがフリーズする。


「……うぇっ!? な、なんスか急にっ」

「適量の注意を与えてるんだ」


「注意は愛情っスね! それならもっと物理的に注入してくれてもいいっスよ! さあ!」


 トウコは両手のてのひらを上に向け、指をくいくいと動かしてる。

 カモーンのポーズだ。


「さあ、じゃねえよ! 物理的な注意は体罰だよ!」

「店長のヘタレっ!」


 トウコは口をとがらせる。


 リンが感心したように言う。


「でもトウコちゃん……ちゃんと将来のことを考えてたのねー」

「たしかに、貯金とはなぁ……驚いたわ」


「なんで驚くんスかね?」

「いや、くだらないものを買うのかと思ってた」


 トウコは横目で俺をにらむ。


「店長もしかして、あたしのことアホだと思ってないっスか?」


 俺は頷く。即答だよ!


「もしかしないでも、そう思ってるぞ」

「店長ひどくないっスか!? リン姉ー?」


 トウコが愕然(がくぜん)として、リンに救いを求める。

 が、リンは目をそらした。


「あれっ!? リン姉まで……?」

「だけど、トウコちゃんはいい子だから……」


 トウコはがっくりとうなだれる。

 逆に、どう思われてると思ってたんだよ!


「いつもそういう風に思ってるんスね……」

「そりゃそうだろ」


 トウコが上目遣いで言う。


「いつも?」

「まあ、そうだな」


 トウコの表情が明るくなる。


「つまり……いつもあたしのこと考えてくれてたんスね!」

「ムリヤリ前向きにとらえたな!?」


「じゃあ、いいっス! あたしもいつも二人のこと考えてるっス!」

「うん! 私もそうよ。トウコちゃん」


 リンは優しく微笑む。

 トウコはやらしくにやける。


「いつも二人のあれこれを妄想してるっス!」

「うん。私も……あっ……」

「いつもはやめろ! 変な妄想はやめろ!」


 あれ? 今、リンも同意しかけてた!?

 まともなやつはいないのか!?


 俺は……まともだ。いつもじゃないし!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ