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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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霊場の条件!? 人気がなく、閉塞されていること!

 前に御庭はほかにも拠点があると言っていた。

 そしてそれを俺たちが使っていいとも。

 それを確認しておこう。


「御庭。ここの他にも拠点はあるのか?」


「ああ、いくつかね。そうそう、クロウ君の街にも拠点を準備しているところだ。完成したら連絡するね」

「それって、ここみたいにお寺なのか?」


「いや。寺ではないよ。そうでなくても霊場になることがあるんだ」

「霊場は特殊な土地だって言ってたな?」


「そう。普通じゃない場所さ。信仰や恐れを集めていたり、いわくつきの場所が霊場になりやすい」

「へえ、そうなのか」


 寺や神社だけかと思ってた。

 こういうのは信仰だよな。


「恐れっていうと……心霊スポットとか墓場とか?」

「うん。ほかには合戦場跡とか殺人現場とかね」


「じゃあ、城跡とかも?」

「そうだね。だけど自由に手に入る城跡は少ないし、拠点には向かないかな」


 そりゃそうか。

 そもそも買えるんだろうか?


「じゃあ、心霊スポットに拠点作るのか? それって居心地悪くないか?」

「まあ、居心地はなんとも言えないね。霊感と異能は別だし、ダンジョン保持者だからってそういうのに敏感とは限らないよ」


 リンが震える声で言う。


「それって……見えないけど居る、ということでしょうか……?」

「うん。まあ、見えないなら害も小さいよ」


 ちょっと害あるんじゃねーか!


 リンは小声で答える。


「そう、ですか……」


 顔色が悪いぞ!

 話題を変えよう!



「そういえば寺や神社は霊場になりやすいんだろ? それだと、かなりの数の霊場かあることになるよな?」


 コンビニより多い神社仏閣(じんじゃぶっかく)が、全部霊場だったら――

 世界による隠蔽が通じない人が多すぎてしまうよな?


「お、するどいねクロウ君! 霊場の数はそれほど多くない。全部が霊場とは限らないんだよ」

「かならずそうなるわけじゃない? なんでだ?」


「ニセモノもあるってことっスね!」

「トウコちゃん、言い方……」


「いや、そういうことじゃない。信仰心が低いとかインチキだというわけじゃないんだ」

「効果がないのに、ホンモノって言えるんスか?」


「これはちょっと複雑でね。観光地みたいな神社仏閣は霊場じゃない――なんて言うと怒られちゃうよ」

「誰に怒られるんだよ?」


 御庭は苦い表情を浮かべる。

 誰かに怒られたことがあるのかな?


 俺はそんなに宗教熱心じゃない。

 だけど、トウコみたいな言い方してたら怒る人もいるだろう。


「宗教に熱心な人はいるもので、異能者でも気にする人がいるんだ」


 御庭が霊場の話をするのは公儀隠密の仲間――異能関係か認識阻害者だろう。

 中には信仰心のあつい人もいる。


「へえ。俺は気にしないぞ。――じゃあ、霊場になるには何か条件があるのか?」


 御庭が人差し指を立てながら言う。


「うん。あるよ。――まずは人が少ないこと」


「人が少ない? つまり、人の多い場所に霊場はできない?」

「そうだ。霊験あらたかで人気の神社仏閣だとしても、人が多ければ霊場にならない。あ、この霊場っていう用語は宗教やオカルトで使うものとは違うからね」


「隠蔽を(まぬが)れやすい場所、監視のゆるい場所を霊場って呼ぶわけだな?」

「うん。ただの呼び名だよ。混んでる場所はどうしたって賑やかな場所になる。特別な場所とは感じにくいよね?」


「そうかもしれないな。ひっそりした神社のほうが、おごそかに感じられるかもしれない」

「それ、わかります! 早朝の誰もいない時間なんて、神秘的ですよねー」

「あんまり混んでると、ありがたみも薄れるかもしれないっスね」


 人が多いと特別じゃなくなる……?

 それはなんでだろう。


 認識のせいか?


「うーん……。みんなが集まる場所――普通の人がたくさんいる場所――それは普通の場所だ。そういう風に人々に認識されるということなのか?」

「人々の意識が影響しているのかもしれないね。僕らも正確に把握しているわけじゃない」


 御庭もなんでも知ってるわけじゃないか。



 御庭は二本目の指を立てる。


「もうひとつ、わかっている条件があるよ。それは、閉塞(へいそく)された空間であることだ」


 トウコが言う。これは俺も気になる。


ちな(ちなみに)、閉塞された空間ってなんスかね?」

「人目につかないってことだね。隔絶(かくぜつ)と言ってもいい。区切られてる感じだよ、トウコ君」


 人目につかず、区切られているもの――


「区切られているといえば、ダンジョンもそうだよな?」

「その通りだよクロウ君。ダンジョンも霊場も、基本的には室内や閉じられた場所にできるんだ」


 先ほどの悪性ダンジョンからあふれたダンジョン領域も、建物の形に収まっていた。

 マンションの一室という区切り。その中の衣装ダンスという閉塞された空間。


 リンが納得したように言う。


「たしかに……クローゼットもトイレも冷蔵庫も閉塞されていますねー」

「えーと、つまり密室ってことっスか?」


「うん。壁やドアのような物理的な区切りもそうだし、神社仏閣の境内みたいな意味的な区切りもそうだね」


 意味的な区切り……?

 壁は必須ではないということか。


「他と区別されていて、人気がない状態ということでしょうか?」


「うん、そうだ。今いるこの廃寺は人気(ひとけ)がなくてひっそりしている。壁で区切られてはいないけど、境内に入るには山門をくぐるでしょ? 周囲は木々に囲まれていて外界とは隔絶しているんだ」

「ピッタリ密閉されてなくてもいいわけだな」


 神社だったら鳥居をくぐる。

 城跡だったら城壁や堀で区切られている。


「神秘は秘匿されるべきってやつだね。秘密に宿るんだ」

「なんか、眉唾(まゆつば)な話になってきたな?」


「宗教施設には開かれない建物があるでしょ? 関係者しか入れない場所とか、めったに一般公開されない場所とかさ」

「宝物殿とか? 聖域みたいな?」


 あんまり詳しくないが、十年に一度の御開帳……みたいなイベントをやったりする。

 普段は閉ざされていて、いつでも入れない場所。


「人気が多くても、そういう場所は霊場になることがあるんだよ」

「へえ……寺や神社の一部だけが霊場になるんだな。全体が霊場にならない場合もあるってわけだ」


 御庭は頷く。


「うん。僕らの拠点の高セキュリティエリアも同じ理屈だよ。隠して区切ってある。関係者しか立ち入らず、人数も少ない」


「意味的な区切りか……」


 リンが胸の前で手を打つ。


「ああ、そういうことなんですねー!」


 地下。隠し扉。パスワード。

 さっき見てきたハカセのいる場所だ。


 外から隠されて、隔絶されている。


「あまりに多くの人が訪れると神秘が薄れる。霊場はいずれ普通になってしまうんだ」

「それじゃ困るんじゃないか?」


 御庭は頷く。


「いずれといっても、数十年とか数百年の話だよ。僕らが使ってる間くらいは問題ないはずさ」

「それでも区切っておくのはなんでだ?」


「十年なんて、ある意味あっという間だ。そのときに拠点が使えないんじゃ困る。それに、施設はどっちにしろセキュリティを高めておきたいからね」

「ま、それもそうだな。あたりまえだけど、十年後にも公儀隠密は存在するわけだ」


 御庭はしたり顔で言う。


「そりゃそうだよ! 僕の目的はまさにそれなんだから!」

「忍者の復権だな」


「その通り! 僕らはこれから数を増やして、忍者による人民のための活動を行っていくのさ!」

「……まあ、頑張ってくれ。俺はダンジョンが本業だから」


 俺は肩をすくめる。


「つれないねクロウ君! さあ、これからがんばろうね! リン君、トウコ君!」


 御庭はリンとトウコにさわやかな笑みを向けた。


「え……は、はい……?」

「お賃金分は働くっスよー」


 とりあえず忍者が二名増えたことだし、公儀隠密としても一歩前進である!

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― 新着の感想 ―
[一言] どんな形であれ人の意識が向き、尚且つ人が寄りつかない場所が霊場になるのかな? ならダンジョンはどうかというと、1話の表現を見るに、個人が所有する場所で人の意識が向かない閉鎖空間がダンジョンに…
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