【閑話】年末は大掃除で! 年末ゴブリン一掃セール!?【スローライフ】
本日二話目!
本編の時系列とは別の閑話です。
年末である。
今日はダンジョン攻略はやめて、ゆっくり過ごすか。
といっても、ダラダラするわけじゃない。
「さて、大掃除でもするか!」
「はーい!」
「リョーカイっス!」
といっても、俺の部屋もリンの部屋もきれいに片付いている。
ダンジョンを物置に使っているから、アパートに物は少ない。
それにストーカー事件のとき時間を潰すために掃除してしまったんだよな。
生活の場がダンジョン内になってることもあって、部屋は汚れない。
多少散らかっても、リンが掃除してしまう。
掃除や洗濯までしてもらうつもりはないんだけど、たまに掃除をしたがるのだ。
「さて、とりかかるっスかねー」
「そこらへんは片付いてるから、触らなくていいぞ」
トウコが戸棚を開けたりタンスを引き出しはじめる。
整理されてるから、あんまりいじらないで欲しいが――
「うーん、エロ本はないっスねー」
「ないわ! 掃除しろよ!」
初手から余計なことすな!
クローゼットがダンジョンになったときに、中身はなくなったのだ。
男の子の秘密は闇に葬られた。
厳密にはダンジョンの転送門に隠れるように存在しているが、俺たちは触れない。
クローゼットを開けると、その中は黒い水面のようになっている。
異能者や一般人なら転送門は見えないし触れない。
だから俺のクローゼットやリンのトイレに入れる。
といっても、頼んでまで中身を取り出す必要はないな。
そんなことまで御庭や公儀隠密に頼むのは違うだろう。
シモダさんに頼むか?
いや、もっと頼みづらいわ!
トウコは諦めずに探し回る。
「どうせ女子大生モノとか隠してるに違いないっス」
「……ないわ!」
トウコはニマニマと笑いながら口に手を当てる。
「おやぁ? ちょっと間が? これはアタリっスか?」
「トウコちゃん。ゼンジさんの部屋に、そういうものはありませんでしたよー?」
しれっと、リンが断言する。
いや、なんで知ってるの!? 探したの!?
それで掃除したがるのか……!?
「まあ、アパートの部屋はいいんだ。ダンジョンの中を掃除しよう!」
「はーい」
「りょー」
まずは俺のダンジョンに入る。
ゴミやホコリなどはダンジョンに吸収されるように消えてしまう。
いつでも清潔である。
洞窟風の俺のダンジョンは少しじめじめしているが、真冬の外よりは温かい。
夏に入れば涼しいだろうし、冬服であれば少し暖かいくらいだ。
案外過ごしやすい。
「で、なにするんスか?」
「装備品のチェック――たな卸しをしようと思うけど、これは俺がやらないとな」
俺の装備品が主なので、頼むのも難しい。
「私はどうしたらいいですかー?」
「そうだなあ。リンは素材類を分類してくれ。そこの箱に雑に突っ込んでるんだよね」
「はーい。任せてくださーい!」
外から持ち込んだ素材類だ。
金属や木材から調味料まで。
クラフト用品である。
「トウコはモノリスまで行ってポーションを引き換えて来てくれ」
「いいっスけど、それって掃除っスかねえ……?」
トウコは首をかしげる。
「まあ掃除じゃないが、俺のいつもの日課を任せるよ。宝箱回収とかもよろしく」
「リョーカイっス!」
俺は【自律分身の術】を発動させる。
「よう、俺。トウコの引率は頼むぞ!」
「よう、俺。まかせろ!」
拠点にストックしてある魔石を自律分身に持たせる。
ポーション手拭いを作ったので、ポーションの在庫が少なくなっていたんだ。
自律分身はスキル扱いのためモノリスを使えない。
一人で行かせても意味がない。
「モノリスって二階層っスよね? それくらい一人でも行けるっスよぉ?」
「ついでにダンジョン内のモンスターも掃除して来てくれ。自律は弾拾いや荷物持ちさせたらいいだろ」
五階層以下なら自律分身でも問題なく戦える。
でも、トウコのレベル上げも兼ねる。
魔石も手に入って一挙両得!
「おー、そういうことなら任せてほしいっス! 年末ゴブリン一掃セールっス!」
「セールってなんだよ。売るのか?」と自律分身。
ゴブリンなんて売れそうもないな。
「さ、店長二号! 行くっスよー」
「おう。暗いからそんな急がなくてもいいぞー」
自律分身は松明を持ってトウコを追いかけていった。
「さて俺は……たな卸しだな」
すでに作った装備品は展示ラックにかかっている。
使いやすい配置に並び替え、痛んだものは【忍具作成】で作り直す。
修理する感覚だが、実際には作り直している。
痛んだ品を素材にして、新しい品を作る。リメイクである。
【修理】のようなスキルもあるんだろうけど、いま俺の習得可能リストには現れていない。
忍者のスキルとしてあり得ると思うんだけどなー。出てこないかなー?
「釘がちょっと減ってきたな。発注しとこ。あ、着替え用のスペースなんかも作りたいなぁ」
「更衣室ですか? いいですねー!」
「じゃ、木材とかも発注しなきゃな」
「わあ、たすかりますー。ちょっと明るいとうれしいです!」
俺のダンジョン内は薄暗い。
松明と発光ゴケの頼りない明かりじゃ、過ごしにくいよな。
「じゃあ明かりも考えないとな。電気は無理だし、松明だと服が燃えたら困るし……考えとく」
「おねがいしまーす」
一人のときはそのへんで着替えればいい。
だけど、リンやトウコがいる場合は困る。
後ろを向いてる間に着替える、なんてことをしているのだ。
俺には【暗視】があるから暗くても色々見えちゃうんだよね。
いや、見てない。見てないが!
ちゃんと後ろを向いて目をつぶっているけど、変な気分になりかねない。
なぜかリンは実況中継しながら着替えるし……。
トウコはわざわざ前に回りこんできたりするし……。
煩悩が百八つじゃ足りなくなるわ!
こうして、拠点を掃除しながら年が暮れていったのだった。
本年はありがとうございました! 来年もよろしくお願いします!




