表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

402/1470

【閑話】クリスマスはドキドキで!?

本日二話目。クリスマス話です!

 駅前通りは飾り付けられて華やかだ。

 ケーキ屋で予約していた品を受け取る。


 ううむ……。

 こんなものを買う日が来るとは考えてもいなかった。


 半額で投げ売りされているコンビニの品ではない。

 それなら安いからと仕事帰りに買って一人で食ったこともあるが……今年は違う!


 そもそも今日は仕事を休んでいる!

 かつて、こんなクリスマスがあっただろうか? いやない!


 一緒に過ごす人がいる……。

 いいのか、そんなことがあって……!?

 爆発しちまうんじゃないか、俺。



 俺はアパートへ戻ってきた。


「ただいま」

「おかえりなさい。ゼンジさん」


 壁の穴からリンが顔を出している。

 俺はケーキを手渡した。


「ケーキ買ってきた」

「ありがとうございます! さっそく開けさせてもらいますね……わあー! 可愛いケーキですねー!」


 ファンシーな飾りがついたイチゴショートケーキだ。

 買うときはちょっと恥ずかしい感じがしたけど……リンの笑顔を見れば報われた気がする。


 リンはキッチンで手際よくケーキを切り分ける。



「あれ? 静かだと思ったらトウコはまだか」

「遅いですねー?」


 噂をすれば、騒がしく階段を駆け上がる音が聞こえる。

 静かにしないとシモダさんに怒られるぞ!


 ドアが派手な音を立てて開く。


「ただいまーっス! やたらと混んでたけどチキンゲットしたっスよー!」

「おう。おつかれ」

「おかえりなさい。トウコちゃん。料理はもうできてますよー」



 草原ダンジョンへ移動する。

 いつもの食卓にはテーブルクロスが敷かれ、整えられている。

 ダンジョンの出入り口のある木を即席のクリスマスツリーに見立てて飾りつけしてある。

 モミの木ではないけど、それなりの雰囲気は出ている。


 草原ダンジョンは天気が良く春のように温かい。

 季節感はないけど、まあいいだろう。


 地球の裏側では真夏にクリスマスを祝うんだ。

 どこに居たって、平等に訪れる。

 ダンジョンだってかまわないだろう。



 リンが鍋からシチューをよそう。


「はい、どうぞー」

「おお、うまそうだ。いただきます」

「おぉー! クリスマスっぽい色っス! いただきー!」


 シチューからほかほかと湯気がたち、食欲を刺激するいい匂いがする。


 白いクリームシチューにニンジンの赤。ブロッコリーの緑。

 クリスマスカラーが映える。

 肉はツノウサギのものだろう。


 野菜は飾り切りされていて、手が込んでいる。


「ツリーの形のニンジンに雪だるまを()したジャガイモか……。すげえな!」

「ジャガイモは固めにして形が崩れないようにしてます」


 小ぶりのジャガイモを重ねて、雪だるまになっている。

 顔のパーツまで作りこむ力作だ。


「うまっ! あちちっ!」

「落ち着いて食べろよ!」


「チキンとコーラもスタンバイオッケーっス!」


 定番のフライドチキンだ。

 ポテトやナゲットもあるセット商品で、なかなかのボリューム!

 食いきれる気がしない!


「ケーキはあとでな。なんか、これだけで腹いっぱいになりそうだけど」

「え? ケーキはいくらでも食べれますよ?」

「甘いものは別バラっス!」

「そ、そうか」



 料理を食べ終え、一息ついた。

 二人はケーキまでぺろりと食べてしまった。

 俺はちょっと無理して食べ切った。


「ふう……うまかったな」

「リン姉の料理はいつでもおいしいっスけどね!」

「ふふ。ありがとう!」


「じゃ、プレゼント交換はじめるっス! あたしはこれー!」


 トウコがおもむろに紙袋を取り出す。

 二つある。


 え……? プレゼント交換って、なに?


「わあ! これは……入浴剤? ありがとう、トウコちゃん!」

「店長にはアロマキャンドルっス! 店長の洞窟はじめじめしてるからマシになるっス!」


「お、おう。ありがとう」


 俺は挙動不審になりながら受け取る。

 クリスマスって……プレゼントを用意するしきたりがあるのか!?


 ぬかった……! 用意してないぞ!

 ケーキを食うイベントだけで俺の許容量を超えていた!


 バカな……。いや、調べればわかることだ。

 そもそも常識のレベルじゃないか!

 自分の身に起こるイベントだと考えていなかった……認識が甘かった!


「私はこれ……似合うといいんですけど」


 リンははにかみながら、ラッピングされた包みを俺に渡す。


「あ、開けてもいいかな?」

「はいっ!」


 めっちゃ笑顔だ!

 俺は引きつった笑顔で包みを開ける。


 入っていたのは――


「――手編みのマフラー?」

「これ、リン姉が編んだんスか! 大変だったんじゃないっスか!?」

「ううん。大変じゃないよ。喜んでくれるかなって思って作る時間も楽しいから……」


 手編みって時間かかるよな。

 てことは、何日も前から準備していたってことだ。

 学業にモデル業にダンジョンに公儀隠密……その合間を縫って!?


 色は黒。シンプルで主張しないが、よく見ると縄の様な複雑な模様に編まれている。

 俺は震える手でマフラーを首に巻く。


「どうかな?」

「わあ! 思ったとおり似合いますね!」

「いいなあー! あったかそうっス!」


 実際あったかい。

 気持ちがこもっていてちょっと重……じゃなくて愛を感じるね!


「ありがとう。うれしいよ!」

「ゼンジさんがいつも着てる服に合うようにしたんですよー!」


 俺は黒系統の服が多いので、組み合わせを邪魔することはない。

 よく考えられている……!


「毎日使ってもらう作戦っスね!」

「ふふ……。トウコちゃんにはこれね」


 リンはトウコに小さな袋を渡す。

 当たり前のようにトウコの分も用意している!?


「これは軽いっスね? 開けていいっスか?」

「どうぞー」

「クッキーっスね! あざっス!」


 袋の中身は手作りのクッキーだ。

 トウコは中身を確認して笑顔になる。


 ……。


 リンがこっちを見ている。期待のまなざし。

 無言の圧力……! ボス級だ!


「店長……? まさか用意してないなんてことはないっスよね?」


 トウコはズバリと切り込んできたー!

 俺は動揺を抑えて言う。


「ま、まさか用意してないなんてことはないさ! あっちに置いてある! ちょっと待っててくれ」


 ねえけど!


「はーい」

「なんかぎこちなくないっスか、店長?」


 リンは絶対の信頼の笑顔。

 トウコは疑いの視線を送ってくる。



 俺は気持ち速足で資材置き場に向かう。

 拠点で使う装備品や資材、魔石を保管してあるのだ。


 脳が高速で回転して、時間の流れが遅く感じられる。

 ボス戦より緊張するぜ……! 失敗は許されない!


 いま作る! それしかない!

 資材置き場にある材料ですぐに作れるもの……。

 なにを作ればいい!?


 【忍具作成】君! お前にすべてがかかっている!

 プレゼントは忍具じゃない?

 贈り物をして人心を掌握するのは忍者の常套(じょうとう)手段!

 間違いなく忍具! 違ってもやれ! 頼むぜ!


 ――術は成功!


 俺の手の中に、二枚のチケットが生み出される。

 紙に文字を書いて、豪華に見えるよう装飾しただけの紙切れである!

 大丈夫、気持ちはこもっている!


 俺はなんとか笑顔を浮かべてそれを二人に手渡す。


「ありがとうございます。これは……?」

「なんか書いてあるっス……なんでも作る券?」


 文字通り、なんでも作るチケットである!

 肩たたき券みたいな苦し紛れの品である!


「欲しいものをもらったほうがいいだろ? 装備でも、日用品でもなんでもいいぞ!」

「わあ、そうなんですね! では、なにを作ってもらうか考えておきますね!」


 リンは疑いなく、笑顔で受け取ると少し考えこんだ。

 よし! 通った!


「なんでもっスか? そしたら……」

「あ、常識的なもので頼むぞ。金銀財宝とか、無茶ぶりはよせよ?」


 トウコが口をとがらせる。


「まだなんも言ってないっス! じゃああたしも、ちょっと考えてからお願いするっス」

「な、なんでもいいんですか……?」


 リンはなぜか顔を赤くしてうつむいた。

 な、なぜなんだぜ!?


「いいけど……俺が作れるものだぞ?」

「ゼンジさんと作るものならなんでも……はあ……」

「リン姉? おーい」


 しばらくリンは妄想の世界へ旅立ってしまった。

 プレゼントはなんとか成功したようだが……大丈夫だろうか!?

良い週末を!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 子作り券にしか見えない
[気になる点] こんにちわ〜赤ちゃん〜♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ