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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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俺のアレが捕食された……!?

誤字報告ありがとうございます!

 御庭の事務所は普通の会社と変わらないように見えた。

 応接室に通され、すぐに茶が出される。


 トウコが食べ物を求めたので、高級そうなカステラも出てきた。


 持ってきたのは無口な男性だ。

 気配が薄くて、地味な人だった。


 配膳(はいぜん)を終えるとすぐに出ていってしまう。

 話しかけるスキはなかった。

 雰囲気的に、寺の人なのかな?



 御庭が口を開く。

 そばにはナギさんも控えている。


「さて、今日はお疲れさま。さっそくだけど、リン君とトウコ君の希望を聞こう! ――と思ったけど食べながら話そうか?」


 御庭は目の前の皿をにらんでよだれがたれそうなトウコを見て言う。

 リンもそわそわしている。


 そういえば、俺も腹が減ってきたな。


「食べていいっスか!? いただきまーす」

「いただきます」

「じゃ、俺も遠慮なく……いただきます」


 少し渋めのお茶で口を湿らせる。

 ふう……。

 冷えた体が温まって、人心地(ひとごこち)ついた。


 カステラも甘すぎず、ちょうどいい。やはり高級品だ。


「食べながら聞いてくれ。――君たちは独立したチームとして動くことになる。二人はクロウ君の指示で動いてほしい」

「はい」

「いいっスよー」


 御庭は俺に向かって言う。


「次の仕事から僕は同行しない。仕事内容をクロウ君へ説明するから、そのあとの判断はまかせる。攻めるも退くも自由だ。ムリそうなら撤退してもいいし、勝てない場合は逃げてほしい」

「それでいいのか? ……いきなり自由すぎないか?」


 つまり、御庭は俺に対処が必要な悪性ダンジョンの情報を伝えるが……。

 俺はそれを対応してもいいし、しなくてもいい。


 ノルマもない。期日もない。

 好きなときにやればいい?


 自由にやっていいということ。これは全権委任だ。

 縛りがなさすぎる。


「クロウ君なら、僕がいちいち指図しなくても動けると信じている。任せておいて不安はないよ」


 ある意味では放任とも言える。

 だがこれは、信頼によるものだ。


「……そうか」

「もちろん、いつでも僕に相談してくれてかまわない。戦力が足りないなら別のチームを呼ぶこともできる。費用や資材が必要なら手配しよう」


 人手(ひとで)も経費も請求できるのか。

 ホワイトか!?


「さて、チーム全体の話はこんなものでいいかな。詳細はあとでクロウ君と個別に話すよ」

「ああ、いいぞ」


 詳細を話すと長くなるからな。


 御庭は口いっぱいにカステラを頬張っているトウコを見て……リンに向き直る。


「さて、リン君から条件を聞こう。君が公儀隠密に入ってくれるにあたって、僕らに希望する条件だ。お金は別途支払うから、他の条件だね」


「えっと……」


 リンは俺をうかがうように見る。

 条件と言われても、なにを話せばいいのかってことだな。


「参考までに俺が出した条件はこうだ。まず、俺たちの保護。敵対的な勢力(グループ)から守ったり、生活が脅かされないようにすること」


 俺の説明に御庭が補足を入れる。


「これはすべてのメンバーに行っていることだから、特別な条件じゃないよ」


 俺は二つ目の条件をリンに伝える。


「くわえて、トウコの特殊な体質(変異)についての配慮。変な目で見られないようにすることだ」

「トウコ君の()()はクロウ君に一任している。そして僕らはトウコ君に奇異(きい)の目を向けない。たとえば、魔石を食べたりしてもね」


 トウコが俺のカステラを狙う手をぎくりと止めて御庭を見る。


「……ははっ。バレてたっスね!」

「あんなのでごまかせるわけないと思ったけど……ヘンに隠してすまない」


 俺は御庭に頭を下げる。

 あからさまにあやしい状況でも、御庭は約束を守って追及しなかったんだ。


「いや、かまわないとも。クロウ君たちの立場ならそうするのが当然だ。だけど僕らは仲間なんだから、なんでも話して欲しかったな」


 御庭はちょっと肩を落として寂しそうな笑顔を浮かべる。

 くっ……イケメンがやると様になるね!

 なんかかわいそうになっちゃうわ!


「……この件は繊細だから気軽に話せないんだ」

「え? あたしは別にいいっスよ?」


 トウコは気にした様子もなく言うと、俺のカステラにフォークを突き刺す。


「トウコちゃん……いいの!?」

「いいのかよ!? けっこう気にしてたじゃねーか!」


 俺とリンはトウコを見る。


 ――人間じゃない、バケモノなんだ! なんて言って泣いてたのに……。

 イケメン笑顔にほだされたのか!?


「だって、店長とリン姉がヘンでもいいって、ゾンビでも一緒にいてくれるって言ったっス! なら別に他の人にどう思われてもどうでもいいんスよー」


 トウコはへらへらと笑っている。


「ゾンビ……? どういうことか聞いてもいいかな?」


 御庭は言葉を選んで聞く。

 聞きづらいよな。うん。


「職業っス! あの日からあたしの第二職業はゾンビになってるっス」

「それは興味深いな。変異したダンジョン保持者の話を聞けるとは……それで? なにか変わったことはあるかい?」


「まだよくわかってないっス! 魔石がおいしくて、食べたら経験値とスキルがもらえたっス!」


 スキルがもらえた?

 それは俺もまだ聞いていない情報だ。


 魔石を食べた後、あからさまに隠してた件だろう。

 それも言っちゃうのか?


「それはどんなスキルなんだい?」

「あれ? 話しちゃダメな感じっスか?」


 トウコがかたまっている俺とリンに目を向ける。


「別に、隠してどうなる話でもない気がしてきたな」

「トウコちゃんが平気なら、いいんじゃないかなー」


 トウコは得意げに言い放つ。


「【変異】の【鬼】の【憤怒(ふんど)】っス!」

「うわあ……また怪しげなスキルが生えてる!」


 俺は頭を抱える。

 リンはよくわかっていない顔だ。


 御庭が手帳にメモを取りながら聞く。


「その効果はどういうものかな?」

「対象一体を破壊するまで、怒りに身を任せる。筋力が一時的に上昇する――らしいっス!」


 狂化(バーサーク)と似ているが、違うのか?

 こっちも未検証なんだよなあ……。

 ヤバいスキルばっかり増えてくるよ!?


「えっと……鬼さんみたいになっちゃうの? それはちょっと、気をつけないとねー」

「リン君の言う通りだとしたら、使いどころの難しいスキルだね……」


 リンと御庭は心配そうに言う。

 大鬼の戦闘能力や身体能力は悪くなかったと思う。

 だけど【憤怒】のせいで力を発揮できていなかった。


 意味もなく木を殴ったり、分身で釣られやすかったのはスキルのせいかもしれない。

 使いどころを誤れば、大きなスキをさらしてしまう。


 ――でも、それを置いても余りある収穫だ!


「つまり魔石を食うと、そのモンスターの能力を得られるんだろ? すげーじゃねーか!」

「でしょでしょ!? チートっス! たぶん【捕食(ほしょく)】の効果っス!」


 相手の能力を奪える強力(チート)な能力かと予想したが……まさかこれとは!

 得られる能力が微妙なのは気になるし、無条件に強いとは言えない。

 うまく使えば、有益なスキルを取り込めるんじゃないか!?



「捕食、か。また怪しげなスキルが出てきたね……。その効果はなんだい?」

「捕食したとき、力を得る――っス!」


 この説明を聞いても、なんのことやら、って感じだけどな。


「力ってスキルと経験値のことだったんだな。そう書いてくれりゃいいのに」

「スキルの説明って不親切ですよねー」


「トウコ君の特異体質について色眼鏡で見ることはしないつもりだけど、今後もいろいろと聞かせてくれるとうれしい」

「いいっスよー」


 そう言いながらトウコはリンのカステラを狙っている。


「俺もいいと思う。保護してもらうにも、情報を隠したままでは不都合が多いからな」

「そうですねー」


 リンはカステラの最後の一切れを口に運んだ。

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