ピザ! コーラ! パーティーだ! そして重大発表!?
トウコがピザにかじりつき、コーラで流し込む。
「かーっ! やっぱピザにはコーラっスねー!」
机にコップを叩きつけるように置く。
コーラがしゅわしゅわと発泡している。
「ビール飲んだおっさんみたいなリアクションだな、おい」
「まあまあ店長。今日はあたしのおごりっス! じゃんじゃん食ってくださいよ!」
やたら上から言いよる!
いつもタダ飯食ってるくせにコイツ……。
俺はピザを一切れ選ぶ。
さすがにトッピング全種ではない。阻止したからな。
ハラペーニョとか乗せられたら食えないしね。
ベースはてりやきチキン。
これでもかとトッピングが乗せられている。
俺がリクエストした肉類だな。
ベーコン、ソーセージ、チーズ……。
「豪華だな。カロリーが凄そうだが……うまい!」
濃い味付け。とろけるチーズ!
鳥と豚と牛のコラボ。
なかよく口の中で舌を刺激する。
うまいに決まっている!
リンは笑顔でピザを口に運ぶ。
「おいしいですねー」
同じもの食ってるのに上品に見える不思議。
でも結構な速度で食ってるな。
ひと段落したところで、俺はトウコに向き直る。
「ところでトウコ」
「なんスか? おかわりっスか?」
「足りてるよ。それより、レベル十になったんだよな?」
「やっとっスよぉー! これであたしも一人前っス!」
デスペナルティで下がってばかりだったからな。
「一人前かどうかはさておき……まずはおめでとう!」
「トウコちゃんおめでとう!」
「あざっス!」
トウコは笑顔を浮かべている。
リンはトウコに拍手を贈る。
少し表情に陰があるような……。
んん? なんかまずいこと言ったっけ?
「――あ、リンも二十だったな。おめでとう!」
「はい! ゼンジさんも上がったんでしたよね。おめでとうございます!」
表情が明るくなった。
ふう。あぶないところだったぜ……。
リンは忘れられると気にする。
しかもその場で主張しない。
トウコが言う。
「じゃあ今日はレベルアップ記念パーティーっスね!」
「俺はキリのいい数字じゃないけどな。十六になった」
「おめでとうございますー!」
「二人ともおめでとうっス!」
いや、パーティーしてる場合じゃ……。
悪くはないが、いま話したいのはコレじゃない。
「でだトウコ。レベル十だな? 第二職業はどうする? なにが選べた?」
本題はこれだ。
職業をどうするか。
しかし、トウコの目が泳ぎはじめる。
「あー……それね。選べなかったっス」
「ステータスウィンドウの職業欄を押せば、選択肢が出る。チェックしなかったのか?」
この反応は……。
なにかを隠している反応だ。
「チェックしたっス。だけど……選べなかったっス」
「えーと、第二職業が解放されなかったってことか?」
レベル十で第二職業が得られる。
俺もリンもそうだった。
「さあ……? あたしは別なのかもしれないっス……」
「職業についてはシステムさんが説明してくれた。個人差はないと思うぞ?」
レベルやスキルにはダンジョンごとの違いはない。
職業も共通のルールだろう。
「そ、そうっスかぁ……?」
トウコが曖昧に答える。
「トウコちゃん。どうしたの?」
トウコの反応は素直で、嘘はつけない。
ぜんぜんごまかせていない。
……それにしても、なにを隠す必要があるっていうんだ?
「おい、どうした? 怒らないから言ってくれ」
「もしかして、もう職業を選んじゃったの? 好きなの選んでいいのよ?」
勝手に選んだからって、俺は怒ったりしない。
職業選択の自由ってやつだ。
強制なんてしない。
なにを選ぼうが自由だ。
自分の職業やスキルを知られることは弱点にもなる。
でも……隠し事はトウコには似合わない。
秘密にしておきたいけど、我慢できなくて不自然な態度になっているのかな?
「漫画でよくある――仲間にも能力は教えないってやつか?」
「そういうんじゃないんスよ……なんて言ったらいいか……」
トウコは言いにくそうにしている。
隠していても、戦えばわかることだ。
サプライズで何かやりたいのかもしれない。
俺はサプライズは好きじゃない。
事前に対策を立てておきたい。
でも、無理強いするのは違う気がする。
誰にだって言いたくないことはある。
隠し事の下手なトウコがこうまで口をつぐむんなら、なにか理由がある。
俺は追及を切り上げる。
「どうしても言えないなら無理には聞かないけど……」
「あっ」
トウコはあせったような表情を浮かべている。
揺れ動いているのか?
リンがトウコを見つめながら言う。
「トウコちゃん。やっぱり話したいのよね? 話してみて?」
「ううっ。実は……その……」
トウコはなにかを言いかけ、うつむいてしまう。
リンがトウコの手を握る。
「実は、どうしたの?」
トウコが思いつめたような顔で言った。
「実は……あたしの職業はもう決まっちゃってて――ゾンビなんス。ずっと前から……」
「え? なんだって!?」
「ええーっ!?」
ゾンビ、だとぉ!?
俺とリンは仰天した。
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