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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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攻守最強!? 思い込みとスルースキルの合わせ技!

 意識の再生を終えた。

 頭を振って、現状を認識する。


 二人が心配そうに俺を見つめている。


「ゼンジさん……?」

「店長、もうすぐ門が閉じるっス! はやく!」


 トウコが指さした先、転送門は小さくなっている。


「よし、飛び込め!」

「りょ!」

「はーい」


 二人が転送門へと吸い込まれたことを確認して、俺も入る。



 ――俺たちは無事に戻ってきた。

 トウコの家のダイニングキッチンだ。


「ふー。間に合ったっス!」

「ゼンジさん、無事に分身さんの記憶は受け取れましたか?」


 リンが俺の目を見つめる。


「あ、ああ。無事に受け取れたよ」


 ……リンの服には濡れたり染みたりといった汚れはない。


 ダンジョンの外に出たとき、服や持ち物は元に戻る。

 中の品物は持ち出せない。


 ルール通りの挙動だ。

 だけど……ついチェックしてしまった。


「リンと自律分身は頑張ってたな!」

「はい! 分身さんのおかげで頑張れました!」


 リンはにこにこと頷く。

 トウコが俺に追及するような目を向ける。


「店長。なんで今、リン姉の股間を凝視したんスか?」

「……自然な目線の移動だ。意味はない」

「日々のルーティンっスね?」

「そうそう。毎日かかさずチェックして……って、チガウ!」


 俺の目線をチェックすな!


「リン姉に抱きつく感触を味わって我慢できなくなっちゃったんスね? ズルいっス!」

「ズルいって? お前も腕が折れた感触を味わってみるか?」


 自律分身がリンの魔法を照準していたとき、かなり密着していた。

 実際、いい感触だったけど……。

 そんなものに注意を避ける状況じゃなかったわ!

 恐怖や痛みのほうが強烈だ。


「いや、それは要らないっス!」

「服の汚れが消えたか確認していたんだよ。ちゃんと消えてた」


 なんの汚れかは秘密だ。


「……?」


 リンはいつものぴたっとしたトレーニングウェアを確認している。


「えーと……なにかついてますか?」

「……いや、なにもないよ」


「そうですか」


 リンは頷く。

 何事もないリアクションだ。


 でも……これは妙な反応だ。



 トウコは腰を強調するポーズをとっている。

 なにしてんだ?


「あたしをチェックするルーティンも組み込むべきっス!」


 股間をチェックしろって?

 俺はちらりと見る。


「今日もいつも通りのヨゴレだな! ヨシ!」

「バカにされたのか認められたのか分かんないっス!」


「ま、トウコはそのままでいいんじゃないの?」


 アホでもヨゴレでもいい。

 トウコがそれで楽しいならいいんだ。


「えー? リン姉どう思うっスか?」

「トウコちゃんは汚れてないよ。大丈夫!」


 リンがトウコの服をチェックして、指でオーケーサインをつくる。

 うん、その汚れの話じゃないけどね!



 リンの妙な態度……違和感。


 ついさっきまで、ひどく怖がっていた。

 咆哮を食らったときは異常なまでに怯えていた。


 でも今は、まったくの平常運転だ。

 そんなにすぐに普通の状態に戻れるだろうか。


 トラウマになってもおかしくない状況だった。


 俺はそんなにすぐに気持ちを切り替えられない。

 トウコのダンジョンで初めて死んだあとは、その衝撃でしばらく立ち直れなかった。


 今回は死んでいないとはいえ、かなりの恐怖を味わったはずだ。

 俺だってきつかった。


 想像力豊かで感受性の強いリンにはきつかったろう。


 それにさっきの違和感。


 リンは失禁して服を汚していた。

 それなのに今、服を意識していない。

 恥ずかしがったり隠そうとしていない。


 まるで、そんなことはなかったみたいに。


 もしかして、記憶がないのか?

 あるいは……。


「ところで、リン。はじめての冷蔵庫ダンジョンはどうだった? 感想聞かせてくれ」

「えーと……ゾンビさんは怖かったですね」


「リン姉……ゾンビは嫌いっスか?」

「ちょっと……いえ、かなり苦手ね」


 リンはひかえめに言いかけて、首を振る。


「そりゃ、ゾンビが好きなのは相当の物好きだろうよ」

「そりゃそうっスねー」


 誰だって怖いよ。


「だけど、分身さんのおかげで怖くなくなりました!」

「もう目をつぶらなくても大丈夫か?」


「最初みたいにゾンビさんばっかりだと嫌ですけど……」


 リンはゾンビを思い出しているのか、眉をしかめている。

 トウコが不思議そうに口をはさむ。


「え? 最初ってなんス――」


 俺はトウコに目で合図を送る。


「――じゃあ、後半はどうだった?」

「大きなゴブリンさんはちょっと強かったですねー」


 ゴブリン? やっぱりそうか!


 料理人ゾンビの記憶が塗り替えられている。

 ゴブリンだと思い込んでいるんだ。


 途中まで、自律分身がそう誘導していた。

 目を閉じてゴブリンだと思い込ませようとしていたんだ。


 だけど、咆哮を受けてからは違う。

 ひどい衝撃を受けて泣きじゃくっていた。

 自律分身の誘導もなくなっている。


 それに……料理人を燃やしたときは目を開いていた。

 しっかりと料理人ゾンビを見た。


 それなのに、怖がっていないどころか笑ってさえいた。

 あまりの恐怖にネジが飛んでしまったのか……?



 一時的に無害なゴブリンだと思い込んだだけじゃない。

 前後の記憶すらも書き換えてしまっているんじゃないか!?


 料理人ゾンビは大きなゴブリンに差し替えた。

 そして、咆哮の恐怖も失禁も……すべてなかった事になっている。

 自律分身に守ってもらったから大丈夫だった、ということになった……。


「ゴブリン? なんの話っスか?」

「トウコちゃん。食堂の大きいゴブリンさんですよー?」


 リンはトウコに当たり前のように説明する。

 俺はトウコに補足する。


「料理人()()()()のことだ。トウコは途中で耳を傷めていたし……あとで説明する」


「はあ……? ま、リョーカイっス」


 トウコは納得していない様子だが、ここでは話せない。



 リンは、恐怖や羞恥心の対象を消し去った。悪いものをなかったことにした。

 自らの記憶をすり替えて精神状態を保った。心を守ったんだ。


 リンはそもそも、思い込みの激しいストーカーだった。

 誰からも見つからないところに隠れて、消えてしまいたいような弱さを持っている。


 たった一つの小さな親切……よかったことにすがりついた。

 それだけを拠り所にしてしまった。

 俺なんかを。


 だからリンは、俺から離れられない。

 ダンジョンのことを任せて家でひとり待つなんてできない。


 ダンジョンに入ってしまえば、もう逃げ場はない。


 ひとりは嫌。怖いのも嫌。

 どちらも選べない。追い詰められてしまった。


 俺たちと一緒にいるためには、冷蔵庫ダンジョンに入るしかなかったんだ。


 そして料理人との戦いで限界を超えた。

 だから、思い込んだ。スルーした。そうするしかなかった。



 今はこのことをリンに気付かせるべきではない……気がする。


 だが、今後のことを考えると心配だ。

 こんな不安定な状態で、ずっとやっていけるのか……?

 時間をかけてゆっくり考えていくしかないな。



 リンはトウコに心配そうな声をかける。


「そういえばトウコちゃん。耳は大丈夫だったの?」

「店長が()()()()()してくれたんで治ったっス」


 ……しつこい奴め!

 俺は面倒だが訂正する。


()()()、な?」

「でもあんまり無茶しちゃだめよ?」


 いや……リンもムリしてるんですけどね!

 大丈夫かよ!?


「キーンってなって目ぇ回ったっス! でもダンジョン出たら治るから平気っスよ!」


 トウコはなんでもないことのように言う。

 治るから平気……まあ、そうだが。


 リセット(自害)するよりはだいぶマシとはいえ……。

 物理的に無理しすぎだよね!?


「俺は耳を塞いだけど防げなかったな。声を聞くだけでアウトっぽい」

「あたしの攻略法はカンペキ! 次回は部屋に入る前にやっとくのがおススメっス!」


 鼓膜を破る。それで音は聞こえない。

 めでたしめでたし。


 咆哮対策としては正解かもしれないんだけど……。

 無茶がすぎる。


「いや……おススメされてもできないだろ」

「じゃあ耳栓(みみせん)でも作るんスか? 効かないと思うっス」


 耳を塞いでもダメなら、栓をしてもダメだ。

 音を減らしたり遮ぎっても効果はないだろう。


 聞いてしまえば効果が発揮されるスキル。


 音を小さくしてもダメだ。

 完全に消す方法は思いつかない。


 逆の波長の音を出すとか……真空を作るとか……?

 エコーロケーション対策でも考えたが、これはムリだ。


 【消音】は自分の出す音を消すだけ。隠密行動用のスキルだ。

 相手の出した音を消すことはできない。


 ゲームでよくある沈黙魔法(サイレンス)なら対策できそうだ。

 今のところ俺のスキルにそういう術はない。


 いや、あるかもしれない。

 忍者ならできても不思議じゃない!


 レベルも上がったし、あとで見てみよう。



 リンがにこにこと切り出す。


「私は分身さんが守ってくれたから大丈夫でした!」


 俺はトウコに目で合図をする。

 目がつりそうだわ!


「……そうなんスね?」


 トウコは目線を察して曖昧な言葉を返す。

 珍しく空気読めたね! えらい!


 リンは恍惚とした表情を浮かべて、頬に手をやる。


「そうなんですー。後ろから支えてくれて……すごく、守られてるって感じがしましたぁ」

「……なんかこっぱずかしいんだが」


 急なノロケ!?


 実際のリンはビビりまくっておもらししてましたけどね!

 トウコは気づいていないし、リンは忘れている。


 抱きつくだけで恐怖を克服できるなら、スゴイことだ。

 愛や絆で勝つってのは、こういうことなのかな!?



 トウコが俺の肩を叩く。

 目をつぶっている。

 ……なんだよ?


「あたしも目をつぶるんで……後ろから激しく攻めてほしいっス!」

「恥ずかしい奴だな……」


 あんまり攻めた発言はよせ!


「トウコちゃんは銃が上手だから、自分で狙ったほうがいいですよー」

「じゃ、あたしがリン姉のハートを狙い撃ちするっス!」


 トウコがリンの背後に回って抱きついた。

 そしてハートを激しく攻め立てた。


「きゃ! ちょっとトウコちゃん!?」

「でへへー。すごく攻めてるって感じするっス!」


 けしからん行動はよせ!

 もっとやれ!

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― 新着の感想 ―
[一言] ×そしてハートを激しく攻め立てた。 〇そして|双乳《ハート》を激しく|揉み《せめ》立てた。形のいいふくらみがトウコの手の中でポヨポヨと跳ねる。ムフフ♡  こういうけしからん行動は読者のた…
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