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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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VSボス戦! イメージトレーニングと固定砲台!?

 部屋の外からの先制攻撃作戦は失敗に終わった。


 食堂の奥、厨房から恐ろしい声が響く。

 ボス――料理人ゾンビだ!


「――グォォォ!」


 迫力ある怒号に空気がびりびりと震える。


「ひっ……!」


 リンはびくりと肩を震わせると、後ずさる。


 俺はリンの肩に手を置く。


「落ち着け! 落ち着いて集中するんだ!」

「はあっ……はあっ……ひゅー」


 リンは胸元を押さえて呼吸を整えようとする。

 過呼吸のように、うまく息が吸えていない。



 料理人ゾンビが厨房に続く扉から食堂へと現れた。

 その手には巨大な肉切り包丁が握られ、脂ぎった刀身には血肉がこびりついている。


 逆の手には大きな皿。

 その上には得体のしれない肉が乗っている。


 こちらに血走った目を向けると、にたりと笑った。


「イィィィィトォォォ!」


 料理人は手にした皿をこちらへ投げつける。


「きゃぁぁ!」


 リンは目をつぶって座り込む。

 自律分身がリンをかばうようにトンファーを構える。


 トウコが動く。


「うらっ!」


 拳銃を発射。空中で皿を撃ち落とす。

 皿が砕けて中身が宙を舞う。


 目にも止まらぬ早撃ち! 神業か!


 トウコが前へ出る。

 拳銃を構えて不敵に笑う。


「リン姉……大丈夫。今度はあたしが守るっス!」


 そして食堂へと飛び込んでいく。

 判断が早い!


 拳銃を連射。狙いは正確だ。

 しかし料理人は巨大な肉切り包丁を体の前に掲げて防御する。

 金属が銃弾をはじく音が響く。



 俺も(ほう)けている場合じゃない!

 予定とは違うが、このままやるしかない!


 俺も続いて食堂へ踏み出していく。



「あ……ああ」


 リンはおびえて動けずにいる。

 自律分身がリンに言う。


「リン! 大丈夫だ! 落ち着いて目を閉じるんだ。そして想像しろ! ――ここは俺のダンジョンだ」

「えっ!? ゼンジさんのダンジョン? ……は、はい!」


 リンは戸惑いながらも目を閉じる。


「目の前にいるのはゴブリンだ。いいね? いつも通り指示する!」

「は、はい! あれはゴブリンさん……」


 俺のダンジョンでは、都度指示するかたちで戦ってきた。

 それを想像上で再現するつもりだな!


 ナイスアイデアだ、自律分身()



 リンと自律分身が会話している間にも戦闘は続いている。


 料理人が大包丁を振り下ろす。

 トウコが後ろに飛びのいて躱す。


 包丁が床に打ちおろされ、激しい音をたてる。


 トウコは後ろに飛びながらも銃弾を放つ。

 着地して転がり、リロード。



 ――自律分身はリンの背後にまわり、そっと抱くように体を支える。

 手を添えて、料理人のいるほうへ向ける。


 リンは力を抜いて身をゆだねている。


「ここは六階層だ。むこうから盾持ちゴブリンが来ている」

「はい……来ました」


 リンの表情は落ち着きを取り戻している。


「ちょっとデカいが、なんてことはない。引きつけてから撃つんだ!」

「はいっ! ……引きつけて……」


 リンの手の中に火の玉が生まれ、大きくなっていく。



 一方、俺は料理人ゾンビへと駆けていく。

 手に握っているのはナタだ。


 すれ違うように切りつける。

 防御膜に防がれて、手ごたえは浅い。


 ヒットポイント――耐久力だ!


「ファストスラッシュ!」


 切り付けたナタを返すようにしてもう一撃。

 素早く鋭い斬撃が打ち込まれる。

 浅いが、何度も打ち込めば効果はある!



 トウコがショットガンを放つ。


「うらあっ! ひき肉になれっ!」


 散弾が料理人の太った腹に命中する。

 大きく腹をたわませ、血肉が飛び散る。


「グゥォオ!?」


 苦痛か驚きか……料理人が声をあげてよろける。


 だが倒れない。

 銃で撃った割にはダメージが小さい。

 防御膜に軽減されてしまっている。



 料理人がよろけながら大包丁を振るう。


「グォォォ!」

「食らうかっ!」


 トウコは後ろへ跳び、からくも回避する。


「リロっ!」


 ショットガンを折って排莢する。

 新たなショットシェルを素早い動作で込める。



 リロードの隙を埋めるように自律分身が叫ぶ。


「今だ! 放てっ!」

「ファイアボォール!」


 リンは手を突き出す。

 そして力強い火球を放つ。


 バランスを崩している料理人は反応できない。


 直撃。

 料理人が炎に包まれる。


「グォァァァ!」


 料理人が苦しみもがく。

 だが、炎はすぐに消えてしまった。


 いつもは敵を焼き尽くすまで消えないのに……!


「なんだ? これもヒットポイントのせいか!?」

「そうかもっス! 銃弾もやたらと弾かれるッス!」



 リンが不安げな声をあげる。


「あれ……? 外れちゃったんですか?」


 目を閉じているリンは周囲を把握していない。

 俺たちの驚いた声が届いてしまった。


 とっさに自律分身が方向修正する。


「いや、問題ない! 盾で防がれたが効いている!」

「はいっ! 効いてますね……!」


「そうだ。もう一度集中して――放て!」

「――ファイアボール!」


 再びリンが火球を放つ。

 今回もちゃんと発動した。


 リンと自律分身のペアはうまく動けている!

 いけるぞ!


 火球が炸裂し、料理人はよろめく。

 炎はまた消えてしまったが、体勢は崩した!


「今だっ!」


 俺はこの好機(こうき)を逃さず、さらに攻める。

 壁を蹴って跳びあがり、よろけている料理人の頭部へナタを振る。


 しかし――料理人は無理やり身をよじり、俺に血走った目を向ける。

 あの状態から動けるのか!?


「――グオアァ!」


 空中の俺に向けて肉切り包丁が突き出される。


「させないっス!」


 トウコがショットガンを放つ。

 激しい金属音を鳴らし、包丁の軌道がそれる。


 俺は隙だらけの料理人にナタの峰を向ける。

 身をひねって全力で横なぎに振る。


「――フルスイングッ!」


 ナタが頭部にめり込む。

 生み出されたノックバック効果に、料理人はたまらずに倒れる。


 料理人が叩きつけられ、床板が軋む。

 大きな音とともに埃が舞いあがる。


「ウグオァァ!」


 床に倒れた料理人が包丁を振るう。


「おっと!」


 足を薙ぎ払おうとするそれを、空中に跳んで逃れる。


 飛び退きながらナタを投擲。

 弾かれたナタを手元に引き寄せながら着地する。


 料理人が上半身を起こし、にたりと笑う。


 トウコがショットガンをつきつけて引き金を引く。


「うらあっ! そのまま寝てろっス!」


 散弾の直撃を受けた料理人が再び床に倒れる。

 だが、また身を起こす。


「寝つきが悪いゾンビっスね! 寝かしつけてやるっ!」


 もう一本のショットガンを撃ちこむ。

 再び料理人が床に叩きつけられる。


 至近距離からの散弾が頭部の皮膚を吹き飛ばす。

 血肉が飛び散る。


 ヒットポイントはもう残り少ないようだ。

 いけるぞ!



「ウガァァァッ!」


 だが、料理人はひるまずに肉切り包丁を振り回す。


「うわっと!」

「あぶねっ!」


 俺とトウコは大きく飛び退く。

 料理人が立ち上がる。



 自律分身がリンに言う。


「今だ! 盾を下げたぞ! 焼き尽くせ!」

「はいっ! ファイアボォール!」


 火球が放たれる。

 料理人が包丁を構えてそれを防ぐ。

 だが、炎が膨れ上がり料理人を包む。


「グォォォ――」


 そのとき、料理人が大きく息を吸ったように見えた。


 まずい! これは――


 俺はとっさにナタを投擲する。


 勢いよく回転しながらナタが飛ぶ。

 狙いは顔面。

 咆哮を阻止するんだ――!


 ――よし! 命中!

 狙い通りに(あご)を砕いた!


 しかし――料理人はひるまない――!


「――ウゴオァァァァァ!」


 料理人ゾンビは恐ろしい叫び声を上げた。

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