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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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目を閉じて、火をつける……あぶないよ!?

没タイトルシリーズ

■冷蔵庫に火をつけろ!

■恐怖! リアルお化け屋敷!?

 トウコがゾンビの頭を吹き飛ばす。

 後頭部から体液が噴き出し、床に染みを作る。


 リンが悲鳴を上げる。


「ひえっ! あ、頭から、なにか出ましたよ……!?」


 血っていうか……脳漿(のうしょう)っていうか……。

 うん。グロいね。


「まあゾンビだから……。死体消えないから……」


 説明したけど……実際見ると違うよね。


「も、も、燃やせば消えるんですよね!? ファイアボール!」


 リンはファイアボールを放つ。


 ん? 目をつぶっていないか……?

 あ、でもちゃんと当たった!


 過剰に大きな火球が、ゾンビを消し炭にする。


 床も焼け焦げたな……。

 でも、底が抜けたりはしないようだ。


 後にはドロップアイテム――弾丸が残される。

 それをトウコが拾い上げる。


「弾丸ゲット! アザっス!」


「弾集めのためにやってることだけど、ファイアボールなら一撃でドロップまで行けそうだな」

「なんか、火力がもったいないっスねー」


 倒すから燃やすまでセットでいける。

 死体処理に使うには過剰な火力だ。


「ど、どうですか? 消えましたか!?」


 リンは目を閉じたままだ。

 そんなに見たくないの!?


「リン姉……目つぶったまま戦うんスか……?」


 さすがに無理だろ!

 危ないし、怖いはずだ。


「もう消えたから目、開けていいぞリン」

「あ、開けたいんですけど……なんか、目があかなくて……」


 リンは目を開けかけては閉じている。

 ぴくぴくしちゃってる……!


 怖すぎて目が言うこと聞かないってこと!?


「大丈夫か、リン?」


「だ、大丈夫です。なれると思います……たぶん」


「見ないのに慣れるつもりっスか!?」


 リンはこくこく頷いている。


 目、開けるのかな? 開けないのかな?

 ……大丈夫か?



 二階へ続く階段からゾンビが現れる。

 トウコは銃を向ける。


「次来たっス! うららっ!」


 命中。

 ゾンビが派手に階段を転げ落ち、踊り場へ激突する。


 ――次の死体が完成した。

 リンがおっかなびっくりと言った様子で火を放つ。


 目はつぶったままだった……。



 今は一ウェーブだ。

 この冷蔵庫ダンジョンでは、まとまったゾンビが波のように現れる。


 二ウェーブまで弾丸を集めて、三ウェーブ開始前にボスに挑む予定だ。



 リンが俺の服の(すそ)をつかんでいる。

 薄目をあけて、びくびくと後をついてくる。


「どうしましょう……! やっぱり、ちょっと怖いです……」

「ゆっくり慣れればいいよ」


 こう言っちゃなんだけど……カワイイ。

 保護欲をそそられるというか……。


 ここが遊園地のお化け屋敷なら楽しめるんだけどな。

 周囲は血生臭くて、ぜんぜんロマンティックではない!


 リアルお化け屋敷だ。本物のお化け(ゾンビ)が出る!


 遊園地のお化け屋敷と違って、途中退場はできない。

 死ぬか、クリアするしかない!


 なら、さっさとクリアするのが一番だな!



 しかし、このままでは戦えない。

 というわけで――


「自律分身の術!」


 リンの引率は任せてしまおう。

 いま出しても、ボス戦まで使えるはずだ。


「よう俺! リンは俺に任せろ!」と自律分身。

「よう俺! 任せるぜ!」と俺。


 トンファーを自律分身に手渡して、俺は戦いに向かう。



 俺のダンジョンでは戦うことに慣れはじめたリン。

 自信もついてきたところだ。


 だけど……ここは刺激が強すぎる。

 すぐに慣れろと言うのもムリだろう。


 ゾンビの見た目も恐ろしいが……館の雰囲気からして、恐怖をあおってくる。

 もしかするとダンジョン自体に恐怖を増す効果すらあるかもしれない。


 ウサギやスライムはカワイイ見た目とも言える。

 ゴブリンやコウモリも醜かったり怖かったりするが、普通に受け止められる。


 ――でもゾンビは腐った人間だ。

 腐敗臭を漂わせ、腐った体液をまき散らす。


 倒してもすぐに塵にならないから、死体が転がる。

 生理的な嫌悪感が強いんだ。


 俺だって平気じゃない。ただ慣れただけ。

 何度も死んで、何度も戦ったからだ。



 トウコはもう感覚が麻痺している。


「ははっ! 死ねっス!」


 笑いながらゾンビを撃ち倒していく。


 恐れはない。

 ためらいはない。

 まるでゲームを楽しんでいるようだ。


 長い間、ひとりで戦ってきた。

 心をすり切れさせるしかなかった。

 こんな場所にいたら、マトモではいられない。


 でも今回は一人じゃない。

 これからも一人にはさせない!


 一発でクリアして帰るんだ!


「うりゃっ!」


 俺はナタを投げてゾンビの頭をぶち割り、弾丸をドロップさせる。


「――戻れっ! 引き寄せの術!」


 投げたナタを【引き寄せの術】で手元に戻す。

 武器はこれで充分だ。


 火力はトウコ。俺はサポート。

 リンと自律分身は控えである。



 リンの近くで敵が倒れた場合はリンが処理する。

 俺がやってもいいけど……慣れるためだ。


 練習なんてしないつもりだったけど、状況が変わった。

 リンが動けるようにならないと、はじまらない。


 自律分身がリンを誘導する。


「リン! あそこへファイアボールを!」

「ふぁ、ファイアボール!」


 リンが薄目をあけてすぐ閉じる。

 火球を放つが、今度は小さくて頼りない。

 それでも、死体を焼くくらいはできる。


「よーし、いいぞ!」と自律分身。

「はい……」



 そうして弾丸集めを続ける。

 ――が、リンは魔法の不発が目立つようになってきた。

 威力が強すぎたり弱すぎたり、発動しなかったりと安定しないのだ。



 リンがうつむいて言う。


「あの……ごめんなさい。うまくできなくて……」

「無理しなくていい。苦手なことは、すぐには変えられないさ」


 自律分身がなぐさめる。


 トウコは戦いながらリンに声をかける。


「ここはあたしに任せてくれればいいっスよ! うららぁっ!」

「うん……ごめんね」



 リンの魔法はイメージが重要だ。

 豊かな想像力。強い感受性。思い込む力。

 それゆえに、強力な魔法が使える。


 だけどここでは……それが悪い方向に働いてしまっている。



 コウモリやスライムに比べるとリアルな見た目のモンスター。

 ゾンビ……。


 敵がすぐに塵にならない。

 つまり……死体も血もなかなか消えない。


 悪い想像。嫌悪感。

 ――恐怖。



 千切れたゾンビの腕がリンの足元に転がり、血がはねる。


「ひっ」


 リンの顔色が悪くなる。

 息も乱れて、視線は定まっていない。


 自律分身が声をかける。


「大丈夫か、リン? 落ち着いて深呼吸しろ!」

「はあっ……はあっ……ううぅ……」


「大丈夫っスか、リン姉?」

「すーはー……はあはあ……ご、ごめんなさい……ちょっと気分が悪いです……」


 ……厳しいな。


「リンは休んでてくれ。――トウコ、弾薬はどうだ?」


「拳銃弾はもう集まったっス! でも今回はシャッガンの弾も集めないといけないっス!」


 今回はトウコも装備が充実している。

 ごついブーツ。

 タクティカルベルト。ホルスター。


 拳銃二丁、ショットガン二丁を身につけている。


「じゃ、集めようぜ!」

「でも困ったっス! 一発で一匹倒しても、弾は増えないんス!」


 拳銃弾ならヘッドショット一発。

 弾丸は三発。プラス二発になる。


 ショットシェルでも一発で倒せる。

 頭を吹っ飛ばせばすぐにドロップもする。

 でも手に入るシェルは一発。弾は増えない。


「一発で複数のゾンビを倒さなきゃならないってことだな? ――任せておけ!」

「おっ!? さすが店長エモン! 頼れるっス!」


 ゾンビを集めればいいのである!

 そう、分身でね!

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