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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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VSボス戦! ぶちかませ! 綺麗な花火!?

「うらららあっ! あーっ! イラつくっス!」


 銃撃を続けるが、コウモリへのダメージは小さい。

 ほどんど有効打になっていない。


 空中にバラまいた紙吹雪はもう落ち切ってしまった。

 ボスコウモリは動きのキレを取り戻し、自由に飛んでいる。


「トウコ、残弾は大丈夫か?」

「拳銃弾ならまだまだあるっス! リロッ!」


 つまり、ショットガンの弾は残り少ないわけだな。

 撃ちすぎだ。


 トウコが拳銃を装填する。

 攻撃の手がやむ。


 すると、コウモリがその機を逃さずに急降下して向かってくる。


「――来たわよっ! ファイアウォール!」

「キッ」


 炎の壁が立ちふさがる。

 コウモリは身をひるがえして上昇していく。



 戦況は膠着(こうちゃく)している。


 トウコが射撃している間、コウモリは距離を取って逃れる。

 手を止めるとまた攻撃を仕掛けてくる。


 だが、リンが火球や壁を出すと離れていく。

 やはり、火が苦手なのかもしれない。


 コウモリは最初よりも余裕をもってコースを変える。

 悠々と飛び去って、スキをさらさない。


 もうくす玉(紙吹雪)はない。



「かーっ! なんスかアイツ! 逃げてばっかっス!」

「それでも、じわじわ削ってるんじゃないか?」


 地味な展開にトウコはいらだっているが、俺は悪くない状況だと評価している。

 膠着してみえる状況だが、こちらが押している。


 ヒットポイント。

 いわゆる耐久力。攻撃を防ぐ(まく)のようなものだ。


 冷蔵庫のボスである料理人ゾンビも持っていた。

 まるで攻撃が通用しないように思えるが、ちゃんと減らすことができる。


 攻撃を弾かせたり命中させるたびにすり減っていく防御膜(バリア)

 攻撃は少しずつ敵を弱めている。


「ゼンジさん。このまま続けていれば倒せるんですよね?」

「そのはずだ。頑張れ!」


 俺は二人を励ます。



 しかし……今回のコウモリはいつもより消極的だ。

 逃げてばかりいる。


 俺と戦ったときはもっと積極的に攻めてきた。

 ボスにも個体差……性格の違いがあるんだろうか。


 それとも火を嫌がっているのか?

 飛び道具を警戒しているからか?



 トウコが気を取り直したように銃を構える。


「まあ、ある意味作戦通りっス! 結局は撃ちまくるだけ! ――数うちゃ当たるっス!」


 トウコは拳銃弾を腰だめで連発する。

 もはや狙いもつけない。


 ハズレは多くなるが、たくさん撃った分だけ命中も増える。

 こうやって削っていくつもりだな。

 我慢比べみたいなものだ。


 それを嫌がったのか、コウモリが滑空して攻撃モーションに入る。


「お、釣れたな!」



 トウコが迎撃のためにショットガンを構え――かっと目を見開く。


「ここっス! くらえッ!」


 ――いつもより遠い距離で引き金を引く。


 この距離では全弾命中は望めない。

 だが、やけくその攻撃ではない。


 トウコのショットガンは拡散が強い。

 とにかくばらまかれる!


 まさに、数撃てば当たる作戦!


「キイィッ!」


 これまで繰り返した攻防とは違う距離感に、コウモリが迷うようにコースを変える。


 弾がコウモリの羽をかすめる。

 コウモリはバランスを崩して失速しかけ――


 いや、力強く羽ばたいて体勢を整えた!


 ――そこへ、リンが火球を放つ。


「ファイアボォールッ!」


 だがコウモリにとって火球は遅い。


「キッ!」


 まるであざ笑うように、身をよじってコースを変える。


「ああっ! ハズレっス!」


 だが、まだだ!

 リンの目は諦めていない。


 なにかを狙っている……!



 コウモリは火球をくぐるようにしてリンを狙う――


「今よっ! ――はじけてっ!」


 リンが手を振る。

 コウモリのすぐそばで――火球がふくらむ。


 そして、膨れ上がった火球が弾け――小さな火の玉が無数に飛び出す。


 まるで大玉の花火のように。

 まるでショットガンの散弾のように。


 ――コウモリの間近で、いくつもの小さな火花となって爆発した。


 コウモリの顔面に弾けた火花がぶち当たる。


「ギッ……!」


 顔面を焼き焦がしながらコウモリが墜落していく。

 それを見ながらリンが言う。


「たくさんの弾! 撃たなきゃ当たらない! トウコちゃんの言う通りだわ!」

「顔面にぶち当ててやったっスね! ざまぁ!」


 トウコは、やりいっ! という感じで腕を振る。


「打ち上げ花火のイメージか! やるなリン!」

「えへへっ……うまくいきました!」


 練習なしに実戦でいきなりできるとか、天才かよ!


 この調子なら、俺が練習した槍は使わずに済みそうだな。

 手を出さずとも二人で倒せそうだ。



 コウモリはぶすぶすと煙の尾を引きながら落下し、洞窟の床に叩きつけられる。

 飛膜の一部も焼き焦げて穴が開いている。


 これは効いたな!



 と、その時――コウモリが大きく息を吸う。


 まずいぞ、あの動作は――!


「――超音波だ! 阻止しろッ!」


 俺は短く警告の声をあげる。


「はいっ!」

「ど、どうすりゃいいんスか!?」


 どうすれば超音波を防げるかは俺にもわからない。

 やらせないのが一番の対策だ!


 二人が自力でどうにかできるか……!?


 いや、安全第一!

 経験を積ませるなんて言ってる場合じゃない!


 手を打っておく! 空振りでもかまわない!

 俺が様子を見ていたせいでピンチになるなんて許されない!


 危機感に、俺の脳は高速で回転し始める。



 前のようにコウモリの口中に目つぶし(刺激物)玉を投げ込むには――角度が悪い!


 防御を命じた分身を二体放つ。

 分身は二人のほうへと走っていく。


 さらにコウモリと俺の間を遮るように分身で壁を作る。

 人垣――肉の壁だ。

 これで多少の音を遮ることはできるはず!


 術の連続使用に汗が噴き出す。

 だが俺はさらに次の術を練り――深く集中する。



 警告を受けたトウコはわずかに逡巡(しゅんじゅん)して――銃を構える。

 その銃口はぴたりと迫るコウモリを照準(ポイント)している。


「とりあえず――ぶっ放すっス!」


 迷いを捨て、引き金を引く。

 連射された拳銃弾がコウモリに向かって飛ぶ。


 命中。だが角度が浅く弾かれる。

 それでもわずかにコウモリをひるませる。



 ――それと同時に、リンは両手をコウモリに向けている。


 火球が手の先へ生み出される。

 リンは火球を放たずにどんどん魔力を込めていく。


 火球はリンの全身を隠すほどに膨れ上がり――


「――ファイアボォォォォルッ!」


 特大の火球をコウモリに向けて放つ。


 炎の熱量に空気がゆらめき、風が巻き起こる。

 巨大な火球はうなりを上げて一直線に飛んでいく。


 洞窟が赤く照らし出される。

 離れている俺の顔まで熱くなるような、遠慮のない一撃だ!



 だが、弾速が遅い。

 届かない!


 そのとき、コウモリが叫ぶ。


「キイイイイイイィィィィィ…………」


「っ! 備えろ!」


 音響(超音波)攻撃だ!

 くそ、阻止できなかった……!

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