応用技からの応用技! 変わり身槍衾の術!
本日二回目!
リンとトウコの作戦会議もまとまってきたようだ。
俺は収納の練習を続けている。
「ゼンジさん……難しい顔してなにしてるんですかー?」
「ん? 考えごととスキルの練習だよ」
俺は思索を打ち切って答える。
「棒を出したり入れたりされると気になるんスけど!」
俺は槍を見せる。
「棒ってか、槍だぞ」
「強そうです! 槍でボスと戦うんですかー?」
俺は首を振って、槍をしまう。
「そうじゃない。重くて振り回すのは難しいし、たぶんスキルは乗らないしな」
「分身に持たせるんスね?」
俺は頷く。
「まあ、半分正解だ。収納からとっさに出して使えたらいいなと思って。分身に支えさせたりしてな」
「お? なんかテクニカルっスね!」
「振り回すんじゃなくて、出して構えるってことですか?」
「そうそう。向かってくる敵に、とっさに出した槍をぶっ刺すわけ!」
やってみせるのが早いな。
俺はなにも持たずに、槍を構えるようなポーズをとる。
そのまま、収納から槍を取り出すと――
構えた手の中に槍が現れる。
穂先が前を向き、すぐに突き刺せる状態ってわけだ。
【忍具収納】は謎の空間に手を突っ込んで取り出す方式ではない。
手の中に瞬間的に現れるのがミソである!
さらに取り出し方も自在である。
どの部分を持つか。どの向きで出すか。
イメージ通りに出せるのだ。
これが、瞬間槍衾の術である!
普通は隊列を組んで何本もの槍を突き出すのが槍衾だけど!
他に呼び方がわからないので槍衾である!
「おっ! かっけえっス!」
再度、槍を収納する。
「取り出すまで三秒くらいかかるんでしたよね。その間は動いていても大丈夫だから――」
「その通り! 回避しながら使える。さらに、取り出そうとしてから途中でやめることもできる」
「うっかりポロリはないんスね!」
なんか言い方……。
まあツッコまないでおこう。
「相手の突進に合わせれば、槍がお出迎えってわけだ! こんな感じで! ――変わり身槍衾の術!」
構える。槍を出す。
さらに分身を出して槍を持たせる。
俺は飛び退く。
槍を構えた分身がその場に残る。
これが一連の動作だ。
回避と組み合わせて使う。
応用技をさらに応用したってわけだ。
分身を置いて飛び退く変わり身の術。
槍を構える瞬間槍衾の術。
組み合わせて――変わり身槍衾の術!
槍を持った分身と【入れ替えの術】してもいいね!
「タイミングが難しそうっスね!」
「だから練習してるんだよ。ワニ戦で使いたいが、機会があればコウモリにも使う」
会話しながら、槍を収納する。
「おおー! 必殺技っぽくていいっスね!」
「ヒーローみたいですね!」
トウコからは子供みたいなワクワク感。
リンからは心酔したような熱っぽい視線が贈られる。
「まあ、そういう技があるといいよな。俺の場合は小技の連携が多いけど」
いろんな術や技の連携である。
一発で敵を倒せるような大技はないんだよね。
この技は攻防一体でいいかもしれない。
なんせ、槍という武器がそもそも強いからな。
重さやデカさの問題で忍者的な動きに適さないだけ。
【忍具収納】はただアイテムを持ち運ぶだけじゃない!
攻撃の起点にもできる火力スキルである!
「リン姉は魔法ぜんぶが必殺技っぽいっス!」
「火魔法は全部派手だもんな」
「トウコちゃんはさっきの――うなりを上げて飛べ! スラッグショット! が必殺技ねー!」
リンはにこにことトウコの必殺技――というか一発芸をあげる。
トウコはきまりの悪そうな顔で言う。
「そ、そっスね。あれは普段からやるやつじゃないっス……」
「とっておきの必殺技ね!」
リンが無意識に素直な笑顔で追撃した。
トウコはごまかすように笑った。
さっそく黒歴史と化した黒き銃さん。
ホルスターは普通のショットガンで埋まっているので、ベルトに挟んである。
海賊みたいだな。
この銃にはスラッグ弾が装填されている。
この弾は散弾ではなく、一発の大きな弾頭を発射する。
一発なのでまっすぐ飛ぶし、大きな弾丸は威力も絶大である。
バックショットが鹿弾なら、こちらは熊弾だ。
まさに必殺の威力と言える!
「まあ、俺の槍は練習中だから実戦投入はまだかな。さて、準備はいいか?」
二人が頷く。
二人で話し合っていた戦い方は問題なさそうだ。
「作戦はバッチリです!」
「リン姉とあたしの戦いぶりを見せつけてやるっスよー!」
魔力も回復したし、疲れも取れた。
充分に準備した!
――いざ、ボス戦へ!
 




