ポーション連打で強敵に挑むのは……どうなの!?
簡単な食事と長めの休憩を入れる。
体力や魔力の回復には時間が必要だ。
二人には各種丸薬を飲ませている。
俺は【瞑想】で充分だ。
トウコは丸薬を口に放り込むとけげんな顔をする。
「店長。なんかこの丸薬……しけってないっスか?」
「え? 変な味するか?」
今日作った新品ってわけじゃないけど……。
そう古いもんじゃない。
「いや、味は変わんないんスけど……」
「効果が感じにくいってことかなあ? 私もそう思ってましたー」
作り置きした薬は薬効が弱まる。
現実の薬にだって使用期限はあるけど、【薬術】で作ったクスリは、足がはやい。
スキルや魔力を使っているからかと思っている。
床に置いたアイテムが塵になって消えてしまうように、少しずつ揮発するのかもしれない。
密閉した瓶にしまっているが、多少の劣化は避けられない。
早めに使い切るのが一番だし、なるべく新しく作るのがいい。
「そうっス! さっき食べたのより弱いっスねー」
さっきの丸薬と作った時期は同じだ。
悪くなってるはずはない。
いや、まてよ……。
ああ、そういうことか。
思い当たるふしはある。
「たぶん、間を開けずに二個目を食べてるからだな」
「えっ? たくさん食べちゃダメなんですか?」
ちょっと悲しそうなリン。
いや、量っていうか、時間の経過。
食べたければ普通の兵糧丸をお食べ!
俺はリンに丸薬を渡す。
リンは笑顔になる。
俺は話を戻す。
「同じクスリを連続で飲むと効果が弱まるっぽいんだよ」
「スキルの再使用可能時間みたいなもんっスかね?」
「たぶんそうだ。体がクスリを受け付ける限界があると思う」
「お薬ばっかりに頼れないんですねー」
俺は魔力と体力は【瞑想】で賄っている。
ケガはあまりしない。
クスリを連続で使うのは稀だ。
「ポーションも同じっスか?」
「試したことはないけど、そうなんじゃないか? ポーション連打でゴリ押しするのはムリだと思う」
試してないのはもったいないから。
あと、ケガしないと試せないから。
ポーションを何本も使って戦う状況……ヤバすぎるだろ。
そうなる前に逃げるべきだな。
「いざというときに効かないとヤバイっすね!」
「治癒薬は特にそうだな。無駄打ちはしないほうがいい。魔力回復なら大事故はないけどね」
効果がなくなるわけではないが、半減してしまう。
さらに連続で使えば効果はもっと減る。
リンは申し訳なさそうな顔で言う。
「困りましたねー。まだまだ魔力が足りないです……」
「戦闘や検証で魔力をたくさん使わせたからな」
「あたしの疲れは取れてきたっス。でも、もうちょい休憩っスねー」
攻略のテンポは悪くなるが、無理して進んで事故りたくない。
ゆっくりするのも悪くない。
魔力の自然回復はかなり遅いのだ。
だいたい一時間で最大値の一割くらいだ。
明日に差し支えるから、そんなに待っていられない。
でも、じっと待つ必要はないのだ!
「同じクスリじゃダメだが、回避策はある!」
「おっ! どんなっスか?」
「簡単なことだ――違う丸薬を使う! リン、これ食べてみて」
同じクスリは効果が弱まる。
しかし丸薬にはバリエーションがある!
渡したのは強力魔力回復丸だ。
普通の丸薬のほかに、効き方を選べるのだ。
「あっ! 今度はちゃんと効いてます! ぽかぽかしてきましたー」
「普通の丸薬のほかに即効、遅効、強力の丸薬があるんだ。なんとこれは別アイテム扱い!」
材料も効果も似ているが、別アイテム扱い。
回復アイテムを何度も使えるわけだ!
「うわあ、せこいチートっス!」
「せこいって言うな! 巧妙と言え!」
チートじゃなくて創意工夫である!
トウコはあきれ顔だ。
対して、感心したような顔でリンが言う。
「さすがですね! 先生!」
「うむ!」
素直にほめられたほうが嬉しいね!
トウコがリンのマネをして言う。
「さすがっス! センセー!」
「ちょっとバカにしてるだろ、お前……」
トウコは舌を出した。
てへぺろじゃねーわ!
「じゃあ、作戦立てましょうか!」
「二人で話し合ってみてくれ。俺は必要なら助言するから」
「リョーカイっス!」
二人は意見を出し始める。
こういうのも練習だよね。
トウコはほっといてもしゃべるんだけど、リンは会話は苦手気味だ。
オタク系ボッチと奥手系ボッチとの違いだな。
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