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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
四章 副業は公儀隠密で!

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無詠唱魔法と厨二病長文暗唱!?

 俺たちは四階層を進んでいく。

 並び順はそのまま。リン、トウコ、俺の順。


「そういやリン、試してもらいたいことがあるんだが……」

「はい先生っ!」


 リンがいい返事を返す。

 って、博士と助手の実験ごっこ続いてるー!?


 トウコがけげんそうに片方の眉を上げて言う。


「なんスか? センセーって?」

「いや……」

「お昼にスキルの実験してたんですよー。私は助手してたんです!」


 おうふっ!?

 ごまかそうとする前に堂々と公表された!


 トウコはジト目を俺に向ける。


「ふぅーん? 昼間っから二人で楽しそうっスね。センセー?」


 ヤメロ!


 白昼堂々、ごっこ遊びしていてもいいだろう!?

 ……ダメかな? アウトかな?


「――さて、リン。試してもらいたいのは無詠唱魔法だ。声に出さないでファイアボールを出してみてくれ」


 話題を変えよう。


「はいっ! あっ!? 声出しちゃいけないんでしたね」

「今はいいと思うっスよ!」


 リンは黙ったまま湖面に手のひらを向ける。

 手の中に炎が膨れ上がる。


「……」


 無言で火球が飛んで、湖面(こめん)へ激突する。

 小さな水しぶきを上げて、火は消えた。


「できたな! ナイス!」

「リン姉……まさか無詠唱魔法をッ!?」


 トウコは大げさに驚いて見せる。

 こやつ、基本的リアクションを心得ておる!


 しかし……普通に無詠唱魔法ができてしまうのか。

 すげえな!


「え? ええ? ヘンでしたか!?」

「いや、お約束というか……漫画とかでは無詠唱――無言で魔法を使うのはスゴイってことになってるんだ」


「なんですごいんでしょうか?」

「ツワモノ感が出るんス。普通みんなできない感じで……なんでスゴイんスかね。店長?」


 なんとなくスゴイ……ってわけじゃない。


「そりゃ、声に出さなくていいからだ。バレないし、早い。口をふさがれたら魔法が使えないんじゃ困るだろ?」

「それは困りますねー」


 呪文を叫べば、当然バレる。不意打ちはできない。

 詠唱から効果もわかって対策される。


 魔法じゃなくても技名を叫ぶのもどうだろうね。

 俺も分身の術! とか言うけどさ。


 声出したほうが、気合が乗る。

 ちょっとだけ、気持ちとか勢いも影響するからな。

 意味はあるんだ。


 当然だけど隠密行動中は静かにしている。

 叫ばずとも術は発動できる。


 いわば、無詠唱忍術だな。

 印を結んだり巻物をくわえたりしない。


 そう思えば、無詠唱忍術もスゴイかも。



「銃で考えたらサプレッサーって感じっスね」


 銃声を小さくするのがサプレッサーだ。

 詠唱とは関係ない。


「近いような違うような……」

火縄銃(ひなわじゅう)よりサプつきサブマシンガンのほうが強い感じっスよね?」


 銃で例えるのにこだわるね!?


「ちょっと近いかな。火縄銃は一発ずつ弾丸を込めるから時間がかかる。サブマシンガンならすぐに連続で撃てる」

「わかった気がします! 早いから強いんですね!」


 リンが頷いた。

 銃の説明でも伝わったな。


「そうそう。長い呪文を唱えないと魔法が撃てないなら、早口言葉練習しなくちゃな」

「それはたいへんですねー」


「セリフを噛んだり、邪魔されたら魔法が使えない。沈黙魔法なんてかけられたら終わりだぞ」

「無詠唱ならいつでも使えるっス!」


 魔法使いは口を閉じられると無力になる。


 長い詠唱ほど強い設定なら、早口言葉合戦みたいになるのだ。

 それを解決するために早口言葉を極めるヤツが現れる。

 高速詠唱。カッコいい響きだ。


「で、高速詠唱とか詠唱短縮とか詠唱破棄とかが発達するわけ」

タイパ(タイムパフォーマンス)のいい魔法っスね!」


「時短ですね。ああ……だから無詠唱なんですね!」


 動画の倍速視聴とか切り抜き動画みたいなものかな。

 ファスト映画とか。

 情緒というかロマンというか……なにかが失われている気はする。


 ともあれ、途中を省略して結果だけ得る。


「そうだ。呪文を唱える工程を短くする。なくす。だから早くて強い!」

「よくわかりましたー!」


 リンは納得してくれたようだ。


「でもあたしは長い詠唱好きなんスけどねー」

「アニメで見る分には俺も好きだぞ。実戦では使えないと思うが」


 長い詠唱にも良さがある。

 ――ロマンだ。


「え? どういうことですか?」

「昔は長い詠唱が流行ってたんス!」


 昔のアニメでは長くて大げさな呪文の詠唱があったものだ。

 厨二病(ちゅうにびょう)にはたまらない。


 最近はすたれてしまったなあ……。


「長い詠唱ってどんな感じですか?」

「うーん。どんなって言われても……例をあげるのは恥ずかしいんだよな」


 好きなアニメの詠唱は暗記してたりするけどな!

 大人になったらなかなか……。


「じゃあ、試しにやってみるっス!」

「まさか……やる気か!?」


 いい年してアニメの長セリフを暗唱する気か!?

 いや、トウコは女子高生だから許されるのか?


 トウコが両手を振り回してポーズを決め――なぜか片目を閉じる。


「わが手の中に現れるは地獄(ヘル)黒き鉄(ブラックアイアン)――銃の支配者(ガンマスター)の名において命じる(オーダー)! 出でよ黒き銃(ダークバレル)!」


「なにい!? オリジナル詠唱(スペル)だとぉ!?」


 アニメのセリフをやるのかと思ったわ!

 しかも日本語詠唱タイプ!?


 ぶつぶつとつぶやくトウコの手の中に――黒いショットガンが生み出される。

 銃身には大仰な刻印が施され、高級感――いや厨二(ちゅうに)感満載だ!


 それをくるくると回してもったいぶってから、びしりと構える。


「わが指先は命の灯火(ともしび)を吹き消さん! うなりをあげて飛べ――スラッグショット!」


 トウコが引き金を引く。

 黒いショットガンが轟音を上げ、弾丸が放たれた。


 別に誰の命もかき消さず、水面に穴をあけた。


「わあー。かっこいいねー!」

「でしょでしょ! リン姉もやるといいっス!」


 リンには刺さったらしい!

 黒とか地獄とか支配とか……ロマンあふれるワードだよな。


「おススメすな! ……実戦でやんないでよ!?」

「え? 詠唱魔法ってすごいんですよね? 私よりトウコちゃんの時のほうが驚いてましたし!」


 違う種類の驚きだわ!


「いやいや! 驚いたけども! それはトウコのアホさに……」

「店長ひどくないっスか! センセー!?」


 お前もひどいよ! 忘れろよ!


「無詠唱のほうが凄いんだって!」

「そうっス! お楽しみと実戦は別っスね!」


 実戦で長々と呪文唱えてたら間に合わないしね。

 ポーズつけてる場合じゃない。


「えーと。私はこれから詠唱しないほうがいいんでしょうか?」


 リンは困惑気味だ。

 脱線しすぎてよくわからなくなったな。


「ああ、ごめん。やりやすいようにやってくれ!」

「じゃ、かけ声ありにします!」


 チームプレイでは、短いかけ声はあったほうがいい。


「無言だと連携しにくいっス! 声出して――あえぎ声だしていきましょう!」

「はーい!」


 リンは後半をスルーした。

 でもトウコはめげなかった。


「あぁん! リン姉はいけずっス!」


 ひとりノリツッコミみたいな自己完結しよる!

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