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社畜辞めました! 忍者始めました! 努力が報われるダンジョンを攻略して充実スローライフを目指します!~ダンジョンのある新しい生活!~  作者: 3104
一章 ステイホームはダンジョンで!

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うるおいの時間。約束があるって素晴らしい!

マスクをしている前提ですが、表情を読み取れる謎。

目元や雰囲気、声色から察しているのでしょう。

 オトナシさんはピンク色のマスクをしている。

 俺は黒色マスクだ。

 ヒゲが伸びていることもバレないだろう。


 マスク越しでも表情はある程度分かる。

 だけど、生の表情が見られないのはもったいないな。


 まずは昨日いただいた肉じゃがのお礼をする。


「昨日の肉じゃが、うまかったです! ちょっと泣きそうになったくらい!」

「えっ! そんなに……?」

「そりゃもう! 味といい、あたたかさといい、最高でした! ごちそうさま!」

「わあ、そんなに喜んでもらえたなら……私もうれしいです!」


 俺は思いつく限りの賛辞を贈る。

 俺の語彙(ごい)では伝えきれない。でも、こういうのは気持ちだ。


 おいしかった。ありがとう。

 そういう感謝が伝わればいいんだ。


 オトナシさんは喜び半分、恥ずかしさ半分といった表情だ。


 その顔を見て、心が温まる感じがする。

 ああ、うるおう。癒される。


 これだよ。俺に足りないのはうるおいだ。

 オトナシさんの癒し成分が俺の心を満たす。


「そういえば朝の時間の約束してませんでしたね。すみません、オトナシさん。もしかしたら、お待たせしてしまったんじゃないかと……」


 いつもはゴミ出しのタイミングで話していたからな。

 ゴミ出しなら大体八時前くらいだ。


 収集日じゃないと、タイミングを合わせにくい。


 毎朝何時、みたいに約束すれば……毎日会えるじゃないか。


 探索で荒んだ心を癒してくれる。

 心のオアシス、オトナシさん。


「……いえ。私もうっかりしてました。なので、今日はサンドイッチにしてみました!」


 じゃじゃーんと、弁当箱を取り出すオトナシさん。

 少し恥ずかしそうに頬を染めているのが高ポイントだ!


「おお、いいですねサンドイッチ! 弁当にもできますしね」

「あ、今日はお仕事ですか?」


 あ、やべ。


 家から外へは出ないんだ。

 弁当ってなんだって話。


 ダンジョンへ潜っていることは、秘密だ。

 バレるわけにはいかない。


「いや、お仕事ではないです。……ちょっと、やりたいことがありまして」

「……? そうですか。やりたいことができるっていいですよね!」


 よかった。深く追及しないでくれた。

 ええ子や!


 どうも歯切れが悪くなってしまう。

 仕事を辞めたとはまだ、言っていない。

 別に言わなくてもいいことなんだけど、なんとなく気が引ける。


 前に「仕事を頑張っている姿を尊敬している」みたいなことを言われたんだよな。


 今は働いてないでーす。なんて言えるだろうか。

 失望しました! とか言われたら泣いちゃう。


「うん、まあ。有休もたまっていたから。長期の休みを取ったんですよ」


 嘘ではない。有休は申請している。

 そして有休はあふれて消えるほどに持っている。


 これまでほとんど使ったこともなかった有休休暇……。

 言葉の上だけでも役に立ってくれたな!


 そうか。有休制度って今日このために存在していたのか!


「お休み取ってるんですね。……無理は良くないですから」

「そうですね。無理は良くない!」


 笑顔でうんうんと頷く俺。

 毎日、ダンジョンの中で無理をしているとは言えない。


「無理はよくないですよね……」


 彼女の表情は少し暗い。

 何か言いたいことがあるのだろうか。


 やっぱり、待たせてしまったんだろうか……。

 無理して気にしていないふりをさせてしまったか。


「……オトナシさん、どうかしました? もしかして、待たせてしまったから?」

「い、いいえ。時間は約束していないので、勝手に早起きしてただけです。そうではなくて……」


 待ってたーッ!

 でも、それは関係ないっぽいな。


 オトナシさんは言いよどんで、うつむいてしまう。


「そうではなくて……?」


 彼女は迷ったような表情を浮かべていたが、意を決して口を開いた。


「じゃあ、今度……。その、相談に乗ってもらえますか? あ、お時間のあるときで」

「相談ですか? 俺なんかでよければいつでも。今からでも聞けますよ」


 何か困っているなら、力になりたい。

 解決できないことでも、話を聞いてあげるだけでもいい。


「……よかった! でも、今日はちょっと。考えをまとめないとすぐには話せないので……」

「じゃ、準備ができたら声をかけてくださいね。遠慮はいりません」


 そういうと、彼女の顔色は少し良くなった。

 何か込み入った話なんだろうか。


 今はそれを無理に聞くことはできない。

 彼女のタイミングを待つしかないだろう。


「あ、そういえば。明日の時間決めましょう。八時でどうですか?」

「はい。その時間で。明日はなにを作ろうかな……」


 そういえば、明日は俺も一品作ろう。

 仕事ではしょっちゅうやっていたことだ。

 作ってもらってばかりでは悪いしね。


「あ、明日は俺も何か作りますね。タマゴ料理にしようと思いますが、嫌いじゃないですよね?」

「あ、クロウさんは飲食店にお勤めでしたね。わあ、それは楽しみです。じゃあ私は野菜を使った料理を考えておきます」


 そう答えて笑う彼女の表情は、明るいものに戻っていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 日本人が、マスクをしても、人間関係を築けて、意思の疎通を出来るのは、『目は口ほどにものを言う』からだそうです。 外国で育った人には出来ないそうです。 赤ちゃんは、目で、親を判断するの…
[一言] ひゃっはー したら、間に合わなくなるから注意(//∇//)
[一言] 機械式時計ならダンジョンでも動いてくれそう。
2022/09/02 16:43 退会済み
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