銃でガンガン行くスタイル! タクティカルベルトとショットシェル!
俺のダンジョンの構成や敵、ボスについては説明した。
ボスコウモリ以外は三人ならどうとでもなるだろう。
事故がコワイのでポーションは各自二本持っておく。
【忍具収納】内にはポーション手拭いもある。
ケガしても安心だが、そもそもケガをせず済ませたい。
治るからってケガしていいわけじゃないのだ。
ポーションがどこまで治せるかはわからない。
骨が折れても肉が裂けても治せることはわかっている。
だが、それ以上の重大なケガが治せる保証はない。
はたして臓器が破壊されたり、腕がもげたりしても治せるものなのか……。
なにしろ、即死したらどうしようもないんだ。
俺のダンジョンでは復活する保証もない。
死んでそれきりかもしれない。
「……店長、もうわかったっス! 小言が長いっス!」
「トウコちゃん。心配して言っているのよ?」
クドいかもしれないけど、何度でも言う。
「さて、んじゃあ安全第一で行くぞ!」
「はーい」
「さくっと行くっスよー!」
一階はトウコを先頭にして進む。
これは事前に打ち合わせて決めた。
ボス戦はリンをメインにして、トウコも戦う。
ザコ戦はトウコのみで進む。
俺はバックアップだ。危険があれば対処する。
「さて、トウコのお手並み拝見だな」
「あたしのダンジョンに比べたら余裕っスよ!」
言いよる。
「油断しちゃだめよ。トウコちゃん」
「へいへい。わかったっスよー」
俺のダンジョンは冷蔵庫に比べて安全に思える。
だが、あんまり舐めてはいけない。
危険がないわけじゃない。
薄暗い洞窟の岩肌を俺が持つ松明が照らす。
さっそく、ゴブリンが現れる。
「あ、ゴブリン発見っス! ていっ!」
トウコが抜き撃ったピストルの弾丸が脳天をぶち抜いた。
速い。容赦ない。
ゴブリンはなにもできずに倒される。
脳天へ一発。それだけで塵となる。
そして【弾薬調達】で三発の弾丸を落とす。
これはゾンビと変わりない弾数だ。
このダンジョンでも弾丸の生成は有効なようだ。
リンが拍手を贈る。
「倒しました! トウコちゃんスゴイです!」
「ゴブリンちょろいっスねー! 楽勝っス!」
「ここのゴブリンは一匹ずつしか出ないから余裕だな」
ゾンビは同時に多数で現れた。
ゴブリンは単独である。
この点もトウコには有利だな。
こうして、ゴブリンを見つけては射殺しながら進んでいく。
もう戦闘とすら呼べない。
ゴブリンが気付いてこちらに向かってくる前に撃ち倒す。
冷蔵庫のゾンビの場合は死体を破壊しないとドロップアイテムが得られなかった。
ここでは倒せばすぐ塵になり、アイテムが得られる。
一工程少なくて済むってわけだ。
だから弾丸が不足することもない。
トウコは拾った弾丸をダンプポーチに入れていく。
ポケットより取り出しやすそうだ。
ダンプポーチは主に撃ち終わったマガジンを入れるのに使われるイレモノだ。
美容師の使うシザーバッグや、ボルダリングで使うチョークバッグに似ている。
マガジンも買ったら高いし、使い捨てにしないのだ。
しかしトウコは自動式拳銃の弾倉を使わない。
というか、使えないのだ。
なぜなら【弾薬調達】では弾倉が出せないからだ。
トウコが自動式拳銃を出しても、スペアのマガジンがない。
だから、撃ち切ったらマガジンを抜いて、そこに弾を一発ずつ込める必要があるのだ。
これは困ったものである。
俺がそんなことを考えている間も、トウコは銃を撃ちまくり楽しげだ。
ハイペースでゴブリンを打ち倒して一階を走破した。
「うははーっ! 無双っス! こりゃ楽しいっス!」
「なんていうか……銃ってズルいよな」
「一方的ですねー」
勢いのまま、二階へと向かった。
二階を進み、コウモリを発見した。
天井で休んで寝ている。およそ十匹。
俺たちは距離を取って小声で会話する。
「これがウワサのコウモリっスかー。たしかに顔がコワいっスねえ……」
トウコがうえっと舌を出す。
スキルで強化された目でコウモリの表情まで見えているようだ。
俺は【暗視】はあるけど遠くはよく見えない。
あんまりコウモリの顔なんて見たくないね。
「ね。コワいでしょ? しかも飛ぶの!」
リンが力説する。
そりゃ飛ぶでしょうよ。コウモリなんだから。
でも飛ぶ生き物って怖いよね。
「このくらいの距離なら寝てるから安心だが、飛ばせると面倒だぞ」
俺なら手裏剣をまとめてぶん投げるショットガン投法で倒す。
リンならファイヤーボールで焼き払う。
トウコなら――
「んじゃあシャッガンの出番っスね! うらあっ!」
トウコがホルスターからソードオフショットガンを抜いて構える。
間髪入れずに射撃。
轟音をあげ、散弾を放たれる。
切り詰められた短い銃身にはチョークがない。
普通のショットガンよりも、散弾の小さな粒は拡散して飛ぶ。
空中に飛び散った散弾が、天井のコウモリの群れへと殺到する。
「キィッ!」
「ギッ!」
――ゴガン!
弾丸が洞窟の壁を打つ派手な音が響く。
散弾とはいえ、ほとんど音はバラけない。
コウモリたちが散弾を受けてまとめて吹き飛び、塵となる。
――だが、数匹は無傷だ。
散弾は狙った位置へ飛ばない。
ゲームのように範囲内のすべての敵に当たりはしない。
拡散した分、集弾率は下がる。
命中する数が減る。
「なら――もう一発っス!」
トウコがもう一方の手でショットガンを構え、発射する。
両手持ちだ。
放たれた弾丸が飛び立った数匹をまとめて捉える。
パッとコウモリの体に小さな穴が開き、塵へと変える。
「お? さっきとは違うな?」
「バードショット弾っス! 弾丸は選べるんスよ!」
そういうことか!
最初に撃ったのは一般的なバックショット弾だろう。
鹿弾なんて呼ばれたりもする。
動物や対人で使うサイズだ。
ペレットは十粒前後。
一発一発が拳銃弾並みの威力になるらしい。
「ばーどしょっと?」
リンが首をかしげて聞く。
「鳥撃ち弾っス! ちっちゃいツブをたくさんまき散らすんスよー」
ペレットは数十から数百粒。
貫通力や一発の威力は低い。
しかし数が多い。
飛んでいる鳥――コウモリには最適だろう。
コウモリは耐久力は低いので、当たれば倒せてしまう。
トウコのスキルではショットガンの場合、ショットシェルの種類も選べるようだな。
便利じゃないか!
それにしても、やたらと広範囲に弾がバラけるなあ……。
「しっかし、銃はえげつないな!」
「ホメ言葉っスね!」
トウコはドヤ顔で銃を装填してホルスターへ納めた。




