爆発物はダメ。だけど焼夷弾はオーケー?
本日二話目!
「――というわけで、毒や薬、爆弾は作れないし収納できないようだ」
「きびしいですねー」
【忍具作成】では作れず【忍具収納】にしまえない。
忍具ではないからだ。
「でも火炎瓶はオーケーだ! 冷蔵庫の中で酒から作ったしな」
「あれっ? それは大丈夫なんですねー」
忍者は火付けを得意とする。
火炎瓶や着火剤は忍具に違いない。
爆発と火炎は別の属性なんだろうな。
「爆発物は作れないけど、原始的な焼夷弾はアリ。火付け具扱いかな?」
「しょういだん……怖そうですね」
人間火炎放射器のリンさんに言われましても!
魔法のほうがよっぽど火力が出るんだよな。
「サラダ油を原料にしてもちゃんと燃える火炎瓶が作れちゃう不思議!」
「料理に使う油って簡単には燃えませんからねー」
天ぷら油を火にかけ続ければ高温になって燃え始める。
火事に注意だ。
「関係ないけど、フライパンに火をつけるアレって意味あるのかね?」
「フランベですか? あれは香りをつけるためにやるんですよー」
へえー。
うちの店ではそんなオシャレな料理は出してない。
ファミレスだからな。
引火点が高いので植物油は普通の火炎瓶には適さない。
ガソリンや灯油を使うのが一般的。
でも【忍具作成】君なら酒や植物油からでも作れちゃう。
クラフトの過程で謎の可燃性物質に変換されている!
便利! スゴイ! さすが心の友!
「デカい油壷とか樽を用意すれば火計がはかどる!」
「かけい?」
「火攻め、焼き討ちだな。忍者的には火術、火遁の術って感じ」
「かっこいいですね!」
火術は火を扱うこと全般だ。
火をつけたり、持ち歩いたり、照明に使ったり。
火遁の術は逃げるために火を使うことだ。
煙や火に紛れて姿をくらます術である。
遁術は逃げる術。
「といっても火はリンがいれば足りてるけどね」
「ふふっ、火をつけるのは頼りにしてください!」
お、めずらしく自信ありげな発言!
いい傾向である。
「ワニ対策に火攻めはありかもしれないな」
「でも、川に逃げちゃうんじゃないでしょうか?」
第五エリアのサバンナは雨季である。
霧のような雨が降っている。
あたりまえだが、火は水で消えてしまう。
だけど天ぷら油に火がついても水は入れてはいけない。
飛び散って危ない。
「雨も降ってるしな。まずは第四エリアに呼び込んで戦うか?」
「そうすれば乾燥してますし、よく燃えそうです!」
第四エリアは乾季なのでカラッカラに乾燥している。
水辺で戦うより勝算が高いだろう。
「でも、エリアを移動させて大丈夫かな?」
「えっと……ボスだから移動しないってことでしょうか?」
リンは自信なさげに言う。
まだボス戦の経験がないからな。
遠目にワニを見ただけ。
苦手意識がある。
その対策のために今晩、コウモリでボス戦の予習をする。
自信をつけてもらいたい!
「いや、たぶん移動してくると思う。ボスは移動できないなら、むしろ好都合だ。エリア外から射殺で余裕になる」
スライムやウサギで試した限りでは、別エリアから攻撃すると逃げたり追ってきたりする。
自発的にはエリアを越えない。
追い立てたり、呼び寄せればエリアを越えてくる。
一度エリアを越えれば、そのエリアに居続ける。
別のエリアでは暮らせないなんてことはないようだ。
「あっ! 第四エリアに入ってきちゃうから困るんですね?」
「そういうこと! あのワニが第四エリアに住み着いたとしたら……」
「あぶないですね! 近くに来ちゃいます!」
拠点である第一エリアに近づくことになる。
そのままエリア移動を続けて第一エリアに到達されたら……詰む。
拠点を破壊されたり、出入り口を押さえられたらおしまいだ。
入った途端にやられる、なんてムリゲーになってしまう。
それだけじゃない――
「それに第四エリアのほうがエサが豊富かもしれない。第五エリアにもウサギはいたけど、少なかった」
「ワニさんが食べて減っちゃったのかもしれませんね……。第四エリアでご飯がたくさんあったら……」
第五エリアのモンスターはワニに捕食されて数を減らしている。
モンスターは自然に湧くが、狩りすぎると数が減る。
手つかずの第四エリアにはエサがたくさんある。
「ワニがもっと力をつける可能性があるってことだ。だから、おびき寄せるなら確実に倒さなくちゃな」
「はい……。怖いですね……」
成長するのは俺たちだけの特権じゃない。
ステータスもスキルもあるだろう。
経験値やレベルだって、モンスターにも存在する。
今でさえ勝てる気がしないワニ。
これ以上、育ってもらっちゃ困るのだ!




