ポーション玉は作れるか試してみた! ……結果、残念なことに!?
本日二話目!
ポーション玉とは――ポーションを容器に入れた投げモノだ。
投げモノは忍具である。
目つぶし玉や煙玉は文句なく忍具である。
ポーションは忍具ではない。
だが、水や砂、ゼリーは忍具ではないが投げモノに加工できる。
よって、水薬であるポーションも投げモノに加工できるはずだ!
ポーション玉の材料は、ポーションと空のペットボトル。
さあ! 世紀の大発明、ポーション玉を開発するぞ!
これを発表したら……忍具学会が激震することだろう!
忍具史に残る奇跡の発明品となるかもしれない!
ないわ、忍具学会なんて。
なんだよ、忍具史て。
さて! スキルにイメージを伝える!
ペットボトル玉の中にポーションの中身だけを充填するイメージ。
これは忍具……これは忍具……!
「ポーション玉――忍具作成!」
――あれっ!?
「ダメだ! 作れないぞ!」
「ええっ!? ダメなんですか……そんなあー」
リンが落胆した様子で肩を落とす。
イメージや材料を変えて試してみるが、どうしても作れない。
ポーション玉は【忍具作成】で作れないのか!?
頑張れ! 【忍具作成】君!
君ならできる! できるんだ!
……反応なし! 見向きもしない!
「こりゃあムリだ……。ポーションは忍具じゃない。たとえ玉に加工してもダメだ」
「水玉とかゼリー玉はいいのに……どうしてかなあ……」
リンはしょんぼりしている。
いい思い付きだったのになぁ。
「ポーションが特殊過ぎるのか? ファンタジーすぎる品物だし……ううむ」
「魔法のお薬だからダメなんですか?」
魔法か……。
ポーションは魔法のアイテムと言える。
だから扱いが違う?
「マジックアイテムだから? んー、ありそうだなあ。だけど【薬術】では薬草を加工できたぞ」
「薬草丸ですね」
スキルで薬草を加工して薬草丸をクラフトできている。
ダンジョンで手に入る薬草は、超自然的な回復効果がある。
ただのハーブではない。現実世界の草花とは違う。
れっきとした回復アイテムなのだ。
「つまりマジックアイテムは加工できる」
「そうですか。――あれ? 薬草丸は【薬術】で作ったんですよね?」
「うん」
「だからですよ! お薬は【忍具作成】じゃなくて【薬術】で作るんですよ!」
ああ、クスリだからか!
言われてみれば当たり前だ。
「そりゃそうだよな! たしかに薬を作るのは【薬術】の仕事だ」
「つまりお薬は忍具じゃないんです……」
ポーションはクスリである。
つまり【薬術】の領分だ。専門分野だ。
【忍具作成】君が無能なわけじゃない。
無理やり作らせようとしてもできないのだ。
すまんね! 【忍具作成】君!
流れでなんでも作らせようとしてた!
「そういうことになるな」
「あ、でもそうすると……【薬術】でポーション玉を作れるんじゃないですか?」
「ああ、やってみよう!」
「作れるはずですよね……!」
リンは真剣なまなざしで俺の手元を見つめている。
【薬術】ちゃん……頼むぜ!
しかし、作成可能な薬のリストにポーション玉は現れない。
なんでよ!? 薬だよ!?
【薬術】ちゃんの専門分野のはず!
……うーん?
なんとなく【薬術】から申し訳ない雰囲気が伝わってきた。気がする。
薬だけど作れない。力量不足。
「あー。スキルレベルが足りないかな? 薬草は加工できてもポーションは加工できないんだ……」
「スキルってそういうのわかるんですか?」
「【薬術】ちゃんからそういう雰囲気が伝わってきて――」
「やくじゅつ、ちゃん?」
やべ。心の中で考えてることがもれた!
ていうか最近俺、ダダもれだぞ! 忍べ!
「……スキルに集中すると、なんとなく伝わるものがあるんだよ」
「そうなんですねー! 私もシステムさんとわかりあえてきた気がします!」
システムさんとの理解が深まったりしてるんだ?
不愛想に思えるタコウインナーさん。
あれでもマシになってきてるんだろうか。
ちょっとだけ融通が利くようになってきたかもしれない。
しかし、システムさんは実際いる。
対話する機能があるスキルだ。
薬術ちゃんは……。
「うん……。たぶんそういう感じ……」
「薬術ちゃんは見えるようにできないんですか?」
うぐぐ。
リンの純粋な目が俺を追撃している!
俺の脳内にしかいないよ!
イマジナリーフレンドだよ!
アバター機能なんてない!
ボッチ期間が長すぎてスキルとお話してしまう癖がついたのだ。
なんなら自分とも対話しちゃうのだ!
「できないなあ……」
「そうですか……残念」
俺も残念だよ!
というか残念な奴だよ!
 




