【忍具収納】の裏技!? 欺け! 持ち出せ! しぼりだせ!
リンが化粧カバンにストックしているポーションを持ってくる。
ポーションを受け取る。
「で、こうだ!」
俺は手に持った三尺手拭いにポーションを振りかける。
リンが驚きの声をあげる。
「えっ!?」
「手拭いを濡らしているんだよ。しみ込ませているんだ!」
手拭いはポーションで濡れ、水滴が滴っている。
「濡らす……? あっ! そういうことですね……!」
「濡れていても【忍具収納】は可能! つまりこれでポーションを収納できるはずだ! ――収納!」
手の中からポーションを浸した三尺手拭いが――
「消えました! しまえましたね!」
「よし! 勝ったッ! 長い戦いを征したんだっ!」
とりあえずここまでは予想通りだ!
ポーションを収納できた! 抜け道である!
ポーションは揮発性が高い。
塵化に近いかもしれない。
飲み切らずにおいておくとなくなってしまう。
ちょい飲みして残すことはできない。
こぼれて手についたポーションはすぐに手にしみこむ。
手に吸収される感じだ。
ポーションは皮膚から吸収される。
飲んでも喉ですぐ吸収される。
口に含んで飲まないでおくことはできない。口中で吸収される。
小さな小瓶なので量はないが、仮にたくさん飲んだとしても腹は膨れない。
布にしみ込んだポーションは揮発が少し遅い。
即座に消えてしまうわけじゃない。
さらに肉体に触れていないから、体から吸収されない。
収納の中なら、どうなる?
予想では揮発しないはずだ。
収納したものは収納した状態で取り出せるからだ。
これはすでに試した。
手裏剣に水滴をつけて収納して取り出したとき、水滴はなくならなかった。
水滴をつけた位置にそのまま残っていた。
収納の中がどうなっているのかわからないが、破損したり失われることはない。
お湯や氷はそのまま取り出せる。つまり状態は変化しない。
ポーションも揮発しないってことだ!
「さて、取り出してみよう!」
「あっ! 湿ったままですよ! 成功です先生!」
ごっこ続いてた!
「よし! すぐしまうぞ!」
もったいないからな!
この状態でもどんどん揮発していく。
「ケガしたときにこれを使うんですね!」
「そう! 包帯や湿布みたいに傷口に巻き付けるんだ!」
「だから手拭いなんですねー! すごーい! 大発明ですね!」
「これで外にポーションが持ち出せる! トウコのダンジョンでも使える!」
このためにわざわざ忍具である三尺手拭いを作ったのである!
忍具だから収納できる。
殺菌効果があるとされる蘇芳を使った手拭い。
史実忍者の使い方にも近くていい感じだ!
忍者感もある一挙両得の品!
「やりましたね!」
「どうだっ! ついに【忍具収納】さんをギャフンと言わせてやったわ!」
これが考えに考えた完璧な抜け道!
忍び六具のポーション三尺手拭いだ!
俺は勝利を確信した。
うん? リンが首をかしげている。
なにか表情が浮かない感じ。
「あれっ……?」
「どうしたんだリン? 気づいたことがあるなら言ってくれ」
おずおずとリンが手を上げる。
気まずそうな表情……。どうした?
「あのー。水玉ができるなら液体は大丈夫なんですよね?」
「ん?」
「わざわざ布にしみこませなくても……」
「んん?」
「ポーション玉って、作れませんか?」
「んんん?」
「……」
「……うん」
リンは何か言おうとしてやめた。
沈黙が流れる。
「……よし! 作ってみよう!」
「はいっ!」
気まずい空気の中、【忍具作成】を発動。
――来い! ポーション玉!




