忍び六具の三尺手拭い! そして【忍具収納】の裏技!? 【クラフト】
【忍具収納】を検証しまくった。
細かい仕様がたくさんある。
とにかく細かいのだ。厳しいのだ。
「さて助手! 【忍具収納】さんを欺くアイデアが浮かんだぞ!」
「あれ……まだ【忍具収納】さんと戦うつもりだったんですか!?」
おや?
リンはちょっと素に戻っているね!?
急にやめないで!?
ひとりで実験ごっこしちゃってるじゃん!
「いや……ただ無意味に調べていたわけじゃないんだぜ! せっかく手に入れた収納スキルだからな!」
「すごい執着ですねー!」
元ストーカーに言われちゃったよ!
これがストーカーの気持ちなんだろうか……。
【忍具収納】さん……迷惑かな?
すいません……。
なんか絡んじゃって……すいません。
「というわけで――手拭いを作るぞ!」
「てぬぐい……ですか?」
リンが不思議そうな顔をする。
まあ、そりゃそうだ。
「これは前段階だ! 忍び六具にも数えられる三尺手拭いを作るぞ!」
「しのびろくぐ……!? なんだかすごそうです!」
四天王みたいな感じ!
七つ道具みたいな感じ!
忍者が使うスゴイ道具のことである!
鉤縄、編み笠、打竹、薬、石筆、三尺手拭の六つ。
古事記にも……いや、三大忍術伝書である正忍記に書かれている。
このうち鉤縄、編笠、打竹、薬はもう作った。
打竹は火種を持ち運ぶ竹の筒だ。
つまり火付け具。
冷蔵庫で作った香炉がこれに相当する。
編笠は草を編んだかぶり物だ。
剣客や虚無僧がかぶっている帽子である。
俺が作ったのは麦わら帽子だ。
薬は印籠に入れて持ち歩いたりする。
ひかえおろう! ――とやるわけではない。
印籠が六具とも言えるが、重要なのは中身の薬だ。
俺の場合、薬は丸薬にして忍び装束のポケットに入れている。
すぐ使えるようにだ。
俺には【薬術】ちゃんがついているから、素材があればその場で作れる。
だから入れ物はいらない。
石筆は作っていない。
そして作らない。意味ないからな。
ロウ石とかチョークみたいな筆記具らしいが……ボールペン持ち歩いてるし……。
かつては墨や筆よりも便利だったんだろうが、現代には適さない。
鉛筆やボールペン、マジックなどいくらでも筆記具はある。
奴は忍び六具でも最弱……置いてきた!
というわけで不要なのである!
俺は部屋から素材を持ってくる。
前に調べて素材は用意しておいたのだ。
手拭いと染料である。
さて、三尺手拭いをクラフトするぞ!
作るのは薬草染めの手拭い――三尺手拭いだ。
三尺は九十センチ。
染料は蘇芳という植物由来のもの。
色は赤茶色また赤紫色だ。
忍者のマフラーがよく赤色なのは、この影響ではないかと思っている。
染めたばかりであれば殺菌効果があるという。
水をろ過して飲んだり、包帯として巻いたりもできるらしい。
蘇芳はネットで買っておいたのだ。
なんと千円以下!
やすぅい!
「これが蘇芳だ。染料だよ」
「染め物をするんですか?」
俺は蘇芳をざらざらと手のひらに振りだす。
小さな木片だ。植物の芯材である。
これを煮出したり複数の工程を経て染めるわけだが――
「手間だからスキルを使うけどね。――忍具作成!」
つつがなく三尺手拭いが完成した。
手拭いだしコストも軽い。
「わあ、きれいに染まってますね。暗めのピンク色ですかねー?」
「赤ムラサキっぽくもあるね」
とくに柄にはこだわっていない。
全体的に染まっている無地の手拭いだ。
頬かむりして変装したりといった使い道もある。
が……現代で頬かむりなんかしたら余計目立つ。
鉢金やハチマキの代用をしたり、ロープのようにも使う。
石を包んで武器のように振るったりもできる。
万能アイテムだ。
「で、ここまでは前準備だ! リン君、ポーションをここへ!」
「はいっ!」
三尺手拭いとポーションを使えば……!?
実験は次段階へうつる!




