【忍具収納】さんの弱点発見! ざまぁ!?
さて、メインイベントは確認できた。
ダンジョンの外でも、別のダンジョンでも収納は使える!
ひとまず安心である。
充分に使えるスキルだと言える!
あとは細かい部分を確認していくぞ。
【忍具収納】さんは神経質で細かい。
ズルを許さない鉄壁のガードを誇る。
俺の使うスキルはたいてい、拡大解釈によるチート行為ができない。
なんでなんだぜ!?
一枠ごとの制限は――
――数は三十個まで。
――体積は五リットルまで。
――重さは検証中……。
上記の制限を超えると二枠にまたがって収納できる。
三枠使えば十五リットルサイズの大きな忍具が収納できる。
枠とは別の制限もある。
入れ物と中身はセットで一種とみなされる。
――剣と鞘。
――くす玉と紙片。
――手裏剣ポーチと手裏剣。
液体は不可。でもこれはまだ検証中だ。
俺たちは検証を続ける。
大きなくす玉の中に入れられる限界を探る。
「ペットボトルだけではどうですか?」
「ダメだ! 収納できない!」
「原料がダメなんですか?」
「いや、どうだろうな? 問題ないと思うぞ」
プラスチックとかポリエチレンでもいいはずだ。
【忍具作成】ではいろんな原料を加工している。
化学繊維や合成樹脂を素材にできる。
スキルの対象になるのだ。
スキルごとに違う可能性もあるが……。
「じゃあ、キャップだけならどうですか?」
「……ダメだ! 紙片がよくてキャップはダメ? 同じ感じだと思ったんだが……」
「うーん。なにが違うんでしょうか……」
材料?
形か?
「刻んだペットボトル片をくす玉に入れる。――ダメだ!」
「あれれ? わからないですねー」
紙はいいのに、なぜなんだぜ?
「意味のないモノを入れてもダメか?」
「ペットボトルの破片とかキャップは忍具じゃない……とか?」
「ああ、そうだよな。外側がくす玉だからって、中身がなんでもいいわけじゃないと……」
「くす玉が忍具っていうのがちょっと気になりますけど……」
そこ気にしちゃう!?
あ、それが普通の反応か。
投げモノの延長としてくす玉を作っているんだ。
いつもコウモリ対策で使っていたチャフ玉・くす玉は野球ボール大の投げモノ。
いま作っているのはもっと大きい。
それでも投げモノであり忍具なのだ。
これはちょっと拡大解釈ぎみに無理やり作っている。
【忍具作成】君は融通が利く!
【忍具収納】さんとは違ってね!
「くす玉は忍具! 【忍具作成】で作ったことあるし間違いない!」
「そうなんですね……。忍具ってふしぎですねー」
「忍具ということなら……ペットボトルを素材にして――忍具作成!」
「おもちゃの手裏剣ですね!」
ペットボトル素材の十字手裏剣を作成した。
殺傷力はない。ペラペラのおもちゃ。
でも手裏剣である。忍具である!
「このおもちゃの手裏剣をくす玉に入れて収納してみる――オーケー!」
「あっ! やっぱり材料の問題じゃないんですね」
「条件は中身が忍具であること、だな」
「イレモノが忍具でもダメなんですねー」
「袋を作って入れたらなんでもアリになっちゃうからか……。忍具収納さんめー! 鉄壁かよ!」
「きびしいですね!」
「じゃあナンデ紙はオーケーなんだよ……」
「紙は忍具なんですかー?」
「んー? 言われてみれば忍具と言えなくもないな?」
「だからですよきっと!」
リンは納得したようだけど、俺はちょっと微妙だなぁ……。
当たり前だが忍者は紙を使う。
ペットボトルだって使うけどな!
忍具っぽさの度合いみたいなのが判定されるんだろうか。
忍具度……。謎の尺度だ。
紙はまあ、忍者がよく使う。
ペットボトルは似合わない。
手裏剣は忍具度が高い。
くす玉はギリギリ忍具度が基準を超える。
武器であるクナイや刀は問題ない。
投擲具もそうだな。
目つぶし玉みたいな投げモノもアリ。
この延長でくす玉が許される。
ナタやカマなどの工具や農具は忍具っぽい。
編み笠や麦わら帽子などは変装具といえる。
洋服や袋の類も許される。
忍者装束やマフラー、草鞋や脚絆なんかは問題ないだろう。
火炎瓶やランタンや燭台は許される。
忍者道具だっけ?
微妙に思えるが……。
火付け具だからか?
忍者と言えば火術。……忍具度が高まる?
謎の判定ではあるが、ある程度の納得感はあるな。
じゃあ銃や爆弾も許してほしいね。
火薬は忍者の十八番である。
なにかがダメなんだろう。
毒や薬は忍具じゃない。
忍具度は高そうなのに別物扱いである。
【毒術】や【薬術】の領分だ。
「うーむ」
「あ、水で濡れてるのは大丈夫なんですねー」
ん……水?
ああ、さっきくす玉に入れた水か。
「そういえば濡れたままだな。これはオーケーなのか!?」
入れた水は外に流したが、水滴まではふき取っていない。
つまりくす玉の中には微量の水が残っている。
「ちょっとの水なら大丈夫みたいですね!」
「よし! 【忍具収納】さんの弱点発見! ざまあっ!」
水滴や湿り気はカウントできない!
阻止されない!
液体は収納できないくせに!
つまり抜け穴だな!
してやったり!
「……なんでそんなにうれしそうなんですか?」
「いや、隠されると見つけたくなるというか……」
逃げる相手を追いかけたくなるというか……。
隠されると探したくなるというか……。
執念? 執着心?
いや、向上心だ! 知的好奇心だ!
「そうですよね! 振り向いてもらいたいですよね!」
「うん? まあ、そうかな? ……違うような気がするな」
【忍具収納】さんを振り向かせたい!
そういうことだろうか……?




