ダンジョン産アイテムの別のダンジョンへの持ち出し! その2
ついに俺はダンジョンの品を外へフライパン……チガウ!
クラフトした忍具を持ち出した!
これは大きな前進だ。
たぶん、リンのダンジョンにも持ち込めるだろう。
さて、現実世界でもこのアイテムが持ち出せるか……。
試しておきたいところだ。
とはいえ……この場で取り出しを試していいものか?
できるできないの問題じゃない。
やっていいのかどうか。
気にしているのは禁則事項だ。
認識阻害や切り離しのことである。
禁止されているダンジョンの品を仮に取り出すことができたとして――無事でいられるか。
追放されてしまうんじゃあないか?
ある意味命がけの行動になる。
基本的には人に見られなければいい。知られなければいい。
車に轢かれても無事だった大河さんの場合、認識阻害によって人には能力がバレなかった。
俺も外で【分身の術】を短時間使ったが、追放されていない。
一発退場ってわけじゃない。
ダンジョン産の品物を外で使うことのリスクがどれくらいあるか……わからない。
試しておきたい。
だけど試せない。
命がけのギャンブルになってしまう!
前にリアダンで聞いたとき、リヒトさんはダンジョン産アイテムの売買を危険視していた。
つまりアイテムを持ち出せる可能性を示していた。
おススメしない感じだったのだから、危険なんだろう。
考え込んだ俺の顔をリンがのぞき込む。
「あれ、ゼンジさん? どうしたんですか?」
「収納した忍具を外で出せるか試そうと思ったんだけど、追放が怖いよなぁ」
俺の追放という言葉に、リンの顔色が急変する。
「そ、そうでしたっ! い、いやです! だめですよ! どろどろにやられちゃいますよー!」
ドロドロした黒い物質に包まれて追放されてしまう。
世界の隠蔽の一種――個人向けの切り離しだな。
「うん、そうなんだよなあ。いちおう、御庭から聞いた話では大丈夫なはず。人に見られなければ大丈夫だし、見られたとしても小さい違和感は記憶違いみたいに処理されるんだけど……」
「……本当に大丈夫ですか?」
リンは不安げな表情で俺の手を取る。
近い!
リンの不安はもっともだ。
俺も怖い。
目の前でストーカーが消えたのを見たからな。
ちょっとトラウマだ。
「大丈夫だと思うけど、やめとこうか。――まずはリンのダンジョンで取り出せるかを試そう!」
「はい……! やめておきましょう! 私のダンジョンでなら禁則事項にもひっかからないはずです!」
外で試すより、別のダンジョンで試すほうが安全そうだ。
ちょっとずつ確認していこう。
急ぐことはない。
「だよな。ダンジョンの中なら問題ないはずだ」
「はい! じゃ、行ってみましょう!」
そういうことになった。
トイレから草原ダンジョンへ入る。
リンが見守る中、手の中に意識を集中する。
「出ろ! 鎖分銅!」
「オーケーですね!」
あっさりと成功する。
ダンジョン産のアイテムも持ち込むことができた!
いいぞ!
「次はクラフトしたモンスターの素材だ。――牙手裏剣!」
「わあ! 手品みたいですねー!」
これも成功!
リンは手を叩いて喜んでいる。
たしかに手品めいている。
なにもないところから品物を取り出しているんだしね。
「ついでにもうひとつ!」
「……成功ですね!」
フライパン鉢金を出して、すぐにしまった。
三秒は長いぜ……!
これで【収納】に入れてきたアイテムは全部出せることがわかった。
「つまり、クラフトしたアイテムもダンジョンを越えて持ち出せることが実証されたぞ!」
「便利ですねー!」
「武器や忍び装束なんかも持ってこれるな!」
「ですね!」
俺の火力は武器に依存する部分が大きい。
草原ダンジョンではナタのような普通の武器を使っている。
これからは忍者刀や忍び装束が使えるってことだ。
これがデカい!
自分のダンジョンならクラフト用の素材や魔石もたくさんある。
作ってから持ち込めばいいのだ。
「ここでオーケーなんだから、トウコの冷蔵庫にも持ち込めるはずだ!」
「武器がなくて困ってたんですよね? よかったですねー!」
冷蔵庫ダンジョンは素手で挑んでいた。
靴すらなかった。
準備する余裕がなかったんだ。
でも刀を持ち込めばゾンビを倒すのはたやすい。
難易度が段違いである!
ナタとかバールを持ち込むだけでも違うだろうけど、やはり使い慣れた武器がいい。
冷蔵庫固有のルールで持ち込みを禁止される可能性もあるが、試してみる価値はある!




