ダンジョン産アイテムの別のダンジョンへの持ち出し!
スキルの力はダンジョンの外では制限される。
およそ2レベル分低下する。
俺の【忍具収納】はスキルレベル3だ。
マイナス2して、スキルレベル1相当になる。
スキルレベル1で解放される一枠目だけが、外でも使える。
ここまではオーケー。確認済だ。
今度は、俺のダンジョンで収納したアイテムを、リンのダンジョンで取り出せるかを試す。
これは現実の品物、棒手裏剣で試す。単なる釘である。
リンのダンジョン……つまり別のダンジョンで収納がどうなるか、だ。
「んじゃ、リンのダンジョンへ行こう!」
「はい!」
場所を変えてリンの草原ダンジョンへやってきた。
薄暗い俺のダンジョンと違ってさわやかな気分になれる。
収納リストを呼びだしてみる――
――手裏剣
――手裏剣
――手裏剣
不親切! 全部手裏剣である!
本数は教えてくれないが、意識をこらせばなんとなくわかる。
収納しなおしたので、今は手裏剣一本、手裏剣二本、手裏剣三本の三枠だ。
入れておいた品物を暗記しておく必要はない。
まあまあ便利。
文字情報として見えるウィンドウと、イメージの併用という感じ。
感覚としては技術系のスキルを取得して情報が流れ込んでくるときに近い。
「収納リストは見れる。中身も入ってる。三枠目の手裏剣を取り出してみるぞ――」
「――できましたね!」
俺の手の中に三本の棒手裏剣が現れる。
同様に一枠、二枠目も取り出せる。
「ってことは、ダンジョンが違っても収納は使える! すべての枠が使える!」
「これで、こっちとあっちで荷物を移動できますねー」
「忍具だけだけどね」
「でもすごいです!」
そう。これは格段の進歩なのだ。
異なるダンジョンで物資や装備を行き来できる。
とはいえ、確認したのは棒手裏剣。
ホームセンターで買ってきた五寸釘だ。
普通の品である。
普通の品は手で持って運ぶこともできる。
スキルなしでもできる範囲のこと。
喜ぶのはまだ早い!
ダンジョン間で動かしたいのは手で持ち出せない品物だ!
さあ、次の確認に移ろう!
「ダンジョン産のアイテムを移動できれば、バッチリだな!」
「はい!」
ダンジョン産のアイテムとはモノリスで引き換えた品とか、宝箱から手に入れた品だ。
薬草とかポーションである。
これは忍具じゃないので【忍具収納】の対象外だ。
残念ながら持ち出せない。
【忍具作成】でクラフトした品もダンジョン産のアイテム扱いになる。
これは当然、忍具である。
ちなみに宝箱から忍具が手に入ったことはない。
手裏剣とか分銅は出てこないのだ。
まあ、当たり前だな。
俺のダンジョンだからって、宝箱が忍者グッズを出すわけじゃない。
ダンジョンと俺の職業は別物である。
今後、刀とかナタくらいは出てくる可能性があるかもしれないが。
知らんけど! 期待はするけど!
というわけで、忍具は今二種類存在している。
一つは、クギやナタなどの忍者道具っぽい現実の品。ナタやクギ。
もう一つは、素材を【忍具作成】でクラフトしたもの。たとえば鎖分銅とか忍者刀だ。
一つ目は現実世界から持ち込んだ品だから手動で持ち出しできる。
さっき確認した。
二つ目は、クラフトしたもの。
これは本来、ダンジョンの外へ持ち出せない。
ダンジョン産の品だからだ。
これを持ち出したい!
「じゃ、いったん俺のダンジョンへ戻って収納してこよう」
「はいっ」
クローゼットダンジョンに戻る。
なんか行ったり来たりが激しい。
ダンジョンが隣の部屋にあるという立地は、ある意味凄いかもしれない。
自分のダンジョン以外に自由に入れるというのもレアだろう。
御庭の話じゃ、ダンジョン保持者は隠蔽のために目立たないらしいからな。
装備展示ラックや収納箱を漁る。
とりあえず、いらないもので試す!
一枠目、三メートルの鎖分銅一本。
鎖分銅は【忍具作成】でクラフトした品だ。
二枠目、コウモリの牙をベースとしてクラフトした手裏剣。
コウモリの牙はモノリスで引き換えた品。
三枠目、フライパン鉢金。
これは……まあ、アレだ。要らないものだ。
リンが俺が手に取った失敗作を見て興味を示す。
「そのフライパンは……ゼンジさん?」
「さて! さっさと行くぞ!」
俺は余計な追及を受ける前にダンジョンを後にした。
「出られたな!」
俺はアパートの部屋へと出る。
遅れてリンが飛び出してくる。
「――もうっ……置いてかないでくださいよー。あのフライパンは……!?」
「……」
フライパン鉢金については触れたくない!
話を進めよう!
「よーし! 持ち出し成功! ダンジョン産の品物でも収納したまま出られる!」
「は、はい。成功ですね! よかったですー」
ごまかし成功!
というかスルーしてくれた!




