アイテムボックス! 収納! 収容! 魔法のカバン! インベントリ!
とりあえず拠点へ戻ってきた!
ちょっと落ち着こう!
テンションが上がっちまったぜ。
なにしろ収納だ。収納スキルは約束されし強スキルだ。
さんざん盛り上がってみたが、チートスキルではないと確信している!
漫画で見たようなチート能力はこれまでにもなかった。
どうせ渋い効果なのだ。
スキルポイントの消費からして中級のスキルじゃない。
一段階目、初級のスキルと言うべきもの。
劇的な効果はないはずだ。
まずは名前からもわかる通り【忍具収納】は忍具を収納するスキルだ。
忍者道具限定。なんでも入れられる便利スキルではないはず。
いいとも。かまわんとも!
俺は忍具使いなのだ。
このスキルを取らない選択肢などない!
--------------------
【忍具収納】
レベル1:忍具一種を収納、取り出しできる。
レベル2:忍具二種を収納、取り出しできる。
レベル3:忍具三種を収納、取り出しできる。
レベル4:忍具四種を収納、取り出しできる。
レベル4への必要ポイント:8
--------------------
「レベル3だと忍具三種? 種類か?」
たとえば忍者刀で一種、鎖分銅で一種みたいな?
三個のアイテムを持てるって意味かな?
「ためしてみるか……とりあえず棒手裏剣で!」
大事な刀がなくなったりしたら困るからな。
消耗品で試す。まずはテスト!
手に持った棒手裏剣を収納したいと念じてみる。
すると、手の中から棒手裏剣がふっと消える。
おう!? 消えた! すげえっ!
こういう感じかー!
少しタイムラグがあったようだ。
念じてすぐには消えない。
見た目にも地味だ。
派手なエフェクトはないし、音もしない。
空間の裂け目が現れたりはしなかった。
ぱっと消える。
穴の中に手を入れて出し入れするタイプじゃないわけだ。
つまり空間断裂攻撃とか、中に隠れるとかはできない!
渋い……渋いぜぇ!
でも音もなく静かなのは忍者向きである!
「で、どうやって出すんだ……? 出ろ手裏剣!」
頭の中で手裏剣をイメージする。
それが手の中に現れるよう念じる。
だが、出てこない。
「……あれ? ――おっ! 出た!」
少し間をおいて手の中に棒手裏剣が現れる。
やはり時差がある。
「およそ三秒のタイムラグか……うーん渋い!」
瞬間的に出し入れできるわけじゃない。
スキルって地味な制約が多いよな。
断固として無双やズルをさせないという強い意志を感じるというか……。
【収納】って、どこにしまっているんだろうな。
どういう仕組みなんだろうか。
手の中の品物を謎の空間に転移させている?
そう考えれば多少の時間はかかりそうに思える。
【入れ替えの術】でも一秒ほどの準備時間がいる。
自分の体のようなデカいものを瞬時に移動するという不思議。
これもかなり凄いんだよな。
収納はどこか見えない場所にある収納スペースへとモノを移動させている。
不思議だよなあ……。
戦闘中の時間の流れは早い。
三秒もの時間を稼ぐのは工夫がいるだろう。
戦闘中にとっさに武器を持ちかえるような使い方には向いていない。
普段は武器を持たず、収納から抜打ち攻撃!
――なんてのはムリってことだ。
それでも……リュックサックなどの物理的な収納から取り出すよりは早いかな。
【収納】の本質は素早い出し入れではなくて携行性だ。
かさばらず重みを感じない。これだけで便利だ!
戦闘の合間や、距離を取ってからの武器チェンジにはいいだろう。
三秒は遅い。
でもこれは充分に早いと言える。
トウコが銃を生み出すには十秒くらいかかっている。
実際、そのタイムロスで苦労しているんだよな。
武器をその場で創り出すってのは便利だけど時間がネックだ。
【忍具作成】はもっと時間がかかる。
戦闘中に材料をそろえてイメージを固めて手裏剣を作る……なんてムリだ。
クラフトは戦闘前にすませておくってことだな。
「種類ってことは同種ならたくさん入れられるのか?」
手裏剣一本入れてもあまり意味はない。
たくさん入らないとな。
つまり同種の忍具を重ねて入れられることを期待する。
では今度はそれを試そう!
手裏剣ポーチから棒手裏剣を束でつかみ出し、収納する。
できた!
掴んだ十本ほどの棒手裏剣が同時に消える。
このへんは便利だ!
棒手裏剣一本で一枠消費して三本しか収納できないなんてオチはなかった。
では今度は出してみよう。
念じると棒手裏剣が現れる。
だが、現れたのは束の棒手裏剣だ。
もう一度収納に入れ、一本だけ取り出すイメージを浮かべる。
「……できない! 個別には取り出せないのか!?」
一本だけでは出てこない。
手裏剣を念じると出てくるのは束の棒手裏剣だ。
一本ずつ順番に出していくことはできないらしい。
あくまでも一種。一セット。
一枠の単位でしか出し入れできないんだな。
五寸釘と三寸釘を混ぜた状態はどうだ?
うん。いける。
バラツキがあっても、クギはクギってことだな。
これができないと、不ぞろいの品が使えなくなってしまう。
ハンドメイドのクギとかね。
「まとめてひとつかみは収納できたけど……いくつまで収納できるんだ?」
今度は数の上限を調べよう。
手の上にクギを乗せながら最大の本数を数えていく。
数が多くなるとバランスが難しい作業だなコレ。
で、収納できたのは三十本まで。これが数の上限。
まあ、悪くはない。
普段俺が携行しているのは多くて五十本くらいだ。
三寸釘と五寸釘を使い分けている。
コウモリ用は三寸釘。ゴブリン用は五寸釘。
使う予定の分だけを持っている。
余剰は階段の補給スポットに置いているんだ。
重いし邪魔だからな。
五寸釘を五十本も持てば、重さにして一キロ近い。
これで持ち運ぶ数を減らせるな!
収納、マジ助かる!
「続いて鎖分銅を入れてみよう……よし、入る! そして出せる!」
鎖分銅の出し入れもできる。
鎖分銅を入れた状態で先に入れた棒手裏剣も出し入れできる。
二種の品物を入れたとき、最後に入れたものしか出せない……なんてことはない。
順番は関係ないっぽいな。
さすがにそこまで渋くないね。
鎖分銅も複数個同時に持てばひとまとめに収納できる。
いま作成済の各種サイズの分銅を全部収納できる。
とはいえ取り出すときにもまとまって出てくる。
一個ずつ取り出すことはできない。
これは、取り出してすぐに投げるには不便だ。
投げる分を別の手に取って、予備を三秒かけて収納する。
あるいは一度、投げ捨てちゃうとか。
戦闘中の行動としては遅い。スキを生む。
「収納したモノの一覧は……見れる!」
【薬術】などと同じようにリスト表示されるな。
これで、うっかりしまい込んだ品物を忘れて取り出せなくなることはない。
いいぞ。使い勝手は良好だ。
さて、そろそろ本命の忍具を試してみよう。
メインウエポンである忍者刀だ。
収納したアイテムがロストすることもなさそうだし、いざ!
刀は大きくて重たいが、いけるのか――?




