ワニ対策を考えよう! その2
ワニは両生類ではなく爬虫類だ。
水辺でなくても行動できる。
陸上では弱る、なんてことはない。
足が速く瞬発力もある。
だがさいわい、ワニは持久力がないらしい。
つまり、長くは走れない。
長距離走に持ちこめば俺たちにもチャンスはあるってことだ。
人間は持久力だけは動物界でも上位だ。
だからこそ人類は生き延びて繁栄した。
捨てたもんじゃない。
よって、俺たちは正面切って戦わない。
持久戦を狙っていく。
疲れさせて倒す。
ハイエナのように、じわじわとやる。
持久狩猟ってやつだ。
罠。武器。毒。
手段は問わない。
強みを生かして戦う。
人類は昔からそうして狩りをしてきたのだ。
なんだか壮大な話になってきたが、そうなのだ。
俺たちは戦闘したいんじゃなくて、奴を倒したい。
だから狩り倒す。追い込む。それでいい。
俺は戦士じゃないし武士じゃない。忍者なのだ。
忍者は策を弄して戦うのである!
ワニにはいろんな情報がある。
胃袋が強く、石も食うとか。
よく噛まずに食べてもノドに詰まらせない。
というか丸呑みしてノドに詰まらせても大丈夫という羨ましい能力。
食道そのものが獲物を捕らえる場所と言える。
免疫力も強く、ケガをしても感染症などにならずに立ち直る。
これまた羨ましい。
ケガをして雑菌だらけの川に居ても平気なのだ。
さらに、一時間も潜水できるとか。
心臓が特別なつくりになっているらしい。
水中では使わない肺に無駄な血液を送らないように別ルートを持っていて、迂回する。
血液を流すルートすら切り替える。
とんでもない!
うーん。特殊能力が盛りだくさんだ。
伝説のワニ、ギュスターヴは三百人の人間を食ったと言われる。
機関銃で撃たれても死ななかった……マジでか!?
鱗が防弾チョッキのように固い……ファンタジーかよ!
でも弱点もある。
目と口の位置関係で正面が見えにくいらしい。死角だ。
そして有名な弱点――口を開く力が弱いこと。
閉じる力は強いが、開く力は弱いのだ。
「うーん。ワニは奥が深い……動物博士になっちまいそうだ!」
とはいえ、口を閉じさせるなんてどうすりゃいいんだ?
近づいて組みつく?
いやいや……怖すぎるだろ。
組みつけたとして、ずっと口を押さえているなんて無理だろう。
やはりロープだろうか。
鉤縄、鎖分銅。
あるいは新しい道具を作るか……。
どちらにしても忍具の出番ってわけだ!
投げるための鎖分銅を用意しよう。
ワイヤーで縛ってワニの口を封じるのだ。
いつも使っているワイヤーは三メートルだ。
片方の重りを左手に持って右手側でワイヤーの中ほどをもって振り回す。
近い距離ならそのまま打撃してもいいし、右手を離せば長さを伸ばせる。
今回は短めの鎖分銅を使う。
五十センチから一メートルほどの長さで数本用意しておく。
体全体はデカいが口先だけを縛るには短くてもいいだろう。
どちらにしても短い分銅で練習してから長くしていく。
狩猟武器のボーラのように投げて使うのだ。
いつもは片側を手に残すが、両方を投げて絡みつかせる。
……正直、かなり難しいだろう。
ワニは動きが速い。
その口元を狙ってワイヤーを絡める。
本番一発でキメるなんてミラクルには期待しない。
外したら俺だけでなく二人まで危険にさらしてしまう。
少しでも成功率を上げる!
それには練習あるのみ! 幸運には頼らない!
朝練だ!




